エアグルーヴが牝馬同士の戦いに留まらず、『女傑』となるため天皇賞秋に向かった。

そして、見事、天皇賞秋連覇を狙うバブルガムフェローを下した。


牝馬の若駒4歳と古馬が対戦するG1レース、エリザベス女王杯。

連覇を狙って登場してきたのはダンスパートナーだった。

サンデーサイレンス初年度産駒。桜花賞2着、オークス優勝。フランス遠征、ノネット賞(G3)2着、ヴェルメイユ賞(G1)6着。秋は菊花賞を狙った。1番人気5着。

牝馬G1はいつでも獲れる・・・・・・豪語する厩舎。古馬になっても果敢に牡馬に挑戦し続けた。

安田記念6着、宝塚記念連続3着、ジャパンカップ10着、有馬記念6着。トウメイ以来の『女傑』を、先にめざしたのはダンスパートナーだったかも。力及ばず弾き返されても、闘志は失わなかった。

時には牝馬らしく、牝馬G1エリザベス女王杯に出走するダンスパートナー。前年はフェアダンスの猛追を凌ぎ勝利。

秋、京都大賞典をシルクジャスティスの2着。エリザベス女王杯、2度目の栄冠へ。

6歳、ダンスパートナーに衰えはない!





エアグルーヴと同年代のエリモシック。デビューは4歳3月。

遅れを取り戻し5戦目で挑戦したオークスは2番人気、エアグルーヴの6着。秋華賞で2着と健闘も、エリザベス女王杯はダンスパートナーの8着と敗れた。


心の傷は大きかったか? 古馬になり低迷が続く。


エリザベス女王杯以後、復帰まで半年かかった。

5月復帰。都大路S6着、テレビ愛知オープン10着、マーメイドS7着。何か、きっかけが欲しい。


ライスシャワーで知られる関東の的場均に鞍上が替った。

まだ荒削りだったころのエリモシック。後方から直線だけで秋華賞を2着した。

器用に好位で脚を残す戦法を捨て、後方一気に変えた。

札幌日経オープン3着、札幌記念2着。


のんびりでもいい。自由に、走れ!

『馬というものが、人間には計り知れないものを、どれほどいっぱいもっているのかを、ライスシャワーが教えてくれた』 と語る的場均。

おまえのすべてを、オレが引き出してやるッ。


8着、惨めに敗れ去った前年のエリザベス女王杯。エリモシックは、再びダンスパートナーに挑む。





3冠牝馬メジロラモーヌ。母メジロマーリンはその全妹。

メジロランバダへの期待は大きかった。

仕上がり遅れでクラシック出走はならず。4歳暮れから4連勝で日経新春杯を勝ち、牝馬の身で天皇賞春3200mに挑戦も9着。

半年の休養、カシオペアS2着。

女王師派の機は熟したか!





アイルランド産外国馬アドマイヤラピス。

叔母は英G1・3勝、凱旋門賞2着サンプリンセス。従姉妹バーレークインはフサイチコンコルド、グレースアドマイヤ(リンカーン、ヴィクトリーの母)、ミラクルアドマイヤ(カンパニーの父)、ボーンキング、アンライバルドを出す名牝。

アドマイヤラピス自身も後に母となり、ヤドマイヤフジ、アドマイヤコスモスを送り出す。

アイルランドからやってきた良血ながら、エリザベス女王杯で初G1挑戦まで28戦を要した。つねに条件の人気馬として歯痒い思いを繰り返した。

6歳秋にしてセプテンバーS(オープン)、嵐山S(オープン)を連勝。


下積みを味わった良血、一気に開花なるか!





新馬戦から3連勝でエアグルーヴを破り阪神3歳牝馬Sを勝ち、3歳女王となったビワハイジ。

母となってもエアグルーヴと並ぶ名牝。アドマイヤジャパン、アドマイヤオーラ、ブエナビスタ、トーセンレーヴ、ジョワドヴィーヴル、サングレアル、産駒に活躍馬が並ぶ。


桜花賞を2番人気で15着と敗れてから、競走馬としてはエアグルーヴに大きく差を付けられた。

オークスを使わずダービーに挑戦。13着に敗れ、骨折が判明。復帰まで1年4カ月の闇を経験。

闇を抜けた復帰戦は10月、カシオペアS。先ずは無事に走り切ること。

+26㌔の馬体で、2番手追走5着。走れたことの喜びの方が大きかった。


1年4カ月の歳月を取り戻すことはできない。それでも、全力。出し切る。

ビワハイジに諦めの心は、ない。





11月9日、エリザベス女王杯。

1.クイーンソネット
2.ビッグモンロー
3.ダンスパートナー
4.フローレスリーフ
5.エリモシック
6.エイシンカチータ
7.メジロランバダ
8.パルブライト
9.ビワハイジ
10.オレンジピール
11.エアリバティー
12.サイクロンジェーン
13.アドマイヤラピス
14.ケイエスミラー
15.エイシンサンサン


1番人気ダンスパートナー、2番人気メジロランバダ、3番人気エリモシック。

4番人気アドマイヤラピス、5番人気ビワハイジ。



注目されたスタートは大外枠からエイシンサンサンが飛び出した。

1995年、4歳時は牝馬クラシックの桜花賞、オークス、エリザベス女王杯(1996年から秋華賞)すべて参戦。15着、11着、15着、見事な大敗ぶり。

2年の歳月を経てG1挑戦のエイシンサンサン。35戦目となったベテラン牝馬。

最後のG1、飛ばすだけ、飛ばす!


フローレスリーフ、そして、ビワハイジがつけた。続くエイシンカチータ。


秋華賞4着オレンジピール、メジロランバダが中団、一団の中。


縦長の展開。


後方にじっくりつけたダンスパートナー。


その後方、馬が行くまま。的場均が手綱を取るエリモシック。


その後ろ、後方2頭目がアドマイヤラピスだ。



1000m59秒4、エイシンサンサンのつくり出す流れるようなペース。


3コーナー過ぎからペースアップする中団、後方馬群。

固まってきた馬群。



メジロランバダは馬群の中。

ダンスパートナーは、まだ後方、内にいた。

外を行くエリモシック。まだ行く気を見せない。



直線に入った。


内から外へ、大きく横に広がった。


逃げるエイシンサンサン。


粘りに粘る。


懸命に差を詰めようとするフローレスリーフ、ビワハイジ、エイシンカチータ。

詰め切れない!


後続もメジロランバダも、詰め切れない。


エイシンサンサンにしてやられるかッ!



馬群を縫うように先団に。そして、馬群を割った。


やはり、来た。


来た来た来た来たぁーッ!


大歓声の中、やって来た。


ダンスパートナーだ!



外から、もう1頭。鋭く突き抜けてきた。


ダンスパートナーに迫り、馬体を被せた。


その手綱から伝わる感触に、的場が震えた。


エリモシックだッ!



負けられないッ!ダンスパートナー・河内洋。


勝ってみせるッ!エリモシック・的場均。



重なり合って、エイシンサンサンを交わし去り、

ゴールへ飛び込んだ。



計り知れない力を、お前は出した!

的場の心からの喜び。


クビ差、エリモシックが勝った!


1着エリモシック

2着ダンスパートナー

3着エイシンサンサン

4着フローレスリーフ

5着エイシンカチータ



(つづく)