マイルチャンピオンシップ、2着。1600mでも一流馬としての存在感を見せつけたサクラバクシンオー。

だが、マイル王にはなれない生粋のスプリントであることも・・・・・・改めて知るはめとなった。

前哨戦、スワンS(芝1400m)では1分19秒9、当時の日本レコードでノースフライトを退けた。

そのノースフライトに敗れたマイルチャンピオンシップ。距離の壁か?


1200m・1400mでは10戦9勝。敗れたのは4歳時、G1初挑戦だったスプリンターズS6着。

5歳古馬となった前年。安田記念連覇、天皇賞秋をも勝ったヤマニンゼファー、桜花賞馬・スプリンターズS覇者ニシノフラワーを打ち破った。


スプリンターズS連覇。

スプリント王を絶対的なものとするために、サクラバクシンオーには必然となった。


年内引退が決まり、ラストランとなるスプリンターズS。勝つことは、大きな、大きな意味がある。

将来、種牡馬としていい仔を輩出するために、いい繁殖牝馬と巡り合うために、欠かせない実績。

それこそ、『スプリント王』の称号だ。




スプリンターズSが国際競走に指定されたこの年、3頭の外国馬がアメリカからやってきた。

ブリダーズカップ・スプリント2着の実績をもってやってきたソビエトプロブレム。

京王杯スプリングカップ2着、安田記念12着。春の雪辱を・・・・・・2度目の来日、ザイーテン。

アメリカG1・2勝の7歳セン馬、オナーザヒーロー。




アメリカからやってきて、日本で調教された外国産馬エイシンワシントン。

4歳、次代のスプリント界を担うスピードランナー。

セントウルS、初重賞制覇。スワンS、サクラバクシンオー、ノースフライトに次ぐ3着。

シリウスSではビッグショウリに6馬身差をつけ逃げ切り。


若さでサクラバクシンオーに挑む。




エイシンワシントンと同じ4歳外国産馬ビコーペガサス。

新馬戦から3連勝で京成杯勝利。いち早く短距離界で頭角を現し、マイルチャンピオンシップでG1初挑戦。

ノースフライトの5着、敗れ去った。だが、手応えはつかんだ。


サクラバクシンオーに迫って見せる。いや、追い抜いて見せる。

同じ4歳、同じ外国産、エイシンワシントンには、負けられない。





12月18日、スプリンターズS。

1.エイシンワシントン
2.イナズマタカオー
3.ナガラフラッシュ
4.キョウエイキーマン
5.ヒシクレバー
6.ホクトフィーバス
7.マルタカトウコウ
8.サクラバクシンオー
9.ザイーテン
10.ソビエトプロブレム
11.オナーザヒーロー
12.ビコーペガサス
13.エーピージェット
14.ユウキトップラン


1番人気サクラバクシンオー、2番人気ソビエトプロブレム、3番人気エイシンワシントン。

4番人気ザイーテン、5番人気ビコーペガサス。



4,5頭が横一線でスタート。

エイシンワシントンも、サクラバクシンオーもいる激しい先行争い。


そのなかで頭一つ出たヒシクレバー。ホクトフィーバス、マルタカトウコウが、びっしり競る展開。

エイシンワシントンが、内に下げた4番手。


2馬身あとからサクラバクシンオーが行った。

マークするのはソビエトプロブレム。


内キョウエイキーマン、ザイーテン、オナーザヒーロー。


ビコーペガサスは後方、差しに活路を開くか?



3ハロン32秒4、電撃の1200mスプリント戦ならではのハイペース。


4コーナー、3番手外へ上がって行ったサクラバクシンオー。

流れの速さに乗って、そのままに。


速すぎる?・・・・・・いや、大丈夫。

これがバクシンオーの強さ。

見せてやれ、スプリント王の強さを。


おまえの、最後の晴れ姿だぁーッ!



鞍上・小島太は、直線に入るや先頭に立ち、一気に突き放しにかかった。

ペースの速さも、後ろから来る馬も、気にしない。



この距離なら、誰にも負けないッ。


王者のスピードで最期を飾ろう。


なぁ、バクシンオー。



小島太は前を見た。


ただひたすら、ゴールを。



内から、2頭分外に出し、サクラバクシンオーを追うエイシンワシントン。

最内を、すり抜けてくるキョウエイキーマン。


大外から、凄まじい脚で追い込んできたビコーペガサス。



3頭の激しい競り合いは、


2着争いでしかなかった。



4馬身。


あっという間に開いた差は、縮まることなく、


サクラバクシンオーはゴールに飛び込んだ。



1分7秒1。日本レコード(当時)。


ラストラン・・・・・・サクラバクシンオーはスプリント王を誇示してターフを去った。



驀進王。


1着サクラバクシンオー

2着ビコーペガサス

3着キョウエイキーマン

4着エイシンワシントン

5着イナズマタカオー



父サクラユタカオーから受け継いだスピードでスプリント界を制したサクラバクシンオー。

その産駒は父にならって短距離一筋に活躍している。


クラシックに縁のない地味な存在。

現在、産駒勝利数1380勝。JRA通算勝利数第5位。

ショウナンカンプ、グランプリボス、G1馬を輩出。

サクラユタカオー→サクラバクシンオー→ショウナンカンプ・グランプリボス→・・・・・・・・。

日本競馬史上初の、親仔4代G1制覇の夢を繋ぐ。


2011年、4月30日。22歳で死去することとなるが、永遠の大種牡馬として、その名を残す。


(つづく)