桜花賞を走れなかった、オークスを走れなかった・・・・・・ヒシアマゾン。

異郷の地・日本にやってきた。日本で調教された。なのに外国産馬、ただそれだけの理由。

不戦敗、ヒシアマゾン。


エリザベス女王杯にかける思いの強さ。



『ヒシアマゾンのいない桜花賞』

『ヒシアマゾンのいないオークス』

散々言われた。強き不出走馬の存在。

人々の想像の中で負けない。

不戦勝、ヒシアマゾン。


誰が出ようと、出まいと、力の限りクラシックを戦った。そして、頂点を獲った。

オークス馬チョウカイキャロル。

エリザベス女王杯にかける思いの強さは変わらなかった。


勝敗を決めた、わずか3㎝。

勝者ヒシアマゾン、敗者チョウカイキャロル。永遠に変らない記録。

大観衆からは、感動の視線が注がれた。惜しみない拍手が、鳴り止まなかった。





秋のマイル王を決めるマイルチャンピオンシップ。

主役は牝馬ノースフライト。母シャダイフライトとともに社台に見捨てられた馬。

トニービンの仔を身籠ったままシャダイフライトは社台のセリに出され、410万円という最安値で大北牧場に落札された。

生まれた仔がノースフライトだ。


成長が遅かったノースフライトだが、4歳5月、デビュー戦で9馬身差の圧勝。2戦目の足立山特別でも8馬身差。クラシックに間に合わなかったことが惜しまれる走りを見せた。

4戦3勝で臨んだエリザベス女王杯では、同じ父トニービン、社台で生まれたベガには勝ったがホクトベガに敗れた2着。

古馬になってマイル路線にシフト。前年暮れの阪神牝馬特別から、京都牝馬特別、マイラーズカップと重賞3連勝で臨んだ安田記念。初の国際G1となり、世界の強豪を相手に勝利した。


社台に見捨てられた母仔。その仔は、とんでもない牝馬に成長した。


秋に入り、スワンSで始動。スプリントの王者サクラバクシンオーと1400mでの対戦となった。

サクラバクシンオーに日本レコード(当時)1分19秒9で走られ、2着。


だが、マイルでは負けられない。しかも、勝っても負けても引退と定められ、最後の一戦に臨むこととなった。




スワンSを勝ったサクラバクシンオー。

1600m以上では8戦0勝、2着1回、3着1回。1400m以下では11戦10勝という、恐ろしいほどのスプリント力を見せるサクラバクシンオー。

春のマイル決戦、安田記念では4着。決して、戦えぬ距離ではないはず。

種牡馬としての将来を見据えて・・・・・・マイル王の称号もぜひ、つかみ取りたい。




皐月賞3着、ダービー4着、フジノマッケンオー。

ナリタブライアンには歯が立たなかったことを悟った厩舎は、路線変更。

神無月S・ダート1600m、根岸S(G3)・ダート1200mを連勝。

一転して、マイル王に挑戦してきた。鞍上は武豊。




府中牝馬S勝ちから臨むホッカイセレス。春、安田記念は12番人気6着と健闘。


京成杯ではヒシアマゾンン勝ち、 ニュージーランドトロフィー4歳Sではヒシアマゾンに負ける3着、ビコーペガサス。短距離専門に走る若き外国産馬。


宝塚記念3着馬ダンシングサーパス。外国産馬。ダンシングブレーヴの直仔という良血は、どこで目覚めるのか?




11月20日、マイルチャンピオンシップ。

1.ゴールドマウンテン
2.ニホンピロプリンス
3.フジワンマンクロス
4.ナリタチカラ
5.トロナラッキー
6.トキノスピカ
7.ホッカイセレス
8.イナズマタカオー
9.ノースフライト
10.ダンシングサーパス
11.エクセレンスロビン
12.サクラバクシンオー
13.ビコーペガサス
14.フジノマッケンオー


1番人気ノースフライト、2番人気サクラバクシンオー、3番人気フジノマッケンオー。

4番人気ホッカイセレス、5番人気ビコーペガサス。



スタート直後はサクラバクシンオーを含め、4,5頭が横一線。

内から先頭に立ったのはフジワンマンクロスだ。2番手をゴールドマウンテンが行った。


外12番枠、サクラバクシンオーはムリをせず、3番手集団につけた。

余裕だ。


その集団ニハホッカイセレスもいる。


サクラバクシンオーの1列後列につけたのは、ノースフライト。

徹底マーク。


その後につけたのがダンシングサーパス、ビコーペガサス。


一団で進む馬群。

最後方から、末脚にかけるのか! フジノマッケンオー・武豊。



流れるような速いペース。スピード自慢でないと太刀打ちできないか?


フジワンマンクロスが下がり始め、ゴールドマウンテンが先頭に立った4コーナー。

早くも外からサクラバクシンオーが、ゴールドマウンテンに並びかけた。


すぐ後ろ、いた。手応え十分に、ノースフライトがサクラバクシンオーを狙っていた。



直線、抜け出すサクラバクシンオー。


外から迫るノースフライト。



完全一騎打ちか?


馬群の最後方から大外に出して、フジノマッケンオーが追撃態勢に入った。



ピッタリ並んだサクラバクシンオー、ノースフライト。


マイルでも、マイルでも勝ってみせるッ! 一歩も引かないサクラバクシンオー。


豪快な走りっぷりで、サクラバクシンオーを捻じ伏せようとするノースフライト。

牝馬の気弱さなど、微塵もない!



睨み合い、叩き合い。


ゴール前。


外から、フジノマッケンオーが3番手に上がり、さらに前を見据えた時。



ついに、決着がついた。



ノースフライトが、グッと出た。


開いた。アタマ・・・・・・半馬身・・・・・・1馬身・・・・・・。



ゴール!


1馬身半の差がついた。



サクラバクシンオーには、クビ差までフジノマッケンオーが迫っていた。



牝馬ノースフライト。11戦8勝、2着2回。

安田記念・マイルチャンピオンシップ、春秋マイルG1連覇。


初代マイル王・ニホンピロウイナー以来の快挙を成し遂げ、競走生活に幕を閉じた。


1着ノースフライト

2着サクラバクシンオー

3着フジノマッケンオー

4着ホッカイセレス

5着ビコーペガサス


(つづく)