5月29日、ダービー。

1.フジノマッケンオー
2.サムソンビッグ
3.サクラエイコウオー
4.エアダブリン
5.ヤシマソブリン
6.オフサイドトラップ
7.メルシーステージ
8.トロナラッキー
9.セントギャロップ
10.ナムラコクオー
11.イイデライナー
12.マルカオーカン
13.エクセレンスロビン
14.ドラゴンゼアー
15.ノーザンポラリス
16.アウネスサウザー
17.ナリタブライアン
18.スギノブルボン


1番人気ナリタブライアン、2番人気ナムラコクオー、3番人気サクラエイコウオー。

4番人気エアダブリン、5番人気フジノマッケンオー。


単勝1.2倍。圧倒的な人気、ナリタブライアン。

ブライアンに勝つために・・・・・・それぞれの厩舎が、騎手が、馬が・・・・・・秘策を胸に、ゲートを待った。


真っ先に飛び出したのは、メルシーステージだ。

17番、外枠に入ったナリタブライアン。後方からの競馬も・・・・・・。

少しでも前で、勝負だ!


思いは同じ、アイネスサウザーは1,2コーナーを6番手で回り、向こう正面で一気に先頭に立った。

初クラシックのトロナラッキーが果敢に2番手に上がり、メルシーステージは3番手。

サムソンビッグが行って、皐月賞で逃げたサクラエイコウオーが5番手につけた。


スギノブルボンを前に、7番手につけたのがナリタブライアン。

『シャドーロールの怪物』、白いシャドーロールが、ひときわ目に付く。


すぐ後ろでマークするナムラコクオー。

その後ろにはオフサイドトラップ。


後方、じっくり溜めて、直線に賭けるのか?

エアダブリン、フジノマッケンオー、ヤシマソブリン。


ナリタブライアンの半兄ビワハヤヒデの手綱を取る岡部幸雄。

『乗り馬が重なれば、勝つ馬に乗る』といわれる名手・岡部。この年、賭けていた馬がエアダブリンだ。


若き天才・武豊が、鞍上で究極の差し脚発揮の場を狙うフジノマッケンオー。皐月賞でも、上がりタイムならナリタブライアンに負けていないッ。


3歳時は、岡部が乗ったヤシマソブリン。

父ミルジョージ、母父ヴィミー。距離が延びれば、延びるほどいい。

10番人気、失うものはない。坂井千明が、鞍上で一発を狙う。



1000m通過、60秒フラット。

平均ペースより速い流れ。


3コーナーから、ナリタブライアンが動いた。

鞍上・南井克巳、自信の進出か?


外を通って脚を伸ばし、4コーナーでは外から先頭に立つ勢いだった。


サクラエイコウオーが追随して上がってくる。


直線に入るや完全に先頭に立ったナリタブライアン。


馬場の8分どころを通って、めざすはゴール一直線。


ところが、ナリタブライアンが外へ外へ、寄れた。

大外へ寄れるナリタブライアン。


離れた最内から、突っ込んできたのはエアダブリン・岡部幸雄、フjノマッケンオー・武豊だった。

後方から内へ入り、距離を最小限にして突き抜けてきた。


騒然とする場内。


内外大きく離れて、息詰まる攻防か?


思われた時、見るものはあっ気にとられた。



外々に寄れながら、内の2頭の存在をわかったかのようにナリタブライアンは、再び末脚を爆発させたのだ。


『怪物』ナリタブライアン。


半兄ビワハヤヒデを超えた?



一気に、エアダブリンに5馬身差、強い、強いダービー馬の誕生。


ナリタブライアン、6連勝で『2冠』達成。



岡部が考えた。エアダブリン、勝つための最良の走り。

フジノマッケンオーは2馬身突き放したが、ナリタブライアンには通じなかった。


最後、大外から突っ込んだヤシマソブリンがフジノマッケンオーをハナ差交わし、関東馬として唯一掲示板に載った。


1着ナリタブライアン

2着エアダブリン

3着ヤシマソブリン

4着フジノマッケンオー

5着ノーザンポラリス



6着に敗れた2番人気ナムラコクオーはレース中に骨折しており、また休養中に屈腱炎を再発。

2年にわたる屈腱炎との戦い。復帰したが、ダートのプロキオンSを勝ったのみで、中央で4戦、地方交流競走に1戦して、地方・高知競馬へ旅立った。


高知でも脚部難と戦いながら、2003年、12歳まで走り続けた。

中央14戦6勝、2着3回、3着1回。

地方33戦21勝、2着4回、3着1回。



黒鹿毛の名馬、ナムラ『黒王』。


地方に行っても、脚部難に苦しみながらも、年齢を重ねていっても、誇り高き勇者であり続けた。



(つづき)