阪神3歳牝馬Sを制したヒシアマゾン。3歳牝馬№1の称号を得た。

だが、クラシック出走権のない外国産馬。裏街道を走るしかなかった。

牡馬に交じって走った京成杯。ビコーペガサスの2着。

クイーンカップ、エイシンバーモント以下に勝って、重賞2勝目。

クリスタルカップでタイキウルフ、フィールドボンバー。男馬どもを蹴散らした、重賞3勝目。


桜花賞、オークスを夢見ることもできず、重賞獲りに走った。




牝馬最強のヒシアマゾンがいない桜花賞。混戦の域は出なかった。


阪神3歳牝馬Sでヒシアマゾンに5馬身ちぎられたが、2着となったローブモンタント。

新馬戦を勝ったままに、1戦1勝のキャリアで参戦。ヒシアマゾンには子ども扱いされたが、非凡さは見せた。

体質的に弱さがあり、続けて使えない。9月新馬戦のあとが12月阪神3歳牝馬S、4歳となって2月エルフィンSに登場。

オグリローマン、メローフルーツに続き3番人気。メローフルーツ7着、オグリローマン9着(最下位)、人気上位馬が惨敗するなか中団からアッサリ差し切り勝ち。

桜花賞の最有力候補、とはなった。

懸念は体質の弱さ。トライアルも使うことなく、桜花賞へ直行。



トライアル・チューリップ賞を勝ったのは4番人気アグネスパレード。

1月デビュー。新馬勝ちのあと、エルフィンSではローブモンタントの4着。

トライアルで権利を得た。



トライアル・4歳牝馬特別を8番人気で制し、桜花賞出走を決めたゴールデンジャック。

ゴールデンジャックも1月デビュー。新馬戦1着から、4,2,5着。桜花賞出走を危ぶまれたが、トライアルで見事一発を決めた。



エルフィンS2番人気で7着に敗れたメローフルーツ。札幌3歳Sの覇者。

名手・岡部幸雄に、この年選ばれた馬。

エルフィンSのあと、フラワーカップ2着で参戦。



劣勢の関東馬、期待を一身に集めたのがノーザンプリンセス。

新馬戦1着、ひいらぎ賞2着、フローラS1着、まだまだ未知な魅力で人気を集めた。

後に繁殖牝馬となり、産駒エイグレットからはミトラが出ている。



混戦のなかで注目の1頭がオグリローマンだ。

オグリキャップの半妹。

オグリキャップと同じ地方競馬、岐阜・笠松でデビュー。7戦6勝、2着1回の実績を引っ提げて中央に乗り込んできた。


父こそダンシングキャップからブレイヴェストローマンと変わったが、笠松で活躍し、オグリキャップと同じ栗東・瀬戸口勉厩舎に入厩。兄の後を追うオグリローマン。

多大な期待を浴び登場したエルフィンSは1番人気で9着、最下位。

トライアル・チューリップ賞で、後方から差してアグネスパレードの半馬身差2着。片鱗を見せた。


つねに付きまとう『オグリキャップの妹』。

偉大過ぎた兄オグリキャップ。仕方ないこと。


だが、オグリローマンには、捨てたい名まえだった。



オグリ・・・・・・。


もう、プレッシャーから解放されたい。




4月10日、桜花賞。

1.オグリローマン
2.グッドラックスター
3.ミストラルアゲン
4.ゴールデンジャック
5.アイアムフェアリー
6.リスクフローラ
7.ツィンクルブライド
8.メローフルーツ
9.エンゼルプリンセス
10.ノーザンプリンセス
11.スリーコース
12.ローブモンタント
13.テンザンユタカ
14.ナガラフラッシュ
15.エイシンセンネン
16.ヨシノジェーン
17.トウカイビスタ
18.アグネスパレード


1番人気ローブモンタント、2番人気ノーザンプリンセス、3番人気オグリローマン。

4番人気メローフルーツ、5番人気アグネスパレード。


武豊騎乗で中央初出走、エルフィンSを惨敗。田原成貴でチューリップ賞2着。

オグリローマンの鞍上は再び武豊に戻っていた。


1番人気ローブモンタントには田原成貴、ノーザンプリンセスには柴田善臣、メローフルーツには岡部幸雄、そして、12番人気ツィンクルブライドには大崎昭一が騎乗していた。

関東の大ベテラン・大崎昭一。『八百長疑惑』で関東から干され、関西の若手調教師が救った。1992年、橋口弘次郎厩舎の天皇賞馬レッツゴーターキン、大崎騎乗。記憶に新しかった。



大きく出遅れたアイアムフェアリー。

真っ先に飛び出したのはメローフルーツだったが、スリーコースが外から交わして先頭に立った。

2番手に控えたメローフルーツ。


2頭が抜け、ひしめき合う3番手グループ。

エンゼルプリンセスが行き、外からは1番人気ローブモンタント。

その内に入った、ツィンクルブライド。


ノーザンプリンセス、テンザンタカラ、ナガラフラッシュが行った。

1番枠オグリローマン、好スタートから徐々に下げ、中団内にいた。


後方から行くゴールデンジャック。

18番枠、大外アグネスパレードは最後方だった。



流れは一気に直線を迎え、

逃げるスリーコースにメローフルーツ、ローブモンタントが襲いかかった。


外から上がりを見せるノーザンプリンセス、テンザンユタカ・・・・・・、だが、伸びに鋭さがない!


先頭に立とうとするメローフルーツ、ローブモンタント。


遅れはじめたスリーコースとの狭い空間を、こじ開けようとするのがツィンクルブライドだ。


内でワンテンポ我慢した。下手をすれば、包み込まれる。

だが、これしかないッ!


勝つためには、溜めて一気に矢を放つ。

ツィンクルブライドの闘争心に賭けた大崎昭一。


狭いスペースに風穴を開け、一気に抜け出した。


先頭に立った。


あとはゴールをめざすだけ!



その時、


外から飛んできた、


オグリローマン。



内々を回った。直線、武豊のマジック? 馬群をかき分け外に出した。


見えたツィンクルブライド。



一気に、一気に迫った。



オグリの名が嫌だった。一番嫌だったオグリの妹。

私は、私。


だが、いま、オグリローマンは、わかった。



とんでもないスピードでツィンクルブライドに迫る自分。自分でない自分がいた。


この脚は・・・・・・。


この脚は、


兄、オグリキャップの脚。



兄の血が、私と同じ血が、私を走らせる。



ツィンクルブライドに迫るオグリローマン。



馬体が合ったところが、ゴールだった。



長い写真判定。


ハナ差、


オグリローマンが勝っていた。



1着オグリローマン

2着ツィンクルブライド

3着ローブモンタント

4着メローフルーツ

5着グッドラックスター


(つづく)