1988年、決着をつける時・・・・・・有馬記念。


タマモクロスが引退レースとなった。

『芦毛の怪物頂上対決』、天皇賞秋、ジャパンカップ、後塵を浴びてきたオグリキャップ。

最後の一戦。勝たなくては。

一歳上の『芦毛の怪物』。同じ芦毛馬として、次代を引き継ぐために・・・・・・勝つことこそ『怪物の継承』。


クラシックを戦えなかったオグリキャップ。

初の対戦に燃える同世代の雄。


菊花賞馬スーパークリーク。

若き天才、2年目の武豊が素質に惚れた馬。

優れた相馬眼で知られる『マイネル』の総帥・岡田繁幸氏をして、『菊花賞で勝ち負けできる馬を、挑戦すらさせないで諦めさせていいものだろうか』、苦渋の決断、賞金不足のスーパークリークを出走させるために自クラブの馬マイネルフリッセの出走辞退させた馬。

5馬身差、圧勝で菊花賞を制したスーパークリーク。

大河となったクリーク。


『スーパースター候補生』サッカーボーイ。

勝つときの強さは桁外れ。阪神3歳Sを8馬身差のレコード勝ちした時点で、クラシック3冠を獲れる器といわれた。

4歳となって負け続け、極めつけはダービー15着。

夏に甦った。

函館記念・芝2000m、日本レコード勝ち。ダービー馬2頭、メリーナイス、シリウスシンボリを退け5馬身差。

マイルチャンピオンシップで見せた圧巻の4馬身差。



オグリキャップに世代№1の座は渡さない。



タマモクロスに挑むオグリキャップ。

オグリキャップに挑むスーパークリーク、そして、サッカーボーイ。


すべての決着の果ては・・・・・・神のみぞ知る。




12月25日、有馬記念。

1.ランニングフリー
2.コーセイ
3.レジェンドテイオー
4.サニースワロー
5.サッカーボーイ
6.マティリアル
7.スーパークリーク
8.メジロデュレン
9.スズパレード
10.オグリキャップ
11.タマモクロス
12.ハワイアンコーラル
13.フレッシュボイス


1番人気タマモクロス、2番人気オグリキャップ、3番人気サッカーボーイ。

4番人気スーパークリーク、5番人気レジェンドテイオー。


菊花賞・有馬記念制覇メジロデュレン、宝塚記念制覇スズパレード、安田記念制覇フレッシュボイス、天皇賞秋2着・3着レジェンドテイオー、天皇賞春2着ランニングフリー、ダービー2着サニースワロー、桜花賞2着コーセイ・・・・・・。

錚々たるメンバーも、決着をつける4頭に華を添えるでしかなかった。



続々とゲートインするなか、1頭暴れていたのがサッカーボーイだった。

気性の荒いサッカーボーイ。気合の入りすぎが仇となった。


暴れ、ゲート内で頭、顔を激しく打ち付け、血しぶきを上げた。

そのさなかにゲートは開き、出遅れた。


万事休す、か?


逃げたのは、いつものごとくレジェンドテイオー。

ハワイアンコーラルが2番手、そのあとにランニングフリーがつけた。

スズパレード、コーセイ、サニースワロー。


オグリキャップがつけたのは、その後ろだ。


オグリキャップ、サッカーボーイ、2頭の主戦だった河内洋。

ジャパンカップの騎乗が批判された。鞍上は岡部幸雄に替わり、河内洋はサッカーボーイに騎乗していた。


岡部は中団から前を睨み、じっくりと後ろを待った。


オグリキャップの2頭後ろからはスーパークリークが行き、武豊は完全マークに入った。


最後方に並んで行くのが、内を通るサッカーボーイ、外のタマモクロスだ。



2馬身離していくレジェンドテイオー。

淡々とした流れ。


3コーナーすぎでオグリキャップが動いた。

うねりをもって流れが渦となった。


最後方からタマモクロスも動いたのだ!


外々から前へ前へ、と流れが押し寄せる。


内の先行馬が飲み込まれ、下がる。


直線を向いた時は、もうオグリキャップが先行馬を射程圏にとらえていた。



大外から伸びる芦毛の馬体、タマモクロス。

後方2頭目、サッカーボーイはタマモクロスから、さらに外へ持ち出し前を追った。



いち早く先頭に立ったオグリキャップが、ゴールをめざす。


そうはさせないッ!


並びかけようとするのは、



タマモクロスだッ!


来たかッ! 岡部は待っていた。



並びかけようとするタマモクロス。

並ばせない、オグリキャップ。


適距離でない2000m以上、歯を食いしばってがんばってきた。


オグリキャップ最大の武器。それは、折れない心。

岡部は見抜いていた。



一瞬に交わされない限り、オグリは耐える。



馬群を割ってスーパークリークが迫ってきた。


2頭の間に割り込み、そして突き抜ける。

思いはままならない。


オグリキャップ、タマモクロス、ゴール前で増すスピード。

この脚が通用しない。


やはり、やつらは怪物か!



ジリジリとしか迫れない、スーパークリーク。


大外から差してきたサッカーボーイ。

血塗れた顔を歪め、前に迫った。


『スーパースター』の仮面をかなぐり捨て、ドロ臭く全身を動かした。


重い切れ味。やはり、ゲート激突の影響か?


それでも、4番手に上がり、前を追った。



どこまでも続く競り合い。


オグリキャップ、半馬身、タマモクロス。


その差は、ついに縮まらぬままにゴール。


さらに半馬身後に、スーパークリークがゴール。



地方からやってきて9戦目、オグリキャップは『てっぺん』を獲った。


ついに、芦毛の先輩怪物、タマモクロスを打ち破った。



3着入線したスーパークリークは、直線、抜け出す時に外へ斜行。失格となった。


1着オグリキャップ

2着タマモクロス

3着サッカーボーイ

4着ランニングフリー

5着メジロデュレン


(つづく)