世紀の2強対決。

『3冠馬』ミスターシービー、『3冠馬』シンボリルドルフ。


その舞台はジャパンカップだった。

どちらが強いか? よりも、競馬ファンにとっては世界と互角に戦ってほしい・・・期待感でしかなかった。

ジャパンカップ創設により、世界の馬を間近に見た。驚いた。衝撃だった。


世界の強さ。


日本馬の勝利は、悲願となった。


シンボリルドルフ3着、ミスターシービー10着。

悲願を達成したのは、ミスターシービーに苦杯を舐めさせられ続けた同期、カツラギエースだった。



有馬記念、2度目の『3冠馬』対決。

花を添えたのは、有馬記念を引退レースとするカツラギエースだった。



ジャパンカップレース後、最も悔しさを滲ませたのは、定位置最後方から何もできず10着と敗れたミスターシービー鞍上・吉永正人だ。

『バテた馬を見て行く気を出すシービーだが、世界の馬たち、バテる馬がいなかった。前で勝負するべきだった』

弱音を吐いた吉永。不器用なミスターシービー、その騎乗法には吉永正人自身、常に悩みは抱いていた。

雪辱戦となる有馬記念。ついにミスターシービーを管理する松山師は指示を出した。

『馬群に入って戦え』。



初めての敗戦となったシンボリルドルフ。

中1週のきついローテーション、初めての古馬との対戦、万全でなかった体調。

3着は悔やみことすれ、嘆くことではなかった。


『皇帝』シンボリルドルフとしての、新たな一歩。

2度目の『3冠馬』対決、ジャパンカップ覇者カツラギエースとの再戦。


勝ってこそ、また王道を歩み始める。




12月23日、有馬記念。

1.スズマッハ
2.ミスターシービー
3.メジロシートン
4.シンボリルドルフ
5.トウショウペガサス
6.サクラガイセン
7.キョウワサンダー
8.ダスゲニー
9.カツラギエース
10.ミサキネヴァー
11.ダイナカール


1番人気シンボリルドルフ、2番人気ミスターシービー、3番人気カツラギエース。

4番人気メジロシートン、5番人気サクラガイセン。


ファン投票1位はミスターシービー。だが、単勝1番人気は1.7倍、圧倒的な支持を得たのはシンボリルドルフだった。



11頭立て、少ない頭数。

ファンの興味は、もっと凝縮されて、シンボリルドルフ、ミスターシービー、カツラギエースの3頭。


飛び出しはスズマッハだった。

100mも行くとカツラギエースが外から並びかけた。


そして交わして行く。


ジャパンカップのように西浦勝一の長手綱。


じんわりと引き離しにかかる。




3番手、外に付けたのはサクラガイセン。

内にピタッと、シンボリルドルフがつけた。


後方、馬群から離れて、ポツン、ポツン、ポツン・・・3頭が行く。

最後方キョウワサンダー、後方2頭目ダスゲニー。

ミスターシービーは馬群から離れてはいるが、後方3頭目を行った。


吉永正人、遠く前に、目に映るものは、シンボリルドルフ。



軽快に逃げるカツラギエース。引退レース。

ジャパンカップ優勝馬、もう、思い残すことはない。


思いのままに、駆けるだけ。


向こう正面、4,5馬身離して逃げるカツラギエース。


ジャパンカップの再現は、させない。

シンボリルドルフが2番手に上がった。



3コーナー、じわじわ差を詰めるシンボリルドルフ。

落ち着き払っている。これが『皇帝』、威圧する強さ。



ミスターシービーは内から差を詰めた。

あの、外から一気の迫力はない。

内々から、1頭交わし、2頭交わし、悲壮感をも漂わして、前を睨む。



直線へ。


ここまで来たら、あとは逃げ込むだけ。

必死に逃げるカツラギエース。


並びかけるシンボリルドルフ。


2頭が、他を離した。



直線半ば、後続が差を詰めてきた時、


シンボルルドルフは、

スーッとカツラギエースを突き放した。


勝利を確信した鞍上・岡部。



後続馬群から、やっと抜け出したミスターシービー。

追いかけたのは、2着カツラギエースだった。


2馬身差、悠々とゴールしたシンボルルドルフ。




史上初の『4歳4冠』。


真の『皇帝』となったシンボリルドルフ。



1着シンボリルドルフ

2着カツラギエース

3着ミスターシービー

4着スズマッハ

5着サクラガイセン



(つづく)