シンボリルドルフの仔トウカイテイオー・・・のことはさておき、皐月賞制覇で『3冠』の資格を得たシンボリルドルフ。

鞍上・岡部幸雄が騎乗停止となるほど、ビゼンニシキとの戦いは熾烈だった。


何はともあれ無傷の皐月賞馬。2着のビゼンニシキも含めて皐月賞レコードで走った強さは、他の追随を許さないものとなった。

『皇帝』への道をひた走る。



シンザン以来19年ぶりの『3冠馬』となったミスターシービー。

2年連続『3冠馬』誕生なんて・・・そんな歴史は、ないだろう。


否定派もいた。




皐月賞までは双璧だったビゼンニシキ。

トライアル・NHK杯を2馬身半差圧勝するも、父ダンディルートの短距離の血からダービーでの逆転は難しいとされた。

新設マイルG1。路線変更は秋からでも遅くはない。

同世代として、強いシンボリルドルフに挑む。


ビゼンニシキ、気概だけは失っていなかった。




新馬戦3着のあと3連勝。共同通信杯4歳S4着、弥生賞4着、皐月賞4着のスズパレード。

母が姉妹同士というスズマッハ(スプリングS3着、皐月賞7着)とともに、クラシック戦線を彩った。


真の心根は『打倒シンボリルドルフ』。スズマッハ、スズパレード、力を合わせれば・・・。




シンボリルドルフに負けていない馬。対戦していない未知の馬に人の心は集まる。

4戦3勝、青葉賞を勝ったラッシュアンドゴー。

京都4歳特別2着、ノーザンテースト産駒カミカゼイチバン。


関西の期待を背負った。




5月27日、ダービー。

1.メジロクレイバン
2.ダイナミリオン
3.スズパレード
4.ワカアロー
5.ハリケーンアサ
6.フジノフウウン
7.ハーバークラウン
8.ニシノライデン
9.ラッシュアンドゴー
10.シンボリルドルフ
11.オンワードカメルン
12.ハツノアモイ
13.カミカゼイチバン
14.ビゼンニシキ
15.ケンセツエース
16.イブキラーゼン
17.トウホーカムリ
18.ダイゴウリュウ
19.スズマッハ
20.カリスタキング
21.マルブツサーペン



1番人気シンボリルドルフ、2番人気ビゼンニシキ、3番人気ダッシュアンドゴー。


4番人気スズパレード、5番人気カミカゼイチバン。



外19番枠から果敢に行ったのがスズマッハ。

鞍上はダイシンボルガード、カツトップエースでダービー2勝のいぶし銀・大崎昭一。

皐月賞4番人気7着のスズマッハ。20番人気と大きく人気を落としていた。


いまなら、誰も付いては来ないだろう。

一気に先頭に立った。



ラッシュアンドゴー、フジノフウウンが続いた。



ビゼンニシキが8番手。

すぐ後ろにシンボリルドルフが続いた。



前は射程圏。後ろから何が上がって来るか?

シンボリルドルフの位置をピタッと決めた岡部。


距離に不安があるとはいえ、皐月賞で苦しまされたビゼンニシキ。

まずはこの馬を警戒。



流れは完全に止まった。

ビゼンニシキ、シンボリルドルフが動かない。


動けなくなった全馬。


スズマッハ・大崎昭一の賭けは的中した。



このまま、このまま。何も来るなッ!

直線まで持てば・・・なんとかなる。



願った。



良馬場でもタイムがかかる。パワー型の馬場も幸いした。

溜めて逃げるスズマッハ。2番手フジノフウウン。


3番手に内からスルスルッと上がってきたのはスズパレード。

スズマッハの作戦に呼応して、唯一、動いた。


気づかれずに内から忍び寄った。


3,4コーナー、ジリジリッと外を通って上がってきたビゼンニシキ、シンボリルドルフ。



直線に入った。



最内、ラチ沿いに逃げるスズパレード。

中を迫るフジノフウウン。

外に持ち出した、スズパレード。


3頭が横に広がった。



その外を・・・ビゼンニシキの脚色が良くない。


岡部は見定めた。



直線半ば、岡部が追い始めた。



場内大観衆の不安な顔が消し飛んだ。



前の3頭に迫り、並び、交わし切った。




強い!


感嘆の声が沸き起こった。



1馬身4分の3馬身。ぶっちぎることはない。



勝つために考え、勝つために乗る岡部。


その通りに走るシンボリルドルフ。



『皇帝』への道。


また一歩、シンボリルドルフは上り詰めた。




アタマ、ハナ、ほぼ横一線でゴールした3頭。


善戦、及ばず。




1着シンボリルドルフ

2着スズマッハ

3着フジノフウウン

4着スズパレード

5着ニシノライデン





14着と敗れたビゼンニシキ。

秋は短距離路線へシフト。10月、スワンS(芝1400m)から始動。

直線で故障発症、勝ち馬ニホンピロウイナーから6秒4も離された12着で入線。



競走能力喪失、引退となった。



早くに路線変更していれば、クラシックの疲れがなかったら・・・それは、言うまい。


産駒ダイタクヘリオスがマイル王として君臨したことを思えば、ビゼンニシキがいかにマイルに強かったか・・・、



想像はつく。



(つづく)














NHK杯圧勝は、むしろ