『世界に通じる馬づくり』。

ジャパンカップは無残だった。第1回に続き、第2回までも日本馬は5着が精一杯。


世界のジョンヘンリー、世界の名牝エイプリルランが勝ったわけではない。

勝ったハーフアイストはG1では4着が最高という馬。


世界の層の厚さをまざまざと見せつけられた。


それでもゴール前200mまでは夢を見れた。未来は明るい。

いや、あれから一気に交わし去る世界の凄み。日本馬の夜明けは遠い。


かけ離れた意見が飛び交った。


そんななかで、当の馬たちは前を向くしかない。

いまを、いまを走る。めざすは、有馬記念。




ヒカリデユール、カズシゲ、カツアール、地方からやって来た野武士たち。

負けても、負けても、野望は捨てない。『地方の英雄』のままでは終われない。

境遇のなかから生まれた『這い上がり根性』、走りの原動力。いまに見ていろ。




前年の覇者アンバーシャダイにとっても『這い上がり根性』は原動力だった。

中央デビューではあるが、当歳で負った右膝裂傷の影響で競走馬として劣等生扱いされた。入厩しても誰も担当したがらない、みすぼらしい馬体の馬だった。

遅くにデビューしてオープンまで這い上がるのに18戦。決してエリートではなかった。

負けてたまるかッ、その思いで這い上がった馬。




メジロティターンとて順風満帆とはいえなかった競走生活。仕上がり遅く本格化手前で骨折、紆余曲折の末、やっとつかんだ天皇賞制覇の栄冠。

父メジロアサマ、生涯19頭の産駒の1頭として、何がなんでも血を繋げたい。

一心がメジロティターンの体を突き動かしたか?




『太陽の仔』モンテプリンス。有り余る素質を生かし切れない道悪不得手。

良馬場がほしい『太陽の仔』。晴れて良馬場もダービー2着、菊花賞2着、天皇賞2着。

欠けていた大きなもの。ハングリーを超えたアングリー、自分への怒りで勝ち得た天皇楯。




大シンザンの息子として、初のクラシック馬となったミナガワマンナ。

菊1冠では父の偉大さには、到底追いつけない。

走るその胸にあるのは、つねに父シンザン。




ダービー以降16連敗のオペックホース。

皐月賞2着、ダービー2着ワカテンザン。

有馬記念2着、4着、10着、4度目の挑戦メジロファントム。

エイザベス女王杯でやっとつかんだ幸せ、ビクトリアクラウン。



それぞれに思いを込めた夢のグランプリ。





12月26日、有馬記念。

1.モンテプリンス
2.ミナガワマンナ
3.オペックホース
4.アンバーシャダイ
5.カツアール
6.ワカテンザン
7.アキビンゴ
8.メジロティターン
9.ヒカリデユール
10.ビクトリアクラウン
11.キョウエイプロミス
12.トドロキヒホウ
13.カズシゲ
14.トウショウゴッド
15.メジロファントム



1番人気アンバーシャダイ、2番人気メジロティターン、3番人気ヒカリデユール。

4番人気ミナガワマンナ、5番人気モンテプリンス。



雨降る重馬場の中で、スタートは切られた。

雨を嫌うモンテプリンス。人気も5番人気まで下がった。


少しでもいい馬場を・・・行くしかない。

1番枠モンテプリンスは果敢に先行した。

ハナを切って、3,4頭分外を回った。


2番手、内を通ってアキビンゴ、外からキョウエイプロミス。

すぐあとを、アンバーシャダイがつけた。


カズシゲ、ワカテンザン、ミナガワマンナ、ビクトリアクラウン、一団で続く。


逃げるモンテプリンス、好位で睨むアンバーシャダイ。


完全に流れを止めた。


誰も動こうとしない。いや、動けないか。



動けない流れのまま、3コーナーを迎えた。

重い馬場を必死で踏ん張るモンテプリンス。


必死さを見て取ったアンバーシャダイは馬なりのまま、直後まで上がってきた。

外からキョウエイプロミスも迫る。


中団から追い上げを開始するカズシゲ、ビクトリアクラウン。



直線に入った。



先頭に立ったのはアンバーシャダイだ。

抜群の手応え、鞍上・加藤和宏には連覇が見えた。



最内から影のように伸びてきたトウショウゴッド。

外から迫るキョウエイプロミス、ビクトリアクラウン、トドロキヒホウ。


アンバーシャダイを脅かせる、伸びはないッ!



4コーナーでは最後方にいたヒカリデユール。

馬群を割って、顔を出したこと思うと、一気にキョウエイプロミスらを交わし去り、



迫った、迫った、狙うはアンバーシャダイ。


天下取り・・・そのために中央にやってきた野武士。


この時、瞬間を、逃すわけには行かぬ!


ありったけの力を、爆発させた。




閃光の末脚。



ヒカリデユールはアタマ差、アンバーシャダイを差し切った。



サラ系、「サラブレッドと思われるであろう」という馬の、執念。



1着ヒカリデユール

2着アンバーシャダイ

3着キョウエイプロミス

4着トドロキヒホウ

5着ビクトリアクラウン



(つづく)