天皇賞春をモンテプリンスとマッチレース。敗れ、2着に甘んじたアンバーシャダイ。
秋こそは・・・毎日王冠4着をステップに3度目の盾獲りに挑戦。
クラシック・トライアル3冠。皐月賞は繋靭帯炎で取消し、ダービー・カツトップエースの2着、菊花賞・ミナガワマンナの2着。ついにクラシックは勝てなかったサンエイソロン。
春はサンケイ大阪杯を勝ちながら繋靭帯炎再発で回避。
脚に爆弾を抱えながらの出走。足の痛みに耐えて、秋、毎日王冠復帰。キョウエイプロミスの2着。
勝てなかった。よかったかも、天皇賞秋は勝つ番だ。
生涯19頭しか産駒が生まれなかったメジロアサマ。その受胎率の低いメジロアサマに、フランスから輸入した良血繁殖牝馬シェリルをつけたメジロの総帥・北野豊吉氏。
アサマの仔を天皇賞馬に・・・深い思い入れがあった。
運よく受胎、生まれたメジロティターン。
仕上がり遅く4歳デビュー。クラシックは無縁だった。
初重賞セントライト記念ではサンエイソロンを破り、前途が見えた矢先に左後肢亀裂骨折。
古馬となって4月復帰。重賞6戦、6,1,9,6,5,5着。日経賞は勝ったものの、まだまだ古馬一線級は手強かった。
クラシックとはまったく無縁。この年、6歳春までは条件馬だったキョウエイプロミス。
4月・ダイヤモンドSを勝ち、秋、毎日王冠でサンエイソロン、アンバーシャダイ、メジロティターン、メジロファントム、カツアール、錚々たるメンバーを打ち破って勝利。
それは管理する調教師・高松邦男の『約束』だった。
キョウエイプロミスは、邦男師の父三太師が生前、牧場で惚れ込んで引き取った馬。父三太師の跡をついで、何としてもプロミスを大成させる。思いがままならぬまま時が経ち、辛酸をなめた。
やっと、やっと、思いの半分は達成した。
母アイテイグレースはサラ系。4代母は何かの都合で血統書がなくなった。『サラブレッドであろう馬』と烙印を押されたのがサラ系だ。かつて皐月賞・ダービー2冠を制したヒカルイマイ。能力に何の支障もないことを証明したが、サラ系ということで繁殖牝馬には恵まれなかった。
地方競馬で走り、ひたすら上をめざしたヒカリデユール。6歳秋、ようやく中央へトレードされ、芝を走る。
朝日チャレンジカップを7番人気でいきなり勝利。
野望はてっぺん獲り、それしかない。
一足早く中央へ殴り込み。前年、天皇賞春2着、秋5着のカツアール。
天皇賞春2着後、宝塚記念でカツラノハイセイコを破った後、重賞勝ちはないが、野武士の野望に衰えはない。
10月31日、天皇賞秋。
キャンデーライト
アズマキング
メジロファントム
メジロティターン
サンエイソロン
キングスポイント
カツアール
トドロキヒホウ
ヒカリデユール
アラナスゼット
ピュアーシンボリ
テルノホープ
キョウエイプロミス
アンバーシャダイ
1番人気サンエイソロン、2番人気アンバーシャダイ、3番人気キョウエイプロミス。
4番人気メジロティターン、5番人気ヒカリデユール。
アズマキングが好スタートを切ったが、アラナスゼットが外から先頭、ピュアーシンボリが続いた。
内で3番手につけたメジロティターンだが、徐々に下げる。代わって外からアンバーシャダイ、キョウエイプロミスなどが好位に。
中団にヒカリデユール。
サンエイソロンは後ろから5頭目。カツアールが後方。
メジロファントム、5度目の天皇賞挑戦。最後方から行った。
淡々としたペース。
3コーナー、勝負どころで動いたのはメジロティターンだった。
内にいたメジロティターンがいつも間にか外へ出し、前を行くアラナスゼット、ピュアーシンボリの間に割り込んできた。
キョウエイプロミス、アンバーシャダイも動く。
サンエイソロンも、ようやく中団まえまで取りついてきた。
直線に入るや、一気に抜け出したのはメジロティターン。
父アサマ譲りの芦毛の馬体が躍った。
ズラーッと横に広がった後方。
キョウエイプロミスが、アンバーシャダイがくるが、1番人気サンエイソロンは伸びないッ!
代わって伸びてきたのがヒカリデユール!
大外からはカツアール!
必死で前を行くメジロティターン。
アンバーシャダイも、キョウエイプロミスも、伸びない。
伸びてきたのは、野武士だッ!
地方で耐えて、野望だけを心の糧に乗り込んできた強者(つわもの)。
ヒカリデユールが、
カツアールが、
雄叫びを上げた!
しかし、メジロティターンも負けてはいられない。
父アサマの大切な血を繋ぐ、わずか19頭の1頭。
何が何でも、勝ってみせるッ!
鬼の形相で、ゴールへ飛び込んだ。
1着メジロティターン
2着ヒカリデユール
3着カツアール
4着トドロキヒホウ
5着アンバーシャダイ
メジロアサマ、メジロティターン、芦毛父仔天皇賞制覇。
芦毛伝説第2章。
そして、9年後の第3章、メジロマックイーンへと伝説は続く。
(つづく)