現在でもホエールキャプチャを輩出するなど活躍する千代田牧場。

20世紀初頭に小岩井農場が導入した基礎輸入牝馬のビューチフルドリーマー系のオーハヤブサ(オークス馬)を導入、牧場の活気を図った。

そのオーハヤブサの仔ワールドハヤブサと、リーディング上位にあった種牡馬ファバージとの間に生まれたのがビクトリアクラウンであり、その馬名は『この馬だッ!』と思う馬と巡り合うまでは・・・と当時のオーナー・飯田正氏が温存しておいたもの。

千代田牧場期待のビクトリアクラウンは新馬戦こそ6着と大敗したが、以後4連勝で1月のクイーンカップを勝ち、東の桜花賞最有力候補とされた。

テイタニヤ、テンモンを育てた『牝馬作りの名人』といわれる稲葉幸夫厩舎。前年のテンモンでオークス5勝の『牝馬の嶋田』といわれた嶋田功とコンビを組み、前途洋々だったが・・・。

桜花賞10日前に左前脚剥離骨折、春シーズンを戦線離脱。一気に主役なき牝馬クラシック戦線となった。


余談だが、ビクトリアクラウンの母ワールドハヤブサの1番仔にミスオーハヤブサがおり、その仔チヨダマサコからはニッポーテイオー、タレンティドガールの名馬兄妹が生まれた。そしてタレンティドガールがヨーロッパに渡り大種牡馬ナシュワンと種付け、生まれた仔がエミネントガール。エミネントガール、その仔グローバルピースはともに活躍できぬままだったが、グローバルピースの仔によって歴史ある血が再び開花した。

父クロフネ、母グローバルピース、ホエールキャプチャだ。

『すべては馬のために』の信念で、血の繋がりを大切にする千代田牧場。ホエールキャプチャには、長い、長い、血の熱さがある。




関西では阪神3歳Sでリードエーティの2着したヤマノシラギクが、紅梅賞・4歳牝馬特別と連勝。

ビクトリアクラウンと同じビューチフルドリーマー系として期待されたが、故障。桜花賞を回避した。




混戦模様となった桜花賞。


トライアル・阪神4歳牝馬特別。勝ったのは3,2,2,4着、5戦目で未勝利戦を勝ったばかりのツキマリー。



トライアル2着は関東馬リーゼングロス。当時リーディングサイアーだったアローエクスプレス産駒。まだ2勝の身ではあったが、桜花賞の出走権を獲得した。

北海道3歳S、2番人気9着。3歳牝馬S、1番人気8着。不安定な戦績も、その切れ味は鋭いものがあった。



トライアル1番人気も少差3着に敗れたマンジュデンレディ。

前年の桜花賞馬ブロケードと同じイエローゴッド産駒。



トライアル3番人気、8着に敗れたメジロカーラはそれまで4戦3勝。

父は芦毛初の天皇賞馬メジロアサマ。メジロアサマは現役時代に関東を中心に大流行した流感騒動に遭い、その治療の後遺症か、種付け初年度から受胎は0という結果。メジロ牧場上げて治療、工夫されたが、生涯残した産駒はわずか19頭だった。

1歳上のメジロアサマ産駒メジロティターンは仕上がりが遅かったのと骨折でクラシックは未出走。メジロカーラに対するメジロ牧場の期待は高まるばかりだった。



小倉デビュー、小倉3歳Sを制したホクトマツシマは阪神3歳S・2番人気5着、トライアル・2番人気9着。

小倉デビュー馬のクラシックの壁にぶち当たりつつあった。それでも、この混戦なら・・・野望は捨てない。





4月11日、桜花賞。

1.ホクトマツシマ
2.キークライネ
3.ツキノトウショウ
4.マンジュデンレディ
5.アサクサセンター
6.グローリーウエイ
7.バネッサ
8.ツキマリー
9.ジョーベゼクリク
10.スペースシャトル
11.リーゼンクロス
12.サクラカナリヤ   出走取消
13.ダイナフェザー
14.ウーマンパワー
15.ベルベットムーン
16.ファンドリルビー
17.ワールドハンター
18.ユーセコクイン
19.メジロカーラ
20.ブルパリーゼ
21.スイートイブ
22.ナルグリーン


1番人気マンジュデンレディ、2番人気リーゼンクロス、3番人気メジロカーラ。

4番人気ツキマリー、5番人気グロリーウエイ。



先頭を切ったのはツキマリーだった。

2番手にスペースシャトル、3番手、内でホクトマツシマ。


マンジュデンレディは6番手。


中団に早めメジロカーラ。リーゼンクロスが続いた。


前半800m46秒4、魔の桜花賞ペースでぶっ飛ばすツキマリー。


3コーナーから早くも後続の仕掛けが始まった。


外をグーンと上がって、3番手まで押し上げてきたリーゼンクロス。

めがけて、メジロカーラも上がってきた。


マンジュデンレディは馬群でもがく。


4コーナーを回って、馬群の真ん中から先頭に立つのはリーゼンクロス。

ツキマリーが内で粘る。必死で粘る。


外からメジロカーラ。父メジロアサマと同じ芦毛の馬体が躍る。


直線半ば、接戦の攻防に終止符を打ったのは、リーゼンクロスだった。


いいものを持ちながら、走ってみなければわからない不安定なリーゼンクロス。


いま、この時、


かなぐり捨てた。



めざすはゴールのみ。



一気に駆け抜けた!



2番手に上がってきたメジロカーラに5馬身差。


3着には、ゴール前で19番人気ユーセコクインが突っ込んだ。



1着リーゼンクロス

2着メジロカーラ

3着ユーセコクイン

4着ツキマリー

5着ベルベットムーン



(つづく)