黒船襲来。

第1回ジャパンカップ。

世界から7頭の外国馬が集まった。アメリカ3頭・ザベリワン・メアジードーツ・ペティテート、カナダ3頭・フロストキング・ブライドルパース・ミスターマチョ、インド1頭・オウンオピニオン。


『世界に通用する馬づくり』のために、日本で初めて開催された国際招待レース。

当時、世界一の優勝賞金6,500万円で話題を呼んだが、実際に参加した招待馬は世界を争う強豪とは言い難かった。

国際G1競走優勝馬であるザベリワン(アメリカ)を除いては、G2優勝馬にすぎなかった。


それでも、初めて見る海外の馬たち。そして、日本の精鋭馬たちと走る。

言い知れぬワクワク感。

そして、どんな結末を迎えるのか? 世界への恐怖感。


日本から旅立った馬たちは散々な成績で帰ってきただけに、なおさらだ。

現実に、前年ワシントンD.Cインターナショナルに出走した菊花賞馬ハシクランツは8着に敗れ、その時の2着がザベリワンだった。




日本馬の代表格は、天皇賞秋でハナ差の激闘を演じたホウヨウボーイ、モンテプリンス。互いの敵は、海の向こうからやってきた強者(つわもの)。

大レースに力を発揮する、いぶし銀メジロファントム。

地方からやってきた野武士、天皇賞秋3着ゴールドスペンサー。

『日の丸特攻隊』といわれた、快速サクラシンゲキ。1800m京王杯オータムハンデ、1600mオープン戦(2着に6馬身差)を逃げ切り連勝した馬が、日本の快速馬の誇りにかけて2400m、無謀な距離に挑む。

牝馬2頭。重賞3勝、アローエクスプレスの仔ジュウジアロー。5連勝から15連敗、奇跡の復活4連勝、天皇賞秋を6着と気を吐いたラフオンテース。

ジャパンカップ前哨戦のオープン戦を勝って出走権をとった、日本の外国産馬タクラマカン。




11月22日、ジャパンカップ。

1.フロストキング
2.ホウヨウボーイ
3.ペティテート
4.タクラマカン
5.ラフオンテース
6.ジュウジアロー
7.ブライドルパース
8.サクラシンゲキ
9.ゴールドスペンサー
10.オウンオピニオン
11.ザベリワン
12.メジロファントム
13.ミスターマチョ
14.メアジードーツ
15.モンテプリンス


1番人気ザベリワン、2番人気モンテプリンス、3番人気ホウヨウボーイ。

4番人気ゴールドスペンサー、5番人気メアジードーツ。



スタート前にタクラマカンがゲートを飛び出し外枠発走。


ゲートが開くや否や飛び出したのが、サクラシンゲキだった。

潰れてもいい、ハナは譲らないッ!


まさに『日の丸特攻隊』。1コーナーをめがけてグングン行った。


2番手につけたのがブライドルパース。

3番手、フロストキング。


4番手にミスターマチョ。


中団にザベリワンがつけた。

ホウヨウボーイ、モンテプリンス・・・日本馬はザベリワンをマークした。



外国馬に絡まれながら、サクラシンゲキは孤軍奮闘、ハナを切る。

先頭だけは、先頭だけは譲らない。

初めての外国馬との戦い。日本の誇りをもってレースをリードする。



サクラシンゲキはブライドルパースの執拗な絡みを受けながらも、逃げた。

3馬身離れてフロストキング。


10馬身離れた、後続集団。


場内は、サクラシンゲキのがんばりに拍手した。


3コーナー、大歓声が悲鳴へと変わった。


フロストキングが外から一気に、先頭に立つ勢いで上がってきた。

後続もドンドン差を詰めた。


ブライドルパースが集団に飲み込まれ、ザベリワン、ペティテートが上がってきた。


4コーナー、外から先頭に立とうとするフロストキング。

その内、サクラシンゲキが精一杯、がんばっていた。



飲み込まれてたまるかッ! 粘っている。


直線、出ようとするフロストキング。サクラシンゲキは耐えて並んだ。



最後の坂を駆け上がった。



限界だったサクラシンゲキ。フロストキングに離された。下がり始めた。


ようやく先頭に立ったフロストキングに、襲いかかったのはメアジードーツ。

19歳、若き獅子、キャッシュ・アスムッセンのムチに応えて外からすっ飛んできたッ!


ゼベリワンも3番手に上がってきた。


さらに外からペティテート。



日本馬はやって来ない。



これが、世界か!



呆然とする中、メアジードーツがゴールを駆け抜けた。


2分25秒3、日本レコード。



日本馬は、ゴールドスペンサーが5着に入るのが、精一杯だった。

ホウヨウボーイ6着、モンテプリンス7着、サクラシンゲキ9着。



1着メアジードーツ

2着フロストキング

3着ザベリワン

4着ペティテート

5着ゴールドスペンサー



外国馬と互角に戦うのは、10年先といわれた。

それほどの希望なき敗戦だった。



(つづく)