4連勝で『桜の女王』となった天才少女・ブロケード。

父イエローゴッド、母父スパニッシュイクスプレスから、オークスの距離2400mは不安視された。

それでも無敗のまま桜花賞・オークスを制覇する偉業へ。

天才少女には、恐れるものはなかった。



牝馬で朝日杯3歳Sを制し、桜の女王最有力だったテンモン。

ブロケードの出現は脅威だった。


普段から大人しく、素直。母を亡くし人によって育てられたせいか、人懐っこく甘えん坊。

「素直で御しやすく、ひたすら走るところが素晴らしい。そして、何より走り出したら凄みがあった」

オークス4勝、『牝馬の嶋田』といわれた鞍上・嶋田功。

オークスを勝たせてやりたい・・・いや、勝てる馬、誰よりも信じていた。



新馬戦では2着馬を9馬身ぶっちぎり、京成杯3歳Sを6馬身ちぎり、テスコボーイ産駒の大物ぶりを見せたタケノダイヤ。

桜花賞では伸びきれず4着。

距離伸びての不安はあるが、黙って引き下がれない。



母ソシアルトウショウは、テスコガビーのオークス2着馬。その半弟が『天馬』トウショウボーイ。

良血エイティトウショウが、ようやくクラシック参戦。

生後間もなく蹄骨骨折、腱に異常、胃腸が弱く下痢を繰り返す。とてもヤワな体だったエイティトウショウ。入厩後も食欲不振で栄養失調となり牧場に戻されるなど、競走馬以前の悩み多き馬だった。

デビュー4歳2月。完全な出遅れながら4戦2勝。フラワーカップではサクラスマイルに勝って重賞勝ち。

走れば、その良血が黙ってはいない。



母カバリダナーが、エイティトウショウの母ソシアルトウショウと同期。オークスではカバリダナーが2番人気だった。結果は14着。

カバリエリエースには母カバリダナーの雪辱のための走りでもあった。

4歳1月と、これまた遅くにデビュー。4戦3勝、3着1回。クイーンカップでタケノダイヤを破り、オークストライアル・4歳牝馬特別を1番人気、2馬身半の圧勝。



いまの競馬界をリードする社台グループの飛躍の礎となった一口馬主・社台レースホースが1980年に設立され、この年、オークスに2頭のクラブ馬を送り込んできた。

ともに父は社台が誇る種牡馬ノーザンテースト。

ダイナビクトリアとトロピカルダイナだ。

1986年頃まで、『ダイナ』の冠で走った社台レースホースの馬。一方、クラブに属さない社台所有の馬は『シャダイ』の冠で登録された。




実績馬、良血馬入り乱れる関東馬攻勢のなかにあって、西から挑んだ精鋭。


桜花賞トライアル2着、桜花賞9着アグネステスコ。

桜花賞トライアル3着、桜花賞13着、ニシノチェニル。

ヒロウイナー、トウカイマーチ、マヤノエンジェル、フタバプリンセス。




サクラユタカオーの半姉でサクラスターオーの母となるサクラスマイルも出走していた。




5月24日、オークス。

1.キンセイパワー
2.トウカイマーチ
3.タケノダイヤ
4.ロングハーディ
5.ニシノチェニル
6.アグネステスコ
7.クインヤマタケ
8.エイティトウショウ
9.カイエンオーカン
10.ヒロウイナー
11.ロンチャリング
12.フタバプリンセス
13.シャッフィー
14.サクラスマイル
15.マヤノエンジェル
16.スイートコンコルド
17.テンモン
18.ブロケード
19.ダイナビクトリア
20.カバリエリエース
21.ハザマアスナロ
22.トロピカルダイナ
23.ノーザンパワー
24.オンワードルナ


1番人気テンモン、2番人気カバリエリエース、3番人気タケノダイヤ。

4番人気ブロケード、5番人気エイティトウショウ。




不良馬場、何が行くか注目されたスタート。

好スタートからハナに立ったのはヒロウイナーだった。

関西のデビュー3年目、気鋭・田原成貴は果敢に出して行った。


キンセイパワー、ブロケード、タケノダイヤを引き連れて、先頭に立つ。


テンモンが中団につけた。


2番人気カバリエリエースは、スタートのタイミング合わなかったのか?20番枠からスタートするなり前に出ず横走り、大きく遅れて前に進む形となった。馬群から完全に取り残された。


向こう正面に入って逃げ足を伸ばすヒロウイナー。

5馬身、8馬身、10馬身、大逃げだ。


2番手にブロケードが上がった。


ピタリとつけるタケノダイヤ。


3コーナー、外から上がり始めたテンモン。

桜花賞ではブロケードをつかまえきれなかったテンモン。


鞍上・嶋田功、『絶対勝つ!』、強い思いの上昇。


力尽き、下がり始めたヒロウイナーを交わし、4コーナーでは内のブロケードとともに先頭に顔を出したテンモン。


直線、確かな足取りで、敢然と先頭に立った。


ブロケードは限界。下がり始めた。


内から伸びかけるハザマアスナロ、馬場の真ん中から伸びてくるのは、ダイナビクトリアだッ!


ひたすら走るテンモン。後続に追い上げを許さない。




ニシノチェニルが一気に上がってきた。

エイティトウショウ、シャッフィー、サクラスマイルも伸びてくるッ!



だが、2着争い。



テンモンは2馬身半の差をつけ、栄光へと突き進んだ。



1着テンモン

2着ニシノチェニル

3着ダイナビクトリア

4着エイティトウショウ

5着シャッフィー



(つづく)