15番人気、ホースメンテスコが不良馬場を制した桜花賞。

オークスめざして、桜花賞有力馬は雪辱を期した。



オークストライアル・4歳牝馬特別を勝ったのは、桜花賞3番人気シルクスキー。

3歳時、4戦3勝2着1回。4歳となってトライアル15着、桜花賞15着。情けなさをバネにトライアルをもぎ取った。

だが、骨折。戦線離脱。



桜花賞2番人気アグネスレディー。苦手な道悪馬場に泣いた6着。

オークストライアル、やや重馬場でも踏ん張って、踏ん張って2着した。

良馬場なら・・・、燃えに燃えた。妻に先立たれた馬主、その娘たちとの絆の『アグネス』の冠名。

娘たちの笑顔が見たい。



1番人気で2着に敗れ去った桜花賞。短距離系シルバーシャーク産駒のシーバードパークには、ぜひ獲っておきたかった一戦。

2400m、長いことはわかっている。それでも、挑戦するしかないシーバードパーク。

母父シーバードの底力に、一縷の望みを持って。


フランスで生まれたシーバードは父も無名なら母も無名。母シカラードはシーバードが活躍する前に食肉にされた。そんなことも知らずシーバードは走りに走って8戦7勝、エプソムダービー、凱旋門賞を制した。


そのシーバードの魂を受け継ぐシーバードパーク。



桜花賞トライアル2着も桜花賞出走叶わなかったホクセーミドリ。

父ヴェンチア、彼女も短距離系。母父にはシーバードの母父でもある大種牡馬シカンブルをもつ。



オークストライアル1番人気、4着、スパートリドン。


桜花賞3着、マーブルマッハ。


『桜花賞馬』、唯一の称号を持ちながらフロック視されていたホースメンテスコ。

なんとしてでも・・・桜花賞馬の意地と誇り、ホースメンテスコは前を向いた。



1着、2着、2着、2着、2着、2着、10着、ナカミサファイア。

いつも真剣に走る馬だった。

勝てない、勝てない、勝てない、でも、負けない、負けない、負けない、負けない馬だった。

どんな相手でも、どんな場所でも、負けない心。2着に押し上げた。

無念さは残る。それが、彼女を強くした。


鞍上・中島啓介。その闘魂を注入した。




5月20日、オークス。

1.マーブルマッハ
2.マリージョーイ
3.チェッカーグレイス
4.ホクセーミドリ
5.スピードソロン
6.イクエホマレ
7.シャダイプリンセス
8.シーバードパーク
9.テンパーソロン
10.フジノスカーレット
11.フジマドンナ
12.クインパシフィック
13.ホースメンテスコ
14.メジロポルシェ
15.アグネスレディー
16.カミノカオル
17.カミノローラ
18.アイノデバイン
19.メイワマテルダ
20.スパートリドン
21.メイジシルバー
22.ナカミサファイア
23.スイートサンクルー
24.スズピオーネ


1番人気アグネスレディー、2番人気シーバードパーク、3番人気ホクセーミドリ。

4番人気スピードソロン、5番人気スパートリドン。



横一線のきれいなスタート、24頭。

内から白い帽子が3頭、前に行った。その先頭を切るのは2番枠マリージョーイ。

鞍上に福永洋一は、ない。山内研二。


ホースメンテスコが4番手。

マークするようにシーバードパーク、ホクセーミドリ。


前を睨んでアグネスレディー。鞍上は、関西の若き担い手、6年目の河内洋。



外枠20番、スパートリドンは後方にいた。同じく外22番枠ナカミサファイアも後方。



淡々と進むレース、動いたのは向う正面。

ホースメンテスコが先頭に立った。


長い距離。ここから逃げ込みを図ろうとするホースメンテスコ。


3コーナー、ホースメンテスコの逃げ切りを許すかッ!


ホクセーミドリが動いた。クインパシフィックが、アフネスレディーが。


苦しいホースメンテスコ。

ついて行けない、シーバードパークも、もがいていた。



直線、内外に大きくわかれて叩き合い。

壮絶なパノラマ。



馬群の中、まん真ん中から抜け出てきたのはアグネスレディーだった。

河内洋が遮二無二ムチを振った。


内から追ってきたのはホクセーミドリ。鞍上はビンゴガルーで皐月賞を制した小島太。

ノッテる小島太の最内抜け出し。


外から矢のようにすっ飛んできた馬がいた。



11番人気、後方待機、誰もが存在を忘れていたナカミサファイアだッ!


負けない馬ナカミサファイア。

中島啓介の渾身のムチに応えて、2頭にグングン迫った。


ホクセーミドリをとらえ、アグネスレディーに襲いかかろうとした。



だが、負けてはいけないアグネスレディー。

笑顔のために、『アグネス』に関わるみんなの笑顔のために、私は負けられない。



最後の力で迫るナカミサファイアを突き放した。



1着アグネスレディー

2着ナカミサファイア

3着ホクセーミドリ

4着スパートリドン

5着クインパシフィック




オークス馬となったアグネスレディー。

『アグネス』初のクラシック制覇。



のちにアグネスフローラを産み、そのアグネスフローラがアグネスフライト、アグネスタキオンを産むこととなる。



『アグネス』、栄光の歴史の1ページが開いた。


(つづく)