幻の桜花賞馬イットーの休養は長引く。眠ったままの王女。


まるでシンデレラのように桜花賞の女王に輝いたタカエノカオリは、花とともに散り引退。


桜花賞に輪をかけて混戦となったオークス。



桜花賞2着サクライワイが、かろうじて人気を保ったが、父がスプリンターを多く輩出したマタドア。2400mの距離に大きな不安を感じさせていた。


トライアルの4歳牝馬特別を勝ったキャッシュボアは回避。1番人気4着だったスイートゲランが押し出されるように人気を得た。



3月まではまだ1勝馬だったトウコウエルザ。福島県・今泉牧場、サラブレッドの本場・北海道とは程遠い地に生まれた。ごく平凡に思えた馬。

タケフブキ、ナスノチグサでオークスを連続勝利していた嶋田功が見初めた。東京・仲住達弥調教師に直訴して、その手綱を取った。最下級条件戦を3着、1着で混戦オークスに名乗りを挙げた。


身の程知らず、ともいえる馬が、俄然、注目された。


嶋田功が3年連続オークスを狙う馬。父はパーソロン。カネヒムロ、タケフブキ、ナスノチグサに続いて4年連続の偉業なるか? 話題は満載だった。




5月19日、オークス。


1.ミトモオー
2.ミスストー
3.シャダイシュバリエ
4.メジロトヤマ    競走中止(鞍変位)
5.サクライワイ
6.エビスオール
7.シャダイブルース
8.メジロフクシマ
9.ラッキーオイチ
10.ユウダンサーズ
11.タイロック
12.クリシスコ
13.メグロガッサン
14.トウコウエルザ
15.スピードシンザン
16.チウオーキャッスル
17.ハナミズキ
18.ニッソウセダン
19.スイートゲラン
20.アイテイシロー
21.トクドーチ
22.カネアケビ
23.マイシャイン
24.ベルラッド
25.ニットウヒスイ
26.ハーバーウイン


前日発売では、なんとトウコウエルザが1番人気。結局は9番人気に落ち着いたトウコウエルザだったが、ファンの迷走ぶりを物語る。

1番人気サクライワイ、2番人気スイートゲラン、3番人気クリシスコ。

4番人気タイロック、5番人気ミスストー。


人気関係なしのサバイバルレースが始まった。



一斉にスタートを切った26頭。

ユウダンサーズ6番人気が行った。メジロトヤマ23番人気、シャダイブルース14番人気。

続々と1コーナーをめざす。立ち遅れてはならじと、前に突き進む集団。


サクライワイ1番人気は内8番手あたりにつけた。外にはスイートゲラン2番人気。アイテイシロー8番人気、クリシスコ3番人気、カネアケビ19番人気。


トウコウエルザ9番人気は後方馬群の中。シンザンの仔スピードシンザン15番人気、メジロフクシマ11番人気。



向う正面。2番手を走るメジロトヤマがズルズルッと外を下がって行った。鞍上・横山富雄は立ち上がっている。鞍ズレだ。


流れが変わった。ユウダンサーズを追ってカネアケビが2番手に。スイートゲラン、アイテイシロー、クリシスコが行った。


3コーナー、加賀武見が勝負を懸けたカネアケビ、先頭に立った。

ラッキーオイチ10番人気が外から一気に上がる。

スイートゲラン、クリシスコ、アイテイシロー。



有力馬が前へ前へ、上がって行くさなか、サクライワイは内で押し潰されたかのように下がって行く。やはり、距離が長いのか? 精彩がない。



直線、逃げるカネアケビ。

追ってラッキーオイチ、アイテイシロー、スイートゲラン。ズラリと横に広がる。



大外からメジロフクシマ。坂を駆け上がって先頭に立った。

ガラリと馬の流れが変わった。

前にいる馬たちの間隙を突いて、後方待機馬が雪崩を切って押し寄せた。



馬場の3分どころから、一気に突き抜けたスピードシンザン。



外から迫ったのは、


嶋田功が渾身のムチを振うトウコウエルザだッ!



残り50m。


入れ替わり入れ替わり、サバイバル。



最後に先頭に立ったスピードシンザン。


シンザンの仔の野望。



打ち砕いたトウコウエルザ。


嶋田功が見抜いた勝負根性。



エルザの闘魂が、勝った。


クビ差、差し切った。



1着トウコウエルザ

2着スピードシンザン

3着メジロフクシマ

4着アイテイシロー

5着ミトモオー



嶋田功オークス3連覇、パーソロン産駒オークス4連覇。


トウコウエルザ、煌めき輝いた福島の星、根性娘。



(つづく)