僕の中に入れた悪魔女。

洗脳槽で浸み込まされた悪魔の素、吐き出せ!


天使の天さんが言った。

「あっちゃんを救えるんは、あんさんだけや!」


天さん、僕は救う。


体全体を突き抜ける悪寒。

う、うぉぉーっ、体中に電流が走るような震え、痛い。苦しい。

涙目。

覚悟以上の辛さ。

ううーっ、転げまわる。

「天さーん、なんとかしてぇーっ、痛いよー、苦しいよぉーっ!」

情けね、僕。


廊下ではバタバタ、走る足音。悪魔たち、追手。

僕、それどころじゃない。

苦しい、痛い、苦しい、耐えてるんじゃない!

耐えられないけど、終わらないだけ!

ただ、ただ、ただ、終わってくれぇーっ、願うだけ。



ウーッ、ゲボゲボゲボッ。僕の口から出た。濃い緑色のドロドロ。

ゲボゲボゲボッ、ゲボゲボゲボッ、吐いた、吐いた。これまた、苦しい。

胃が引きちぎられそう。こめかみの血管、切れそう。


ハァーッ、ハァーッ、出した、出した、緑のドロドロ。

これが悪魔女を洗脳しようとしてた悪魔の素か。


幾分、気分はよくなった。でも、まだある痛み、苦しみ。

全部は出し切っていないのか。

僕の中の悪魔女、まだ目覚めていない。


「おい、警備室からK13のカギがなくなっていた。ここにいるゾ、きっと。予備キーだ。いまから開ける。付いて来い!」

やばい、悪魔たちが入って来る。

でも、動けない僕。僕の中の目覚めない悪魔女は重いし、震え、痛み、まだある。

どうせ逃げ切れない。


でも、でもでも、僕は転がりながらドアの横の壁に。

開けたドアの陰になって、ここが盲点になる。名案だ。


ガチャッ、ギリッ、ゴトゴトゴトッ。

アレッ? 忘れてた。ここは引き戸だった。万事休す。


ドタドタドタッ。入ってきた3人の悪魔。

「おまえ! タンクの上を見ろ。おまえ、タンクの裏を探せ!」


ラッキー! こっち振り返るな。僕は逃げる。

四つん這いになって、僕はこっそり部屋から出た。

廊下には誰もいない。


僕は懸命に逃げた。

まだ立ち上がれない。

四つん這いでどこまで逃げられるか?


逃げるしかない。

目覚めない悪魔女、まだ、すべてを吐き出しきってない。

せめて、すべてを出すまでは、悪魔の洗脳を除去するまでは、


僕は捕まるわけにはいかない!


(つづく)