サクライワイ、キョウエイグリーン、ニシノライデン、ニシノフラワーなど数々の名馬を輩出した西山牧場。

1995年4月26日に誕生した芦毛馬がセイウンスカイだった。

父シェリフズスター、母シスターミル。母の父ミルジョージ。


牧場の成績不振から、少数精鋭の転換期にあった西山牧場。自家繋養の種牡馬も売却され、繁殖牝馬もほとんどが売却された。100頭近い仔馬たちも売却対象となった中で、3頭だけが残された。

そのうちの1頭がセイウンスカイだったが、さほど期待されたわけでもなく、当初入厩受け入れ先としていた栗東の厩舎からは断られ、最終的に、新たに厩舎を開業することとなった保田一隆厩舎に落ち着いた。


デビューは明け4歳(現表記3歳)となってからで、1月中山の新馬戦1600m。

血統的にも見るべきものもなく5番人気と低評価だった。

スタートこそ1番人気のゲイリーアイビスにハナを譲ったものの、すぐにハナを奪い、直線は独壇場だった。2着マイネキャロルに6馬身差。圧勝。


これは、走る。という思いを陣営に与え、本気にさせたのが次走のジュニアカップだった。

評判馬メガヒットを相手に2000mを逃げ切り、5馬身の差をつけた。


皐月賞前の弥生賞でスペシャルウイーク、キングヘイローと初対決。

東スポ杯勝ちの超良血キングヘイローが1番人気。

きさらぎ賞勝ちスペシャルウイークが2番人気。

2戦圧勝劇を演じたセイウンスカイではあったが『良血』というブランドの前には仕方なく、3番人気であった。


意地の逃げセイウンスカイではあったが、直線、スペシャルウイークに差され半馬身差2着。3着キングヘイローには4馬身の差をつけた。



皐月賞、クラシック第1弾。

1番人気スペシャルウイーク1.8倍。2番人気セイウンスカイ5.4倍。3番人気キングヘイロー6.8倍。

セイウンスカイは鞍上に横山典弘を迎えた。『勝つ』、陣営の意欲の表れか?

断然人気のスペシャルウイーク。世間の目には豪快に差し切るスペシャルウイークの姿が映っていただろう。

だが、ゲートを待つセイウンスカイの前に、思わぬ味方が現れた。

皐月賞のこの日、芝擁護のために設けられた仮柵が外された。内3頭分グリーンベルトが出現したのだ。

3番枠セイウンスカイ、12番枠キングヘイロー、そして、大外18番枠スペシャルウイーク。


先頭こそコウエイテンカイチの玉砕逃げに譲ったが、2番手を行くセイウンスカイ。4番手、キングヘイロー。15番手を行くスペシャルウイーク。

グリーンベルトを外れて冒険するものはいない。隊列は決まった。まったく動かぬ隊列、静のままに4コーナーを迎える。


たまらぬ! 早めに動に切り替えて上がっていくのは武豊・スペシャルウイークだ。

グリーンベルトを外れ、大外から追い上げる!


直線、抜け出したセイウンスカイとキングヘイロー。グリーンベルト内でしのぎを削る。

半馬身、キングヘイローを抑え込んだセイウンスカイ。

スペシャルウイークはキングヘイローにも1馬身届かずの3着。


「実力負けじゃない、馬場に負けた」と言い放った武豊。


こだわったのは武豊じゃなく、横山典弘かもしれない。

実力で勝負。差し、追い込みの得意な横山典弘がセイウンスカイの逃げにこだわった。

正々堂々、逃げて勝つ!



ダービー。クラシック第2弾。

今度はセイウンスカイに思わぬ難敵。キングヘイロー鞍上・福永祐一が逃げの手に出た。

競り合い、競りつぶしたが、直線、セイウンスカイにも余力はなかった。

2着ボールドエンペラーに5馬身の差をつけてスペシャルウイーク快勝。

セイウンスカイ4着。キングヘイロー14着。



秋、菊花賞。クラシック第3弾。

トライアル京都新聞杯を勝って、当然のごとく1番人気はスペシャルウイーク。

京都大賞典で古馬G1馬メジロブライト切って捨てたセイウンスカイが2番人気。

大きく離れて3番人気は京都新聞杯2着キングヘイロー。


ハナを切ったのはセイウンスカイだった。前半1000mを59秒6というハイペース。

もう、誰も邪魔をされないペースでセイウンスカイは逃げた。


暴走? 1959年、ハククラマ以来いない菊花賞の逃げ切り勝ち。

なのに、猛スピードでセイウンスカイは逃げ切ろういうのか?


鞍上・横山には勝算があった。

京都大賞典で試していたのだ。

最初をハイペース、途中ペースを落とし引き付け、最後にもう一度、エンジン全開。

古馬メジロブライトを封じた自信。


期待されなくとも、評価を覆して圧勝を繰り返し、のし上がってきたセイウンスカイの走りの執念。

感じ取った横山典弘は、スカイなら成し遂げる。

全幅の信頼をもって逃げ作戦に出た。


中間1000mを64秒3。見事にペースダウン。馬群を引き付けた。

誰も気づいていない。セイウンスカイの逃げの神髄を。


残る1000m、またもペースアップ、引き離しにかかった。

4コーナーを回って、直線、後続が差を詰め始めるが、詰まらない。


スペシャルウイークも、キングヘイローも2着争いが精一杯。

2着スペシャルウイーク、クビ3着エモシオン、アタマ4着メジロランバート、ハナ5着キングヘイロー。

3馬身半の差をつけてセイウンスカイはゴールしていた。

ラスト1000m、59秒3。上り3ハロン35秒1。3000m、3分3秒2。

2006年、ソングオブウインドが更新するまで、世界レコードだった。



セイウンスカイ、まさに成り上がりの芦毛伝説。

4歳クラシックで燃え尽きたか。

その後、6戦2勝するが、屈腱炎にも悩まされ、その神髄の逃げは2度と見せぬままターフを去った。



種牡馬として過ごすも、さしたる活躍馬は出ていない。

真っ白になったその馬体。


種牡馬として、決して燃え尽きてはいまい。