やっと開いた。『K13』の重い扉。

ここに悪魔女、あっちゃんがいる。

完全な悪魔にされる。洗脳槽に漬けられているはずだ。


絶対に助ける!


部屋は倉庫のように薄暗く、だだっ広かった。部屋の真ん中に円筒形の金属物、上部につながる階段。

僕は駆け上がった。

中は薄黒緑、なんとも言いようのない色の液体が詰まっていた。これだ!

目を凝らした。かすかに物体らしきものが、確認するまもなく、僕は飛び込んだ。


「ウゲッ」

飲み込んだ。

吐きそう。

言ってる場合じゃない。


あっちゃんは?

いた! 底近く、丸くうずくまっている。あっちゃんだ! 見つけた!

また、涙が…、液体の圧力で出ない。

瞳は覆う。自然の目薬だ。しっかりと目を開けて、彼女をつかまえた。


力なく漂う彼女の顎に手を回し、僕たちは浮上した。

どこから這い上がる?

後先考えず飛び込んだが、水面から円筒のてっぺんまで2mはあった。


ぐるり見渡した。


あった! 小さな幅20㎝程の鉄製の梯子が付いてる。

梯子までたどり着いた僕は、彼女を肩に担いだ。

重い。でも、重くない。

「助けられるんは、あんさんだけやで!」

天さんの言葉。自らを犠牲にして僕を悪魔たちから守ってくれた、天さんの心。

無にはしない。


それに、それに、悪魔女は僕の一番大切なもの。

これぐらい、重くはないっ!

「ぬぅぉぉぉぉぉぉぉおーっ!」


僕は、這い上がった。彼女を連れて。

洗脳槽から脱出。


ぐったりした彼女を座らせ、肩を揺さぶるが、反応は、ない。

目は虚ろに半開き。

急がなきゃ、天さん言ってた、僕の中で悪魔女を洗浄してやらなきゃ。


僕、悪魔女を包み込むように、きつく抱きしめた。

想いはひとつ。



愛してるよ。



じわーっと、わかる。彼女が僕の中に入ってくる。

つれて、襲ってくる苦しさ。


彼女がすべて僕の中に入った。

体中に痛みが走る。うーっ、頭が、割れそうだ!

胃が、腸が、引きちぎられそう。心臓は動悸の強さに破裂しそうに痛い。

この苦しみ。彼女を洗浄しているんだ。


吐いちまえ、すべての毒を、僕の中に吐いていいんだよ。

君は悪魔なんかじゃない。天使になるんだ。


吐け! 吐けーっ! 吐きつくせ!

僕は耐える、君のためなら。

(つづく)