悪魔女、悪魔界の追手から逃げる身。

僕と二人、高知のやくざ親分のもとにかくまわれの身。

親分さん、おかみさんの人情に守られて、悪魔女、119歳。

見た目は20歳。生まれて初めての人間の女の子らしい生活に感激。


愛おしい、そう思う僕。

悪魔女を、何があっても悪魔界に返しはしない。


追われていることを忘れさせるような、普通の生活、幸せな日々。

永遠に続いてくれないものか。


「おまっとうさん」

「うわーっ、あ」

きょうも一日、無事終わったことに誰に感謝するでもなく感謝の想いで寝ようとした僕の顔の前に、天使の天さん現れた。1ヵ月ぶり。

「天さーん、戻ってきたんだ! もう、来れないかと思ってた。天さん、無事だよ、僕たち。天さん、僕、がんばってるから。天さん、悪魔女も、うん、うん、がんばってるよ」

何を言ってるか、わからない僕。ただ、ただ、天さんのいなかった状況を言いたかった。幸せの日々の中で、天さんのいない不安が心の奥底で凝り固まっていた。

「何泣いてんのや。男やろ、しっかりせな。でも、長いこと待たしたな、ごめんやで。喜び、あっちゃんのこと、天使界で徹底調査してくれて、悪魔の要素は確かに持ってるけど、天使の要素が80%以上あるねんて。あっちゃんは。元々天使と悪魔は同族や、言うたやろ。天使に生まれるはずのあっちゃんが、なんかの間違いで悪魔に生まれてもうたらしい。天使界に戻して、悪魔の要素は除去できるということや」

「そしたら、悪魔君は天使になれる?」

「そういうこと。天使界に連れていって、あっちゃんは天使になれるんや」

「やったあーっ、よかった、よかったね、天さん。ありがとう、ありがとう」

「あっちゃんは?」

「いま、風呂入ってる。そうか、よかった。まだかな? 風呂長いな」


早く知らせてあげたい、僕。気もそぞろ。

「ただ、ええか。あっちゃんが天使界に行くということ。状況、ちゃんと把握してるか?」

「うん、何のこと?」

「あっちゃんが天使になるということは、あんさんとはお別れや」

「えっ? あっ」

「そう、天使界で完全に天使になるためのいろんな研修なんかがある。そのあと、天使としてどんな仕事につくかは、わからへん。いまの天使と悪魔が人間界に入り込む制度も、前々から問題視されていて、今後、廃止になる方向らしいわ。そらそやわな、一人の人間に付いて悪い事、ええ事させてポイント争うなんて、どう考えてもおかしいわ。そやから、おれら天使界に行ったら、もう、あんさんとは会われへん、思う」

「うち、そんなんイヤや! そんなんやったら、悪魔のままでええ!」

「あっちゃん!」

悪魔女いつの間にか、風呂から上がって来て聞いていた。


(つづく)