タカヒロ、男。三重県伊賀上野出身。

高校卒業後、神戸に住みつく。賞罰なし、一応。

喜怒哀楽はストレートに出す。というより、腹に納めておけない性格(たち)。

結構、飽き症。好奇心満載で、ベクトルがあちこちに方向転換してしまう、というほうが正しい、かも。



オレ? オレは、ヤツの肉体さ。いや、この地球の表現で言うと、ヤツの肉体に取りついたエイリアン。

遠い宇宙から地球の時間で100年かけてやって来た。

我々の星は消滅を目前にし、我々星人は肉体を捨て、宇宙船に乗って脱出。生命体を求めて宇宙に散った。その数、数千億。ここ、地球にたどり着いた同胞は一億。

オレはサンプルとして、タカヒロの肉体の中にいる。いま、100のオレたちの仲間がサンプルとして人間の肉体に入り込んでいる。サンプル、そう、我々は用心深い。地球の人間が我々の棲みかとして適切か、どうか? 見定め中。

肉体を捨てた我々は精神とパワーのみを有する究極の生命体。何も食さない。当然、何も排出することはない。我々に死はない。唯一、死があるとすれば、取りついた肉体の死とともに入り込んでいた場合のみ。肉体の死の直前にアラームが鳴り、我々は肉体を抜け出せばよいわけだ。



タカヒロはもちろん、オレの存在を知らない。

だが、タカヒロの肉体はオレの精神が動かしている。

ヤツが思うこと、考えることは、すべてオレにわかる。

だから、オレはヤツの思う通りに、ヤツの肉体を動かしてやっているだけさ。



試しに、オレがタカヒロを支配していることを見せてやろうか。



ほうら、いまタカヒロの前から大きな荷物を持ったばあさんがやってくる。

『おばあさん、荷物持ったろか?』(えっ、えっ、俺何言うてんねん)

「あ、ありがとね。でも、大丈夫やよ、これぐらい」

『そう、じゃあ、気いつけて』


どうだ。いま、しゃべったのはオレの精神。

タカヒロ本人はドギマギ。



この調子でタカヒロに入り込んで、もう5年。

サンプルもあと一か月で終わりだ。

いよいよ、我々全員の侵略が始まるゼ!



何、5年は長すぎる? 100年かけて地球に来たことを思えば、短いもんよ。

何、侵略って、もっと破壊的で凄惨なものだと思っていたかい。


フッ、フッ、現実は小説ほど派手なもんじゃない。

深く、静かに侵攻するもんさ。



じゃあ、つづくよ、次回。