刀剣を使った実験検証番組 | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

刀剣を使った実験検証番組

関西では放映されていなかったようですが、TBSの番組


前人未“答”マジ神問題集


にて、つい先日、日本刀を使用した実験検証が放映されたとネットで知りました。

早速件の番組を拝見しましたが、正直、「なんだかなぁ…」と思ってしまいました。



過去、様々な物を斬って来た僕ですが、その中には野球の硬球も含まれています。

以前からブログでも書いているように、ボールが刀に当れば簡単に切れるとお考えの方は、その安易な考えを改めて頂きたい。

今回の実験では、刀を垂直に立て、そこに硬球を当てるというものでしたが、通常、ボールは回転します。

その抵抗を受けないような設置の仕方では、当っただけで切れて当たり前。

実験でもなんでもありません。

過去、実銃の弾を「トリビアの泉」で両断した実験結果からも、硬球が切れることは容易に想像できるものです。

一方、縦回転のボールを真横に切るというのは非常に難しく、これまでの僕の動画を見て頂いても、切り口は真っ直ぐではなく、S字になっていたり、Rがついたものになっています。


硬球に比して柔らかい軟球であっても、回転がかかった状態ですと、時速100キロでは横に設置した日本刀に当っても、バントのようにはじき返されるだけで、軟球には傷もほぼつきません。

※フジテレビベストハウス1・2・3収録時に検証済み。ボールには傷一つつきませんでした。


僕の場合は、藤安将平刀匠とタッグを組み、強い刀を作り上げる目的のもと、これまで無謀なチャレンジも受けてきました。

全ては刀の損傷データを採取するためです。


しかし今回の番組はどうでしょう?
刀を傷める価値と意味はあったのでしょうか?

バラエティー番組なので純粋に楽しんで観れば良いのでしょうが、刀好きの僕には心にひっかかるものがありました。

どうせ同じ事をするのなら、現代刀匠の作品を使ってあげるなど、何かしら意味があって欲しい。
ましてや古い刀でこの実験を行っていたのなら、僕は本当に悲しい。


硬球を斬った後には、ボウリングの球を横向きに設置した刀にぶつけるという実験が行われました。

回転がかかったボールに日本刀が勝てるはずがありません。


ボウリング球は砕け、案の定刀は大きく曲がってしまいました。


加地さんと言う居合道五段の方が、刀の刃に触れ、

「曲がりましたが刃こぼれはありません。」

と言います。





これのどこが刃毀れがないと言えるのでしょう?
小刃はあちこちしっかりと毀れています。


僅か6ミリのBB弾ですら、将平の利刀に僅かな刃毀れを生じさせます。

高速回転に日本刀の刃先は負けるものです。

その刃先にかかる負担をいかに最小限で両断するか?がこれまで僕に求められた居合斬りの技術です。

加地氏の一言は、刀はなんでも切れると言った、誤まった都市伝説を認める発言になるのではないかと、画面を見ながら溜息をついた僕です。

僕が加地氏であったなら、以下のように解説していることでしょう。

「然るべく刃筋を立てなければ日本刀の裁断能力は発揮できません。ご覧のように縦回転に対し、横に据え置いた刀は、ボールの回転に耐えることはできたものの、ご覧の通り変形をきたし、刃先も僅かながら欠けています。使い方を間違えると流石の日本刀もご覧の通りなので、今回の実験の真似事はなさらないでください。」


テレビマスコミ関係各社様
意味のない検証番組での日本刀使用は、現役で活躍される現代刀工の協力のもと、現代刀を使用されてください。
古い刀は法律上でも『我が国の有形文化財』『美術品』として位置づけられています。
このことを忘れないで下さい。
無意味な実験検証は、無駄に文化財を破壊するだけであることを肝に銘じてください。