柄から抜けない槍を抜く… | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

柄から抜けない槍を抜く…

柄から抜けない槍を抜く…




先の記事でも記述しましたが、木は枯れます。

枯れると縮みます。

縮むと柄から中心が抜けにくくなります。


槍はことさら抜けにくく、刀のように鐔を叩きながら抜く、柄に当て木をして叩いて抜く、と言ったことができません。

そこで殆どの場合、無知な人間の手によって、ケラ首を潰されてしまう事が多いです。


僕の店にちょこちょこ来られる御客様の場合など、柄から抜けないからと、諦めてしまい、非常に健全な状態で残っていた柄を切断してしまわれました。


皆さん!

諦めないで!(真矢みきさん口調)


餅は餅屋という言葉があるように、固く抜けない槍を、ケラ首に傷をつけずに上手に抜くことができる職人さんがおられます!!


実は数日前、錆身ながらも姿の良い平三角素槍をその職方に預けました。

刃長10センチ弱の小さな穂先で、元は3.6メートルはあったであろう、鍵付きの立派な拵に納まっています。
螺鈿は青色の良い貝が使用され、金具には九曜紋の金具があしらわれています。

間違いなく細川家ゆかりの名槍でしょう。

しかし、惜しいことに蕪巻きの下で切断されています。


幸い、ケラ首に損傷はありませんでしたが、無理に柄から抜こうとした形跡があり、口金には変形がみられ、それが非常に惜しまれます。

切断されている付近にある九曜紋金具が気になりました。

釘隠しのように鋲がうがかれています。

単に金具を固定するためのものと思われたこの金具が、実は螺旋式の控え目釘でした。


昨日、職方からLINEで

「槍が抜けました! 中心が二尺三寸五分もあります!」

と、写真付きで報告が来ました。




長い!

大身槍の中心ならまだしも、三寸強の短い槍にこの中心の長さ…

刀匠の好みによるものではなく、十中八九、流派の掟によって定められた中心寸法です。

中心をこれだけ長くすることで、どのように有利に働くのか、浅学の僕にはハッキリとは解りませんが、江戸時代、この形状の槍を用いる流派が存在したことは確かです。

名槍に違いないと目星をつけていた僕の勘は当り、非常に綺麗な状態の中心に、堂々たる銘が切られていました。




薩州住元貞作


江戸時代の貞享頃に活躍した薩摩の刀工で、三代正房の門人です。

そして興味深いことに、元貞の子である元直に、全く同形の槍が存在するのを知りました。

やはりとある槍術流派の掟に定められた寸法の槍なのでしょう。

細川藩政時代に庇護された槍術流派を調べれば、その流派に辿り着けるのでしょうが、生憎と資料を持ち合わせていないので、調べるのには時間がかかりそうです。

またそれも楽しみではありますが。




螺旋式の目釘と、九曜紋の金具。




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