無残に変形させられた十文字槍を蘇らせる… | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

無残に変形させられた十文字槍を蘇らせる…

無残に変形させられた十文字槍を蘇らせる…





木は時代が経過すると縮みます。

その関係で柄から抜けなくなってしまった刀剣類はたくさんあります。

刀の場合はゴムハンマーなどの道具を上手に使えば、比較的容易に柄から刀身を抜くことができますが、これが槍の場合ですと非常に困難。

抜けないのなら抜けないで、登録証に

「銘文不明(中心抜けず)」

とすれば良いものを、愚かな登録審査員は槍のケラ首にマイナスドライバーを当て、鎚で叩いて抜こうとします…

ケラ首部分は焼き入れされていないわけですから、柔らかく、ちょっとしたことでいとも容易く変形してしまいます。

過日、同業者(刀剣商)から槍三筋(槍の数え方は「筋」です)を買い受けました。

その中に、上記のようにマイナスドライバーによって無残に変形させられた十文字槍がありました。



ここまで著しく損傷させられると、正直言って購買意欲は激減します。

ケラ首の変形のみならず、疵も数箇所あるものですから、同業者にこの十文字槍は買えないとお断りしたところ、三筋纏めて買ってくれと懇願され…

僕が槍を収集していることを知って、わざわざ声をかけてくれたわけですし、それにこの十文字槍が僕に救いを求めているように思えてならず、他の刀剣商なら購入をはばかるであろうに、縁を感じた僕は三筋纏めて譲り受けることにしました。

なんとか救ってあげたい!

採算度外視で名匠、藤安将平師に相談し、ケラ首を直して頂きました。



以下、劇的! ビフォーアフターのナレーション風にお読み下さい。


なんということでしょう!

錆に覆われ、登録審査員によって無残に潰されたケラ首は、匠の手によって見事に蘇ったではありませんか。




鑢で削り、身を減らして整形したのではなく、なんと匠はマイナスドライバーによって食い込み、盛り上がった地鉄を、丁寧に、そして丹念に鏨で寄せ、元の状態に戻したのです。




と、言うことで、数奇な運命をたどったこの十文字槍は、僕の元にやってくることで、製作当時の姿を取り戻し、今、輝きをも取り戻そうとしています。




今の時代、疵がある十文字槍にこれほどまでに手を掛け、高額な研磨代までをも捻出する刀剣商はいないと思います。

こうしてこの槍を蘇らせることができたのは、将平刀匠の類稀なる高い技術があったのは勿論のことですが、何よりも、僕が営む『美術刀剣 刀心』をご利用下さる御客様がおられるからです。

僕は刀剣の売買や修理工作等で得た利幅を、我が国の貴重な文化財である刀剣の蘇生と保存保護に充てさせて頂いております。


他人から見れば、儲かりもしないことに金をつぎ込んで、なんて馬鹿な奴だと思われることであっても、僕のような馬鹿がいることで、鉄屑になってしまう刀剣を助けることができるわけですから、このスタンスは一生守り続けたいと思っています。

皆さんも、お手持ちの槍でケラ首に損傷がある品がございましたら、是非僕に御相談ください。

将平・将大両刀匠と一丸となり、蘇らせるお手伝いをさせて頂きます。










関西(大阪豊中・兵庫川西)で古流居合術を学ぶなら、『修心流居合術兵法 修心館』
http://www.shushinryu.com

居合刀・武用刀剣から価値ある美術刀剣まで、日本刀・刀剣・古武具に関することなら『美術刀剣 刀心』
http://nihontou.jp