床机 | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

床机

床机




床机(しょうぎ)、神社やお寺でご覧になったり、実際に座られた方もおられることでしょう。

これです。

時代劇や大河ドラマでは、甲冑に身を包んだ大将クラスの武将が、この床机に腰掛けている姿をよくみかけますよね。

この床机、向きが決まっていることを御存知でしょうか?

上写真では左側が前、右側が後ろになります。


ところが近年、武者行列を売りにする時代祭りにおいて、床机の向きを横にして座る姿が目立つようになりました。

そんな座り方もあるのかな?


ふと疑問に思ったものですから、ネットで調べてみました。

確かにあります。有名武将の床机坐像に横向きに座る姿が…


伊達輝宗
伊達輝宗

伊達政宗
伊達政宗

福島正則
福島正則1

福島正則
福島正則2

本多忠勝
本多忠勝

興長
松井興長

池田恒興
池田恒興

これらは正しい向きを無視した座り方です。



一方こちらは正しい向きで座した肖像画です。
武田信玄
武田信玄1

武田信玄
武田信玄2

加藤清正
加藤清正



例外?と思えるのはこれ
伊達成実
伊達成実

竹中重治
竹中重治

折りたたみできる床机ではなさそうに見えるので、これは正式な床机とは言えるのかどうか…



一説によると、正しい向きで座するのが「文人座り」であり、床机を横向きに座するのを「武人座り」と称すると言う説もあるそうです。

なんでも、正しい向きで座ると、腰がいついてしまい、咄嗟のときに遅れをとるからだとか…

某ブログ記事より転載
『横置きにしてしまうと腰が沈み込み咄嗟の挙動に障りがあるので、縦置きにせよとされているのです。』


が、僕はこの説に異を唱えます。
それは、こうして肖像画を見ていてあることに気づけるからです。

横前に座している武将像は、ネットで見る限り、安土桃山や江戸初期の武将が多い(限られる?)からです。


学生時代、人より目立ちたい、そんな思いから、ボンタンや短ランと言った変形学生服を身につけていました。

当時、カブキ者と言う一風変わった常識外れの姿格好を好む士がいたことを、皆さんは歴史の授業で習ったことがあるでしょう?

伊達政宗などその典型ではないでしょうか?


つまり、他人と異なることを好む武人が床机の横前座りをしていただけで、この座り方が正式な武人座りと言う訳ではなく、床机はやはり前後があるということです。

だからでしょうか、武田信玄などその当時からすれば一世代前の武将像や、伝統を重んじる士の坐像の床机は正しい向きなのだと推測するのです。

また、上記にあげた福島正則像に至っては、現存する数も少なく、それでいて同じいでたちに同じ構図であることから、現存する殆どの物が江戸時代に原本を元に模写されたものと考えるべきで、複写された正則像を基に「床机は横前」と考えるのはナンセンスと言えるでしょう。

伊達家に至っては、血族の武将像が悉く横前座りであることから、政宗あたりから横前座りを御家流とした感が否めません。


ちなみに正式な向きで座ると腰がいつくなどと言うのは現代人の発想であると断言できるでしょう。
何故なら正しい向きで正しく座れば、腰がいつくなんてことはないからです。


逆に横前に座す方が立ち上がる際には二挙動になり、隙が増えると言えます。

正しい向きで座すると、床机の上部が太腿に当たって邪魔になるので、嫌でも大股に座すことになります。
勘の良い人ならもうお解かりでしょうが、必然的に身体の軸は立ち、踵は臀部に近い位置に来ることから、すくっと立ち上がることができ、一挙動で動くことが可能になるのです。


僕が想像するに、かぶき者と呼ばれた士は、今で言うヤンキーが、隙だらけの大股歩きで肩で風を切って歩くのと同じく、隙だらけとわかっていて座ることで男気を見せていたのではないかと思うのです。


僕の説が正しいかどうかはその時代の人に聞かなければわからないことですが、ほぼ間違いではないように思います。


と言うことで、時代祭りで当たり前のように床机横座りする人、この際ですから正しい向きで座るようにしましょうよ。



ネットを見るに、間違った横座りを誰かに指摘されて、それを慌てて「昔の武将の坐像には横座りもあるじゃない。」と反論するブログやコメントを見かけますが、僕からすれば歴史を研究することもなく、付け焼刃の言い訳にしか見えません。


先人達の姿を時代祭りやテレビでしか見ることができない現代っ子達に、間違った作法や歴史観を与えるのは罪なことです。


最後に…
日本画の肖像画には約束事があると言うことも踏まえなければなりません。
身分が判る様に敢えて大袈裟に描くことがしばしば見られます。
それに、絵師はモデルを前に描いているわけではなく、多くが想像画ということが多いのです。武家作法を知らない絵師が描いた肖像画は、当然ながら間違った描き方になります。
例えば源平合戦の屏風などは、その時代から百年二百年と後に描かれているものが多いので、源平時代の鎧兜の着用法ではなく、絵師が描いた時代、その当時の着用法で描かれているということも忘れてはいけない事実です。
床机を本来の方向で描くと、上に紹介した武田信玄像のように、迫力に欠けたものになりますが、敢えて横前に描くことで、床机に腰掛けているのだとアピールした。もしくはする。といった画法があったのかもしれません。


今回の結論

床机はバッテンになっていないほうが正しい向き!!















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