斬り損じ時にかかる刀への負荷 | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

斬り損じ時にかかる刀への負荷

斬り損じ時にかかる刀への負荷




ブログ記事テーマを、居合にするか、刀剣にするか悩みましたが、刀の特性にかかわることと判断したので、テーマは刀剣としました。

以前このブログで某アイドルに試斬手ほどきをし、実際にアイドルに巻藁を切らせる企画をテレビ局からもちかけられ、それを断ったと公表したのを覚えているでしょうか。

断った理由は、テレビ局が刀を用意するのではなく、僕の愛刀(蔵刀)をアイドルに貸さないといけなかったからです。

その時の記事の一文を抜粋したのが以下の文章です。




ちなみにアイドルに試斬指導(刀はこちらで貸与)の仕事依頼をお断りした経緯があります。
友人にその話しをしたら、店の中にある刀で、使ってもいいものを貸してあげて、そのままファン相手にプレミア価格つけて商売すればいいじゃない。と言われました(笑
そういう金儲けの仕方もあったかと、惜しいことしたかなと思いもしましたが、お断りしたその仕事は他所の道場が引き受け、件のアイドルが力任せに振り下ろしたために、刀が大きく曲げられてしまった様子をテレビ放映で見た時には「断って正解だった。貸さなくて良かった。」と思いました。


この記事の全文にご興味ある方は以下URLを御参照下さい。
http://ameblo.jp/isaom/entry-11587158383.html




で、今回の記事では何を皆様にお伝えしたいのかと言いますと、斬り損じの際にどれだけ刀に負担がかかっているかということなのです。

振っている本人や周囲で見ている人には、一瞬のこと過ぎて刀がどれほどのダメージを受けているのか、せいぜい「バチン」と言う巻藁を叩きつけるような音でしかわからないものです。

そこで件のアイドルや引き受けた道場にご迷惑がかかわらないよう、モザイクをかける配慮をし、その衝撃の写真をご覧頂こうと思います。

あくまで刀にかかるダメージ説明のためであり、件のアイドルや道場に他意は一切ありませんのでお間違いなきようお願いします。


まず一枚目。

お名前は存じ上げませんが、この娘が力任せに刀を振り下ろし、一番酷い使い方をしていました。
悪口ではありませんよ。刀を握ったこともない素人の女の子が、いきなり仕事で試斬させられたのですから、できなくて当然のことです。

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刀身のすぐ下に、解りやすいように赤線を引きましたが、大きく湾曲しているのが見てとれますね。けして刀の反りのために湾曲して見えているのではありません。刃筋を通すことが出来ていないから刀に負担がかかって切り込んだ瞬間、刀が曲がってしまっているのです。


これほど負担を与えてしまうと、流石の日本刀も曲がったままの姿になってしまいます。

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刀の下に本来あるべき刀の姿を赤線で。曲がってしまった現状を刀の上に白線で書き込みました。
比べてみれば一目瞭然、刀が真ん中より上から曲がってしまっていますね。


続いては斬り損じる一連の動きを見てみましょう。
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気付かれましたか?
下から二番目の写真で一瞬大きく刀が湾曲していることに…


これも解りやすいように刀身の上に赤線を書き込んでみましょう。

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思わず『え゛っ!?』と声を出してしまいそうになりますね。
一体何度の角度まで曲がっているのでしょうか。
ここまで曲がると刀には金属疲労も起こりますし、姿自体が大きく曲がり、鞘にも入り辛い状態になったことでしょう。


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更に他の写真にも同様に赤線を引きましたが、どれも目を覆いたくなるような角度に刀が一瞬曲がっています。


この放送を見たときに、よく怪我人や死人が出なかったな…
と思わず声に出たほど僕は衝撃を受けました。

たまたま粘りがある刀だったから折れなかったものの、普通なら折れ飛んでしまっていてもおかしくないからです。

試斬稽古していて、ピュッと高い音で両断できず、バチンバチンと嫌な音がなっている方は今すぐ試斬稽古を中止してください。
あなただけではなく周囲の人が危険に晒されます。
取り返しのつかない事故を起こす前に、樋入りの模擬刀でどの角度で振っても、しっかりと樋音が出せるようにまずは素振りをしましょう。

試斬稽古は刀を曲げたり折ったりしながら身につけるものではありません。

事実僕は未だ一振も愛刀を壊したことがありません。断言します。


巻藁を斬らずとも居合や剣術は修業できます。

むしろ現代の居合や剣術、抜刀道の試斬主義傾向にある今様をなんとかしなければいけないと考えます。

やたらめったら巻藁を切る道場や個人が増えましたが、刀は骨を断つことができる強靭さを持つものの、骨を切る道具ではないのです。

この言葉の意味が理解できる人は、武術を理解されている方です。

刃筋を通す稽古が必要であることは理解しますが、しっかりと基礎を身につけ、しかるべき指導者の下で稽古しなければ、人命にかかわる事故につながります。

自分で刀を振って自分が死に、周囲に怪我を負わせることがなければOKというものでもありません。

自分で自分を死なせてしまう事故を起こしても、居合や抜刀術などの古武道修練者のみならず、刀剣を趣味とする人にも多大な迷惑をかけてしまうことになります。

心無い人のために法律が強化され、試斬稽古もできないようになったり、刀の所有に関しても厳しい法律になったらどうします?


この国の政治を御覧なさい。
秋葉原で諸刃のナイフで事件があれば、全ての諸刃の刃物に規制をかけるという論点がずれた法案しか出せない国家なのですよ。

僕は「踊る大捜査線」の青島刑事のようにこう叫びたい。



モノが事件を起こすんじゃない!
人が事件を起こすんだ!



ってね。

そして、もう一つ…


正宗だろうが村正だろうが、虎徹だろうが清麿だろうが、どのような名刀であっても一振一振手造りだけに、品質にはバラつきがあり、使い方によっては簡単に折れてしまいます。

ではどのような刀が強いのかと言えば、こればかりは実際に使ってみなければ解りません。いえ、巻藁や竹を斬った程度では強靭さなど完全に理解できるはずもなく、半ば刀との相性、使い方、運に左右されると言っても過言ではありません。



どうか試斬を嗜まれる皆様、今ひとつ刀の振り方、斬り方に慎重になり、刀に負担がかからない使い方をされてください。

刀に負担がかからない使い方=上達の近道 ですよ。


ちなみに昨日放送された番組「ビックリしちゃった新記録」ですが、早速中国の動画サイトにあがっていました。
ご興味ある方は検索の上、自己責任でご覧下さい。















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