九八式鉄鞘軍刀に見る底意地 | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

九八式鉄鞘軍刀に見る底意地

昨日の記事『九八式略式軍刀に見る日本の困窮』で紹介した、大東亜戦争突入による物資不足下での九八式略式軍刀(下写真参照)

$平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba-九八式略式軍刀拵
九八式略式軍刀末期末型

に相反し、今日紹介する九八式軍刀は、陸軍制式軍刀としての面影が色濃く残っている品です。

平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba-九八式軍刀(鉄鞘)
九八式軍刀

この軍刀はほぼ未使用と思われ、保存状態が頗る良く、当時の軍装を研究する上に於いて、絶好の資料と言えるでしょう。


刀身を鍛えたのは陸軍受命刀工の兼宗。

平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba-兼宗 昭和十八年十二月
兼宗刀身

受命刀工とは、早い話が陸軍お抱え刀工。
軍刀監査委員会による、切断、曲げ、打撃、試し斬り等の過酷な審査を合格した刀工が、受命刀工になれました。受命すると玉鋼と炭の配給を受ける事ができたと言われています。
陸海軍が受命刀工制度を設けたことで、優秀な刀匠が育成され、真面目な刀が鍛えられましたが、軍の厳しいノルマが仇となり、時折雑な出来の刀も見受けられます。

本刀の拵の鞘は、陸軍制定通りの鉄鞘で、刀身中心(なかご)の表裏には陸軍名古屋造兵工廠の検定印『名』が打刻されており、軍刀としての組み立て作業を名古屋工廠で行われたことを証しており、柄は朴木で作られ、鮫皮は本鮫ではなく、俗にベークライトと呼ばれる樹脂製の模擬鮫皮が使用されています。

九四式軍刀や九八式軍刀制定初期の物に比べると、刀身の出来や拵の質も落ちますが、太刀を模した威風堂々たる九八式軍刀の姿には、過酷な戦時下にあってもなお、武士道や日本刀に傾倒した軍国主義の底意地が窺い知れます。

鞘を保護するために装着される野戦用皮覆が主流の中、本刀には野戦用布覆が附属しています。
未使用と言える保存状態の良さなどから察するに、所有者は尉官クラスとは言え、最前線に赴くことがない、内地勤務の高級軍人であったため、鞘覆も布製で事足りたのではないでしょうか。
それとも、物資不足による影響で、牛革も略式軍刀の製造にまわされ、野戦用皮覆を作ることができなかったのでしょうか。

平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba-九八式軍刀(鉄鞘・野戦用布覆着装仕様)
野戦用布覆着装仕様

ご興味ある方は是非パソコン画面で詳細をご覧下さい。
http://nihontou.jp/choice03/toukenkobugu/katana/199/00.html
http://nihontou.jp/choice03/toukenkobugu/katana/199/00-2.html