刀剣購入の作法 ~獣医ドリトル編~
最近放送を楽しみにしているドラマに
「獣医ドリトル」
![$平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba-獣医ドリトル](https://stat.ameba.jp/user_images/20101217/14/isaom/43/73/j/t02200114_0450023410922786351.jpg?caw=800)
TBS獣医ドリトルオフィシャルサイトより転載
というものがあります。
小栗旬さん主演の獣医のドラマで、主人公は根は優しいのですが、言葉遣いは傲慢で顔は無愛想。
しかし、毎週彼が発する言葉には、非常に重みがあるのです。
今日は小栗旬さん演じる、そんな鳥取獣医師風に刀剣を所持する心構えや購入の仕方について語ってみたいと思います。
ドラマ主人公口調で書きますので、当然言葉遣いは傲慢になりますので予めご了承ください。
ガラガラ… お客様ご来店
鳥取「なんの用だ? ここは刀屋だ。ひやかしや買う気がないのなら他所へ行け。」
客「安くてよく斬れる刀を探しているのですが」
鳥取「安くてよく斬れる刀だと? ふんッ そんなものはない。」
客「品揃えの悪い店だな。帰るか。」
鳥取「あんた、刀のこと全然わかっていないようだな。」
客「どういうことですか?」
鳥取「安い刀でも名人が使えばそれなりの名刀然としたものになる。しかしヘタが使えば虎徹や清麿といった名刀ですら簡単に曲がるもんだ。あんたに刀を使いこなせるだけの技量があるのか?」
客「私は居合道場に通っているんだ。それなりの技術は持っている。放っておいてくれ。」
鳥取「名人でも時には刃こぼれや曲げてしまうことがある。初心者になればなおさらだ。刃毀れを直せばば当然刀は細くなる。曲がりに至っては、曲がり癖というものがついてしまう。何度も曲がりを直していれば、鉄の組織はそこだけ弱くなり、いずれそこから折れることもあるんだ。稽古中にそれが起きれば大惨事につながる。あんた、それをわかって言ってんのか?」
客「失礼な刀屋だ。これでも私は居合道を6年もやっている有段者だ。」
鳥取「ほぉ~ そりゃたいしたもんだな。連盟に所属して金さえ払えば毎年一段ずつ出世していく世界だ。あんた6年と言ったな。ふんッ。それじゃあんたは5段ってところか。」
客「そうだ。私は5段で、今や道場では指導員だ。」
鳥取「エスカレーター式に取った5段で指導員か。おめでたいヤツだな。こっちに来い。」
巻藁を刺した台の前に客と共に移動する鳥取
鳥取「この刀でそこにある巻藁を斬ってみろ。」
客「私はまだ試斬経験がないんだ。」
鳥取「おや? あんたさっき5段で指導員だと言ったよな? それなのにこれが斬れないのか? あんたがやっている居合がまともなもんなら、いつも形稽古してるように振ればいいだけのことだろ。」
客「わかった。斬ればいいんだな。斬れば。」
高々と刀を振りかぶる客
鳥取「もういい。」
客「どうしたんだ。斬れといったのはそっちじゃないか。」
鳥取「下手に扱われて売り物の刀が曲がったら困るんでね。」
客「失礼な奴だな。まだ私の実力も見ていないじゃないか。」
鳥取「あんたの構えを見ればおおよその見当がつく。あんたが刀を振れば巻藁は切れるかもしれない。しかし、まともに刃筋を通すことができない振りで対象物を裁断していく刀には、本来かかる必要がない過度の抵抗がかかり、極僅かに曲がったり、捻れてプロペラのようになってしまい、刀としては使い物にならなくなる。」
客「お、お前に居合の何がわかるというんだ。偉そうに。」
鳥取「わかるね。少なくともあんたよりはな。俺はこれまでにあんたのような居合道家をたくさんみてきた。当然失われていく刀もな。」
客「もういい。他所へ行く。」
出て行こうとする客
鳥取「手頃な値段でよく斬れる刀がないことはないがな。」
客「安くて斬れる刀があるのか? さっきはないと言ってたくせに。」
鳥取「うぶだしだから錆びてはいるが、ここに30万ほどの刀がある。好きなのを選べ。」
刀を選ぶ客
客「よし、決めた。これにする。で、支払いだが、少しは値引きできるんでしょう? 25万にならないかね?」
鳥取「値引きだと? ふんッ あんた心底刀のことわかってないな。それに俺は30万で売るとは一言も言っていない。売価は60万だ。」
客「さ、30万の刀を60万で売りつけるだと!? 噂どおりのとんだ悪徳刀剣店だな!!」
鳥取「ふんッ 刀屋はボランティアじゃない。ビジネスだ。あんた斬れる刀が欲しいと言ったな。年々刀の相場は下がっている。しかし職人への仕事の代価は変わってはいない。そこそこな工作をほどこしたとしても、拵だけでも安くて15万。よく斬れる状態にしようと思えば表裏の肉置きを整えた上研ぎの下地研磨が必要だ。そうなれば研ぎ代には20万はかかる。トータルすれば65万だ。それを60万でやってやると言ってるんだ。悪い話じゃないだろ。」
客「… しかし、私には30万しか予算が…」
鳥取「だから負けて値引きしろと言うのか? ふんッ おめでたい奴だな。いいか、刀は元々が勝負に使う武器なのに、あんたは戦う前から値引きという負けを選ぶんだな。」
客「…」
鳥取「わかったならとっとと30万置いてさっさと出て行け。残りは半年後だ。」
客「え?」
多島(井上真央)「良かったですね。先生はあなたに刀を売ってくださるそうですよ。半年後には新しい拵に上研磨ができあがりますから、残金を持って引取りに来てくださいね。」
客「ありがとうございます。武士道に憧れて居合を始めたものの、私は5段という肩書きに胡坐をかき、武士道はおろか、刀のことを何もわかっていませんでした… お恥ずかしい限りです。」
多島「あと… これは大きな声では言えないんですけど、お客さん、道場変えられたほうがいいですよ。本物の居合を極めたいのでしたら(笑」
そっとこのチラシを手渡す多島
手渡されたチラシに書かれた道場の名は…
『修心流居合術兵法 修心館』
「獣医ドリトル」
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TBS獣医ドリトルオフィシャルサイトより転載
というものがあります。
小栗旬さん主演の獣医のドラマで、主人公は根は優しいのですが、言葉遣いは傲慢で顔は無愛想。
しかし、毎週彼が発する言葉には、非常に重みがあるのです。
今日は小栗旬さん演じる、そんな鳥取獣医師風に刀剣を所持する心構えや購入の仕方について語ってみたいと思います。
ドラマ主人公口調で書きますので、当然言葉遣いは傲慢になりますので予めご了承ください。
ガラガラ… お客様ご来店
鳥取「なんの用だ? ここは刀屋だ。ひやかしや買う気がないのなら他所へ行け。」
客「安くてよく斬れる刀を探しているのですが」
鳥取「安くてよく斬れる刀だと? ふんッ そんなものはない。」
客「品揃えの悪い店だな。帰るか。」
鳥取「あんた、刀のこと全然わかっていないようだな。」
客「どういうことですか?」
鳥取「安い刀でも名人が使えばそれなりの名刀然としたものになる。しかしヘタが使えば虎徹や清麿といった名刀ですら簡単に曲がるもんだ。あんたに刀を使いこなせるだけの技量があるのか?」
客「私は居合道場に通っているんだ。それなりの技術は持っている。放っておいてくれ。」
鳥取「名人でも時には刃こぼれや曲げてしまうことがある。初心者になればなおさらだ。刃毀れを直せばば当然刀は細くなる。曲がりに至っては、曲がり癖というものがついてしまう。何度も曲がりを直していれば、鉄の組織はそこだけ弱くなり、いずれそこから折れることもあるんだ。稽古中にそれが起きれば大惨事につながる。あんた、それをわかって言ってんのか?」
客「失礼な刀屋だ。これでも私は居合道を6年もやっている有段者だ。」
鳥取「ほぉ~ そりゃたいしたもんだな。連盟に所属して金さえ払えば毎年一段ずつ出世していく世界だ。あんた6年と言ったな。ふんッ。それじゃあんたは5段ってところか。」
客「そうだ。私は5段で、今や道場では指導員だ。」
鳥取「エスカレーター式に取った5段で指導員か。おめでたいヤツだな。こっちに来い。」
巻藁を刺した台の前に客と共に移動する鳥取
鳥取「この刀でそこにある巻藁を斬ってみろ。」
客「私はまだ試斬経験がないんだ。」
鳥取「おや? あんたさっき5段で指導員だと言ったよな? それなのにこれが斬れないのか? あんたがやっている居合がまともなもんなら、いつも形稽古してるように振ればいいだけのことだろ。」
客「わかった。斬ればいいんだな。斬れば。」
高々と刀を振りかぶる客
鳥取「もういい。」
客「どうしたんだ。斬れといったのはそっちじゃないか。」
鳥取「下手に扱われて売り物の刀が曲がったら困るんでね。」
客「失礼な奴だな。まだ私の実力も見ていないじゃないか。」
鳥取「あんたの構えを見ればおおよその見当がつく。あんたが刀を振れば巻藁は切れるかもしれない。しかし、まともに刃筋を通すことができない振りで対象物を裁断していく刀には、本来かかる必要がない過度の抵抗がかかり、極僅かに曲がったり、捻れてプロペラのようになってしまい、刀としては使い物にならなくなる。」
客「お、お前に居合の何がわかるというんだ。偉そうに。」
鳥取「わかるね。少なくともあんたよりはな。俺はこれまでにあんたのような居合道家をたくさんみてきた。当然失われていく刀もな。」
客「もういい。他所へ行く。」
出て行こうとする客
鳥取「手頃な値段でよく斬れる刀がないことはないがな。」
客「安くて斬れる刀があるのか? さっきはないと言ってたくせに。」
鳥取「うぶだしだから錆びてはいるが、ここに30万ほどの刀がある。好きなのを選べ。」
刀を選ぶ客
客「よし、決めた。これにする。で、支払いだが、少しは値引きできるんでしょう? 25万にならないかね?」
鳥取「値引きだと? ふんッ あんた心底刀のことわかってないな。それに俺は30万で売るとは一言も言っていない。売価は60万だ。」
客「さ、30万の刀を60万で売りつけるだと!? 噂どおりのとんだ悪徳刀剣店だな!!」
鳥取「ふんッ 刀屋はボランティアじゃない。ビジネスだ。あんた斬れる刀が欲しいと言ったな。年々刀の相場は下がっている。しかし職人への仕事の代価は変わってはいない。そこそこな工作をほどこしたとしても、拵だけでも安くて15万。よく斬れる状態にしようと思えば表裏の肉置きを整えた上研ぎの下地研磨が必要だ。そうなれば研ぎ代には20万はかかる。トータルすれば65万だ。それを60万でやってやると言ってるんだ。悪い話じゃないだろ。」
客「… しかし、私には30万しか予算が…」
鳥取「だから負けて値引きしろと言うのか? ふんッ おめでたい奴だな。いいか、刀は元々が勝負に使う武器なのに、あんたは戦う前から値引きという負けを選ぶんだな。」
客「…」
鳥取「わかったならとっとと30万置いてさっさと出て行け。残りは半年後だ。」
客「え?」
多島(井上真央)「良かったですね。先生はあなたに刀を売ってくださるそうですよ。半年後には新しい拵に上研磨ができあがりますから、残金を持って引取りに来てくださいね。」
客「ありがとうございます。武士道に憧れて居合を始めたものの、私は5段という肩書きに胡坐をかき、武士道はおろか、刀のことを何もわかっていませんでした… お恥ずかしい限りです。」
多島「あと… これは大きな声では言えないんですけど、お客さん、道場変えられたほうがいいですよ。本物の居合を極めたいのでしたら(笑」
そっとこのチラシを手渡す多島
手渡されたチラシに書かれた道場の名は…
『修心流居合術兵法 修心館』