居合考 ~斬るといふこと 4~ | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

居合考 ~斬るといふこと 4~

さて、居合考 ~斬るといふこと~ 続けます。



昨日の居合考では、

試斬稽古を禁じてしまったがために戦闘術として使える居合斬りまでをも途絶えさせてしまったと書きましたが、厳密に言えばこれも間違いです。

僕自身が辿り着いた結論として、斬稽古をせずとも、形稽古をしっかりと修行すれば、本物の居合斬りは習得できます。


ただし、これは非常に条件が限定されます。


形稽古のみで、実戦で使える本物の居合斬りを習得するには…

実際に本物の居合斬りができる居合術家から居合を学ぶこと。


いくら形居合の全国大会や世界大会で優勝した経歴をもつ居合家に学ぼうとも、その人自身が真の居合斬りを会得した人物ではない限り、その奥義を次の者に教え伝えることはできません。

当たり前のことですが、足し算と引き算しか知らない人に、掛け算、割り算を教わろうとしても不可能であることと同じです。


そして、昔の侍達が、居合を稽古する上で、頻繁に斬稽古をしていたかと言えば、実はそうでもないのです。


今の時代でこそ、「居合習ってます」と公言しても平気ですが、侍の時代には居合を稽古している、居合の嗜みがあるということを他人に知られることはタブーとされていました。

ですから、下準備や斬屑が生じる試し斬りでの居合稽古は、そうそうできたものではなかったのです。


この時代、斬ることに重点を置き、頻繁に稽古に励んで試刀術(刀の斬味を試すための試斬技術)の腕を磨いていたのは、首斬りや、死罪人の生体や、死体を使って、刀の斬味を評価することを生業としていた山田浅右衛門くらいです。


一時期、侍の間でも試し斬りが流行った時期もあったようですが、よほど鍛錬を積まなければ、刀を傷めず物を斬ることはできません。

僕の居合斬りが放送されると、必ずと言ってよいほど、

「昔はあんなことができる侍がたくさんいたんだろうな」

と言った記述を見かけますが、侍の時代ですら、既に斬ることができる腕のある人物は極僅かで、ましてや瞬時の居合斬りができる人物など、皆無に近かったのです。


そんな侍を風刺した小噺が落語にあります。

明日の居合考ではこの小噺を書き綴ってみたいと思います。




…つづく