質疑応答 ~居合は真剣を使うことになっているのですか?~ | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

質疑応答 ~居合は真剣を使うことになっているのですか?~

Q

居合やってる人の多くは形がメイン(斬るのがメインの流派・道場もありますが)なのに、なんで居合は原則的には真剣を使うことになっているのですか?




A

居合の稽古に真剣を使ってらっしゃる方は確かにたくさん存在します。また、各連盟で、「○段以上は真剣を用いること」といった規定を設けられているのが実情です。


しかしながら、これは全くもっておかしなことで、江戸の時代を生きた侍達から見れば、滑稽極まりない、また、武士としてあるまじき行為なのです。


模擬刀がなかった昔、居合を嗜む侍達は、当然のように真剣を用いていました。

しかし、それは現在、居合の修練を嗜む方々が使用しているような真剣ではありません。

刃を潰して斬れなくした、俗に『刃引き』と呼ばれる刀だったのです。


医学技術も今のように発達していませんし、稽古で指でも落とそうものなら、二度と刀は握れなくなってしまいます。


これは至極当然のことですが、皆さんが数多の侍を抱える大名だった場合、いざ戦という時に、指がなくて刀を使えないような侍を兵力として必要としますか?


当然答えは

NO

ですよね。


この考えと同じことは、映画『極道の妻たち』の中でも、責任をとって小指をつめようとする幹部に、岩下志麻さんが止めに入るセリフに表現されています。


「戦争に使えん兵隊はいらんでェ」


現在のように刃のついた真剣を用いるように奨励したのは、体裁ばかりを気にした一部の人間で、また、旧軍の影響ともいえます。



つまり、まともな侍でもなかった人間が、明治以降、人前で居合の形を披露する際に、


「失敗すれば大怪我をまぬがれないにもかかわらず、刃がついた真剣使って居合演武をしています。すごいでしょう?」


みたいな感じでやっていたものが、富国強兵という時世の背景も手伝って、刃がついた真剣で居合をするのが高段者の嗜みのように広まってしまっただけのことです。


ですから、僕が創設した修心流では、試斬以外の形稽古で真剣を使用することは、堅く禁じています。

僕自身も形稽古では模擬刀しか使いません。

刃がついた真剣で居合をする時は、本当に命をかけあった戦いの場だけでいいのです。


尚、発声に関しても記述させていただくと、英信流の居合に声を発するものは、太刀打之位ぐらいでしかありませんが、これは二人一組で行う形なので、タイミングを合わせるために発しているのであり、全日本居合道連盟における制定形五本に関しては、声を出して気合を入れろと奨励した軍の要請に渋々従い、「エイッ」と声を出すようになったのです。



居合稽古には模擬刀を使い、怪我を恐れず、思う存分稽古するのが本来の姿です。

また、真剣を刃引きして使いたい場合は、刃切など、美術刀剣として価値の低い刀や、現代刀に限るもので、健全な時代物の名刀を刃引きして使うのは、馬鹿のすることです。