ヒトラー ~最期の12日間~ | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

ヒトラー ~最期の12日間~


例の「チャングムの誓い」を借りに行った際、この映画が目にとまりました。先ほど鑑賞し終わったところです。
ヒトラーやナチスと言えば戦争映画の悪役。これまで数多くの映画の中でユダヤ人の虐殺等、その悪行とも言うべき醜態ばかりを取り上げられてきましたが、この映画だけはドイツから見たヒトラーとナチス。実にセンセーショナルな作品です。
とりあえずユダヤ系の妨害なしによく完成することが出来たなとまずは感心しました。
案の定この映画、ユダヤ人には「ドイツは大量虐殺の歴史を美化している」と不評であったようですが、僕はこの映画で、冷酷と謳われるヒトラーと言う人物の人間味ある暖かい一面を見ることができ、驚きを感じています。

詳しくは映画を見て頂ければおわかりいただけますが、

「彼が厳しいのは総統の顔の時だけよ」

と、ヒトラー夫人が秘書に語るまさにその通りの人物。
食事係にも「ありがとう」と礼を述べ、身体をいたわってやる紳士的な人物で、理想実現のために設けた規律を厳守し、ヒトラー夫人の懇願にも耳を貸さず、身内にあたる中将(名前失念)に対して情け容赦なく銃殺に処すという、いわばドイツ第三帝国の理想のために自ら率先して規律を守り奮迅した人と言えます。

誤解があってはいけませんので、先に念を押しておきますが、僕はヒトラーの行った政策全てが正しいと言っているわけではありません。
悪の代名詞とも言うべきヒトラー像は戦勝国によって作られたイメージであり、別角度から彼を見ると違った歴史が見えてくるということを言いたいだけなのです。

それにしてもヒトラーはすごい人物だと思います。
高学歴でもなく、むしろ劣等生。第一次大戦では伍長どまりのたかだか一兵卒だった彼は、1920年「ドイツ労働者党」に入党し、翌1921年には党首に就任して党名を「国家社会主義労働者党(ナチス)」に改名、1934年には首相に就任し、1934年には大統領と首相を統合して総統に就任。歴史に名を残す人物となったのですから。

ここで注目したいのは彼のカリスマ性。今でこそ戦勝国やユダヤ民族の煽りでドイツという国自体がヒトラーとナチスを忘れ去りたい歴史としているが、当時のドイツ国民はみな熱狂的に彼を支持し、ドイツ第三帝国の理想を彼に託したのです。

とにかく悪のイメージが根強い彼ですが、この映画の中で見る彼のカリスマ性にはただただ脱帽。
第一次大戦で敗北し苦渋を強いられた歴史があるからこそ、彼と国民は一致団結したと言えるのかもしれません。

戦況いよいよ悪化し、ソ連兵がすぐ目前まで迫ってきても、ヒトラーをはじめとするドイツ兵は無条件降伏を拒み、最期の最期まで弾薬尽きるまで戦い続けて滅びの道を選ぶと意気込む。ヒトラー夫妻の自決後、

「もう忠誠を誓った相手はいないのだ。戦いを続けても無意味だ。降伏しよう。」

と勧めても兵士達は

「総統への忠誠は永遠不滅」

と、ソ連兵相手に戦う者、ヒトラーの後を追って自決する者が後を絶たなかった様子がこの映画には鮮明に描かれています。

決して正しいことだとは言えない行為ではありますが、別角度から見れば、ヒトラーが国を挙げてユダヤ人虐殺を行ったことも、非人道的であるとはいえ、我々が学んだ歴史とはまた何か違った意味や目的があってのことなのかもしれません。

これまで作られたこともなく、ましてや作ろうとされなかったドイツ側から見た戦争映画。一見の価値ありです。
総統ではないプライベート時のヒトラーという人物、そして彼と運命を共にした人々の滅び行く様は、まさに現代版「平家物語」と言えるでしょう。

「明日からは皆が私を呪うだろう…」

そう最期の言葉を残し、夫人と共に静かに自決するヒトラー…
我が子6人を道連れに家族全員で自決するヒトラー側近ゲッペルス一家… ゲッペルス夫人が優しくキスをしながら我が子に毒を盛る姿は、安徳帝入水と重なり涙流さずには居れません。