都市伝説を斬る
某ブログにまたとんでもない記述と写真が…
手持ちの刀(新々刀)で硬い木に思い切り斬り込んだところ、刃切をきたしてしまったというのです…
なぜそのような無謀なことを行ったのか、その理由は…
「黒田泰治氏が10代の頃、直径45センチほどの柿の木を一太刀で両断したという逸話を聞いて自分もいつかやってみたいと思っていました。結果は木に食い込んでこの有り様です。黒田氏のお腕前もさることながら、一体どんな御刀を使われたのかますます気になります。」
というものでした。
まさかこのような都市伝説を真に受けて実践される方がいるとは…
無謀な実験によって命を絶たれたその刀が可哀想でなりません。
いいですか皆さん。試斬には現代刀を使いましょう。古い刀は大切な文化財、歴史の生き証人であります。
今後このような都市伝説を実践する方が現れぬよう、私なりにこの都市伝説の真実がいかなるものであったのかを解いてみたいと思います。
一刀両断…
この言葉を耳にして、必ずしも刀で斬ると思ってはいけません。一刀両断とはものの例え、単なる四字熟語なのです。
つまり、刀で斬ろうが、包丁で切ろうが、鋏で切ろうが、全て一刀両断と表現することができます。
刀を使って直径45センチもの大木を一刀のもとに裁断することができるのであれば、鋸は必要ありませんし、鋸という道具も生まれていません。
youtubeで紹介された試斬動画を見てもわかるように、裁断するにあたっては、裁断するに用いる刃物の厚みが通るだけの開きが必要になります。
僕が手掛けた生卵斬りの動画では、卵の殻に粘りがないため、殻が細かく砕けることによって刀の通り道が確保されています。
リンゴですと所々に垂直方向にひび割れが確認できますが、これも刀の厚み分だけリンゴが押し広げられている証拠です。
有る程度柔軟性を持つか、脆い物であれば、刀の刃肉と平肉をもってして、無理にでも刀の通り道を作ること、確保することが可能ですが、面積の大きなものや、硬い物になると、刀が通る道を刀自身で作ることができません。
どういう状態になるのかと言えば、斧で大木に切り込んだ時のように、食い込んだまま止まってしまうわけです。
重量があり、刃肉や平肉がたっぷりとついた斧や鉞でさえそのような状態になるのに、日本刀のような細く薄い刃物が大木を裁断できるはずがありません。物理的に考えて絶対に無理です。
お手持ちの鋸をご覧ください。木材を切るにあたり、鋸自体の通り道が確保できるよう、鋸の刃は左右に開き、鋸の厚みより余計に軌道をとれるように設計されています。
このことからもわかるように、面積が広く、硬い物体に対しては、鋸のような形状のものでないと切ることができない、その刃物(鋸)の軌道を作れないわけです。
僕が推測するに、黒田某の逸話は、恐らく薪割りでの話だと思われます。
つまり、直径45センチの柿の大木ではなく、せいぜい30センチほどの幅に裁断された胴回り45センチほどの柿木の薪を、斧、または鉈を用い、いともたやすく一刀のもとに割っていたというものだと思われるのです。
この僕の仮説を見て、薪割りなんて簡単だろうと思う方がおられるかもしれませんが、胴回り45センチで、幅(高さ)30センチ前後の柿木となると、力任せに斧や鉈を振り下ろしたところで、そう簡単に一刀で割ることはできません。
黒田某は重心の置き方、身体の使い方が出来ていたので、若くしながらにして、いとも簡単にそれをこなすことができたという話が、人の間を伝うにつれ、話が誇張され、あたかも直径45センチの柿の大木を、日本刀でもってして一刀両断にしたと吹聴されるようになったのでしょう。
と、いうことで、他にも刀剣にまつわる都市伝説が多々あろうかと思いますが、事実を辿るとこういうものですから、決して聞いた話を鵜呑みにして実践し、大切な文化財である刀を折る・潰すといったことを起こさぬよう、くれぐれもご注意願います。
手持ちの刀(新々刀)で硬い木に思い切り斬り込んだところ、刃切をきたしてしまったというのです…
なぜそのような無謀なことを行ったのか、その理由は…
「黒田泰治氏が10代の頃、直径45センチほどの柿の木を一太刀で両断したという逸話を聞いて自分もいつかやってみたいと思っていました。結果は木に食い込んでこの有り様です。黒田氏のお腕前もさることながら、一体どんな御刀を使われたのかますます気になります。」
というものでした。
まさかこのような都市伝説を真に受けて実践される方がいるとは…
無謀な実験によって命を絶たれたその刀が可哀想でなりません。
いいですか皆さん。試斬には現代刀を使いましょう。古い刀は大切な文化財、歴史の生き証人であります。
今後このような都市伝説を実践する方が現れぬよう、私なりにこの都市伝説の真実がいかなるものであったのかを解いてみたいと思います。
一刀両断…
この言葉を耳にして、必ずしも刀で斬ると思ってはいけません。一刀両断とはものの例え、単なる四字熟語なのです。
つまり、刀で斬ろうが、包丁で切ろうが、鋏で切ろうが、全て一刀両断と表現することができます。
刀を使って直径45センチもの大木を一刀のもとに裁断することができるのであれば、鋸は必要ありませんし、鋸という道具も生まれていません。
youtubeで紹介された試斬動画を見てもわかるように、裁断するにあたっては、裁断するに用いる刃物の厚みが通るだけの開きが必要になります。
僕が手掛けた生卵斬りの動画では、卵の殻に粘りがないため、殻が細かく砕けることによって刀の通り道が確保されています。
リンゴですと所々に垂直方向にひび割れが確認できますが、これも刀の厚み分だけリンゴが押し広げられている証拠です。
有る程度柔軟性を持つか、脆い物であれば、刀の刃肉と平肉をもってして、無理にでも刀の通り道を作ること、確保することが可能ですが、面積の大きなものや、硬い物になると、刀が通る道を刀自身で作ることができません。
どういう状態になるのかと言えば、斧で大木に切り込んだ時のように、食い込んだまま止まってしまうわけです。
重量があり、刃肉や平肉がたっぷりとついた斧や鉞でさえそのような状態になるのに、日本刀のような細く薄い刃物が大木を裁断できるはずがありません。物理的に考えて絶対に無理です。
お手持ちの鋸をご覧ください。木材を切るにあたり、鋸自体の通り道が確保できるよう、鋸の刃は左右に開き、鋸の厚みより余計に軌道をとれるように設計されています。
このことからもわかるように、面積が広く、硬い物体に対しては、鋸のような形状のものでないと切ることができない、その刃物(鋸)の軌道を作れないわけです。
僕が推測するに、黒田某の逸話は、恐らく薪割りでの話だと思われます。
つまり、直径45センチの柿の大木ではなく、せいぜい30センチほどの幅に裁断された胴回り45センチほどの柿木の薪を、斧、または鉈を用い、いともたやすく一刀のもとに割っていたというものだと思われるのです。
この僕の仮説を見て、薪割りなんて簡単だろうと思う方がおられるかもしれませんが、胴回り45センチで、幅(高さ)30センチ前後の柿木となると、力任せに斧や鉈を振り下ろしたところで、そう簡単に一刀で割ることはできません。
黒田某は重心の置き方、身体の使い方が出来ていたので、若くしながらにして、いとも簡単にそれをこなすことができたという話が、人の間を伝うにつれ、話が誇張され、あたかも直径45センチの柿の大木を、日本刀でもってして一刀両断にしたと吹聴されるようになったのでしょう。
と、いうことで、他にも刀剣にまつわる都市伝説が多々あろうかと思いますが、事実を辿るとこういうものですから、決して聞いた話を鵜呑みにして実践し、大切な文化財である刀を折る・潰すといったことを起こさぬよう、くれぐれもご注意願います。