気持ちの良いお客様 | 平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba

気持ちの良いお客様

このようなことを書きますと、お高くとまってと思われるかもしれませんが、以下のような無作法極まりないお客様が大嫌いです。

特に居合をされている方や、中途半端な知識や作法しか持ち合わせない方に多いのが、スーパーやデパートで買い物をするかのように、無断でなんでもかんでも手にする姿。

しかもそう言う方に限って刀を横抜きする不心得者が多いのです。

もっとひどいものになりますと、許可なく店内で刀を振ってみたり、居合式の納刀をしでかす人も…

そういう居合家の方に限ってたいした腕もなく、鞘の鯉口を削ったりします。当然商品である刀剣は傷むわけですが、それに対して謝罪や反省の色などありません。

僕のお店ではお客様に対応するのが僕だけなので、電話がかかって来たときや宅配便が来た時など、暫くお客様をお待たせすることがあるのですが、その時に多いのが、無断であれこれ刀を引っ張り出してきては勝手に鞘を払って鑑賞する方… それまで感じの良いお客様だなと思っていても、その姿を見たとたんに嫌悪感を覚えます。

商売で刀剣を並べているとは言え、家電品やスーパーに並ぶ食材と同じ感覚でいては刀剣趣味者失格です。
店内の刀であれ、いわば他人様の蔵品、ましてや武士の魂である日本刀なのですから、許可なく触れるのはご法度中のご法度!
世が世なら斬り捨てられても文句を言えない行為だと言うことを自覚して頂きたいものです。

これらの悪い風習を黙認する刀屋や骨董屋が増え、客に遠慮して正しいマナーを教える店が減ったことも、この悪習が広まり当たり前となっている要因の一つです。
実に嘆かわしいことです。

時代のニーズに逆らった個人の主観と言われればそれまでですが、刀に関してはセルフサービスなどもってのほかだと思います。

口やかましいようですが、僕の店は屋号を『刀心』としていることからもおわかりいただけるかと思いますが、武士の魂と崇められた日本刀を取り扱う上で、昔の人達が心を込めて扱ってきたように、礼儀と真心をもって刀剣に向き合い、お客様の次なる愛刀探しのお手伝いに一役買うことができればと考えているわけです。

このブログを読まれている方、これから刀屋を訪ねてみようとお考えの方、是非以下の諸作法だけはしっかりと身につけられ、刀剣商や骨董商と仲良くお付き合いできるように心がけてください。
居合をされている方はなおのこと、流石居合を嗜まれるだけあると言われるように、以下の点に留意してください。


1.黙って店に入らず、「ちょっと見せてくださいね」とお店の方に声をかけましょう。

2.たとえどんなに小さな物であっても、じかに手で触れたり、なんでもかんでも手に取るのは避けましょう。購入を検討する上で手にとって鑑賞したい場合は、お店の人に声をかけ、お店の人から手渡してもらうようにしましょう。

3.御刀拝見の場合はお店の方に鞘をはらってもらいましょう。そして刀を前に雑談は禁物! 会話をするときは刀から顔を離して物静かに。

4.お邪魔させてもらった御礼と、今後の顔つなぎのためにも、刀剣油など安い小物を一つ買って帰りましょう。

と、長く薀蓄を傾けましたが、本日お越しになられた居合家はお二人とも大変気持ちの良い方で、こちらが恐縮してしまうほど礼法ができておられました。

本当に久しぶりに真の武人を見たと言った感じです。
お一人はまだ二十代前半くらいでしょうか。かなりお若い方でしたが、正座した足を崩されることなく、ハキハキとされていて、清清しく爽やかな好青年で、もうお一人は年配の方でしたが、物腰丁寧でとても紳士的。私と反りがあうものですから、ついつい談笑に花が咲き、長い時間お足を引きとめてしまいました。

今日は筋の良いお客様に出逢えて嬉しい日でした。