集英社新書プラスに寄稿
高市政権の誕生によって、いま日本政治はどこへ向かおうとしているのか。政治と権力の核心を追及し続けてきたノンフィクション作家・森功氏による注目の連載「自民党の研究」の第四回。衆院選大勝の熱狂の裏側で、自民党内では「55年体制」の終焉を見据えた危機感が静かに広がっている。石破「少数与党」政権時代への反動、中道保守の失速、そしてネット世論が攪乱する新たな政治潮流――。古川禎久幹事長代理は、自民党がもはや従来型の「国民政党」でいられなくなった現実を語り始めた。さらに山崎拓元自民党副総裁が、炭鉱、玄洋社、右翼、そして中曽根政治へと連なる自民党保守の源流を辿り直す。高市政権の背後で進む「戦後保守の変質」とは何か。自民党政治の「歴史的転換点」とは――。
数与党の反動が生んだ“高市旋風”
終わりの始まりという酷評があれば、意外によくやっていると庇う声もある。
「国論を二分する政策に果敢に挑む」
そうしきりに訴える高市早苗政権の発足から半年が経過し、賛否が真二つに分かれている。なぜここまで評価が割れるか、といえば、その要素はさまざまであろう。インターネット空間のSNS(ソーシャル・メディア・ネットワーク)が、新聞やテレビ、雑誌といったオールドメディアにとって代わり、1億総国民が誰でも自らの考えを発信できるようになった。高市人気がネット空間に支えられている側面は否めない。反面、そのSNSの意見は危うさを孕む。自民党に限らず、日本の政党政治そのものが、激しく遷りゆくそうした情勢の変化についていけなくなっていると感じる。
唐突な衆院の解散から2月の総選挙で大勝した結果、高市独裁の空気が自民党内に充満する裏では、政権の歪みを指摘する所属議員の批判や陰口が絶えない。党の選挙対策委員長代理や広報戦略局長、副幹事長、青年局長などを歴任し、高市政権でも幹事長代理を務める元法務大臣の古川禎久(60)は今の自民党をどう見るか。
「自民党は一昨年の衆議院選挙に続き昨年の参議院選挙でも大敗して1年半ぐらい前から少数与党に転落しました。少数与党として予算はもちろんのこと、法案一つ通すにしても野党の力を借りなければなりませんでした。すると野党は、協力する代わりにこれを呑め、あれを呑め、と条件を出してくる。それでいて財源はこっちで考えろと。
私自身政治改革特別委員会の筆頭理事でしたので、複雑な国会運営の現場からすると、ものすごく苦しい思いをしてきました。政治改革では政治資金にまつわる問題もあったし、あとになって定数削減の話も出てきた。国会ではそれぞれの委員会で与野党間の駆け引きをしなければならなりません。そんな苦しい状況で衆議院が大勝した。少数与党の苦しさを身に染みて感じる者としては、数はありがたいと率直にそう思います。選挙に勝ったんだから、ある種の勢いが党内に出てきたのは間違いありません」
古川は今度の総選挙大勝について一定の理解を示すが、もとよりそれで満足しているわけではない。(以下略)