生コン工場のマニュアル(社内規格及び手順書類)を今一度見直そうというシリーズです。
今回は、「配合変更修正基準」です。
「配合設計基準⑤」
「配合変更修正基準」は、
JISA5308の規定を満足する製品を
出荷し続けるための
配合を変更又は修正する基準になります。
JISQ1011では、
標準配合の変更及び修正の
各条件・その方法を規定する。
とあります。
配合の変更又は修正の条件としては、
次が考えられます。
- 標準配合の条件とは違う運搬条件
- 標準配合の条件とは違う温度条件
- 原材料の変更又は品質の変更
- 製品品質特性が許容範囲を維持できない
- 設備の変更により配合変更する必要がある
このような条件が考えられます。
1.標準配合の条件とは違う運搬条件
標準配合で設定した運搬時間を超えた運搬時間の場合、
又は短い運搬時間の場合に適用されます。
2.標準配合の条件とは違う温度条件
標準配合で設定した温度条件(通常20℃)
とは違う温度条件、
夏期や冬期のときに適用されます。
3.原材料の変更又は品質の変更
原材料を変更した場合は当然ですが、
原材料の品質が社内規格値の許容範囲を
超えた場合に適用されます。
4.製品品質特性が許容範囲を維持できない
工程検査や製品検査において、
強度、スランプ又はスランプフロー、
空気量、塩化物量が規格値を
満足しない場合又は
満足しなくなる恐れがある場合に
適用されます。
5.設備の変更により配合変更する必要がある
製造設備の変更、更新によって
製品の品質に影響がある場合、
適用されます。
上記の場合の変更・修正方法を
規定する必要があります。
規定例です。
1.適用範囲
この規格は、当工場のレディーミクストコンクリートの標準配合の変更又は修正が必要となる条件、時期、変更及び修正方法について規定する。
2.定義
a)標準配合の変更
標準配合の変更とは、原材料の産地変更・生産工程の変更・検査データの変動により製品の品質に異常が見られたとき・会社の方針で品質保証水準の向上を図るとき・JIS A5308及びその他関連規格の改正により変更が必要なとき・修正で直らないときに行うものをいう。
b)標準配合の修正(修正標準配合)
出荷時のコンクリート温度が標準状態で想定したより、大幅に相違する場合、運搬時間が標準状態から大幅に変化する場合、若しくは、骨材の品質が所定の範囲を超えて変動する場合(短期、通常3ヶ月以内)に修正を行ったものをいう。
c)標準状態
標準状態とは、コンクリート温度が20℃で、運搬時間が45分程度の状態をいう。
期間:4月1日~6月30日,10月1日~3月31日
d)夏期
コンクリート温度が28℃から35℃の期間を指す。
期間:7月1日~9月30日3.標準配合の変更方法
a)標準配合の変更を必要とする条件と時期
次表の通り、各項目が標準配合の変更を必要とする条件と時期になった場合、標準配合の変更方法に従い変更する。
項 目
変 更 条 件 と 時 期
(1)
原
材
料
の
密
度
普通ポルトランド
セメント
生産工場の工程変更等により
密度がX.XX±0.02をこえて変わったとき
高炉セメント
B種
生産工場の工程変更等により
密度がX.XX±0.02をこえて変わったとき
細骨材
砂
採取地の変更等により表乾密度が
X.XX±0.02をこえて変わったとき
粗骨材
砂利
25-5㎜・
40-5㎜
採取地の変更等により表乾密度が
X.XX±0.02をこえて変わったとき
(2)
原材 料の 粗粒率
細骨材
砂
採取地の変更等により粗粒率が
X.XX±0.20をこえて変わったとき
粗骨材
砂利
25-5㎜
採取地の変更等により粗粒率が
X.XX±0.20をこえて変わったとき
(40-5㎜については、25-5㎜と40-20㎜の混合比率を調整してX.XX±0.20とする)
(3)粗骨材の実積率
採取地の変更等により実積率が
XX.X±2.0%をこえて変わったとき
項 目
変更条件と時期
備 考
コンクリート強度
(1)標準偏差の検定で有意差が認められたとき
(2)水セメント比算定式で有意差が認められたとき
有意差検定表による
(4)X- -R管理図で異常が認められその原因が配合に起因するとき
ヒストグラム
X- -R管理図
スランプ
空気量
スランプ、空気量が工程能力図で異常が認められ
その原因が配合に起因するとき
工程能力図
ヒストグラム
塩化物含有量
塩化物イオン(cl-)量として0.3kg/㎥をこえたとき
測定記録
コンクリート容積
検査結果で測定値に異常が認められたとき
容積検査表
アルカリシリカ反応性
アルカリシリカ反応性試験で無害でないと判定されたとき
試験報告書による
その他
(1)関係日本産業規格等が改正されたとき
(2)製造設備、製造工程の変更のあったとき
4.標準配合の変更方法
a)原材料の密度
配合設計標準により新密度で計算し変更する。
b)骨材の粗粒率
1)細骨材の粗粒率 ±0.1 に対し、細骨材率を ±0.5% とする。
2)粗骨材の粗粒率 ±0.1 に対し、細骨材率を ±0.5% とする。
3)必要に応じ試し練りで確認する。
c)粗骨材の実積率
1)粗骨材の実積率 ±0.1 に対し、単位水量を∓プラス1.5Lとする。
2)粗骨材の実積率 ±0.1 に対し、単位水量を∓1%とする。
3)必要に応じ試し練りで確認する。
d)アルカリシリカ反応性
1)アルカリシリカ反応性試験で無害でないと判定されたときは、原則として無害の骨材に変更し試し練りで決定する。
2)無害骨材が入手困難な場合は、アルカリシリカ反応抑制対策(B-2)の方法を検討し、試し練りで決定する。
e)コンクリート強度
1)標準偏差(σ)、変動係数(V)
年1回(原則として5月)実績値を呼び強度別にまとめて、JIS Z 9041-2 書式E:両側検定により有意差があったときは、σVの決定根拠に基づきσVを算定し配合強度を変更する。
2)強度一次式
年1回(原則として5月)試し練りにより有意差検定を行い、有意差があった場合は社内委員会で協議し、試し練り結果の強度一次式を採用して配合を変更するなど、対応を検討する。
3)強度管理図
強度管理図に異常がみられ、原因が配合に起因するときは、試し練りを行い、配合を変更する。
f)スランプ
工程能力図等で変更の必要を認めたときは、次のとおり変更する。
1)スランプ ± 1cmに対し、単位水量∓1%とする
2)水セメント比は、一定とする。
g)空気量
工程能力図等で変更の必要を認めたときは、次のとおり変更する。
空気量調整剤の使用率を調整する。必要があれば濃度も調整する。
h)塩化物含有量
塩化物イオン(cl-)量として0.3kg/㎥を超えたときは、原材料を変更して、試し練りで決定する。
5.標準配合の修正基準
a)原材料の品質が標準原材料の品質として定めた範囲から一時的(3か月以内)に外れるとき。
b)季節的要因でコンクリート温度条件に併せて修正を行うとき。
c)スランプ及び空気量等が所定の値を得られないとき。ただし、補正可能なときは除く
d)強度管理(工程、製品)の上で配合上のアクションをとる必要が生じたとき。
e)流動化コンクリートのベースコンクリートでスランプの増大量の指定を受けたとき。
スランプ増大量の上限は8cmとし、流動化添加後のスランプ値は21cm以下とする。
f)その他の原因で配合の修正が必要と判断され、社内規格に基づき修正する。
6.標準配合の修正を必要とする条件と時期
項 目
変 更 条 件 と 時 期
(1)
原
材
料
の
密
度
普通ポルトランド
セメント
一時的な変動で密度がX.XX±0.02をこえて変わったとき
高炉セメント
B種
一時的な変動で密度がX.XX±0.02をこえて変わったとき
細骨材
砂
一時的な変動で表乾密度がX.XX±0.02をこえて変わったとき
粗
骨
材
砂利
25-5㎜
40-5㎜
一時的な変動で表乾密度がX.XX±0.02をこえて変わったとき
(2)原 材 料 の 粗 粒 率
細骨材
砂
一時的な変動で粗粒率がX.XX±0.20をこえて変わったとき
粗
骨
材
砂利
25-5㎜
40-5㎜
一時的な変動で粗粒率がX.XX±0.20をこえて変わったとき
(40-5㎜については、25-5㎜と40-20㎜の混合比率を調整してX.XX±0.20とする)
(3)粗骨材の実積率
一時的な変動で実積率がXX.X±2.0%をこえて変わったとき
項 目
修正条件と時期
夏期配合
練り上がりコンクリートの温度が28℃を超える場合は、
夏期配合とする。
期間は、原則として7月1日~9月30日とする。
強度
強度管理で配合の修正の必要を生じたとき(変更が完了するまでの間)
流動化コンクリートのベースコンクリート
スランプ増大量の指定を受けたとき
7.標準配合の修正方法
a)原材料の密度
配合設計標準により新密度で計算し修正する。
b)骨材の粗粒率
1)細骨材の粗粒率 ±0.1 に対し、細骨材率を ±0.5% とする。
2)粗骨材の粗粒率 ±0.1 に対し、細骨材率を ±0.5% とする。
c)粗骨材の実積率
1)粗骨材の実積率 ±0.1 に対し、単位水量を∓1.5Lとする。
2)粗骨材の実積率 ±0.1 に対し、細骨材率を∓1%とする。
d)夏期配合
配合補正は、通常期の配合を基準として、原材料の温度上昇及び運搬の時間経過によるスランプロスを2cm見込み下記のように補正する。なお、夏期配合は遅延形を使用する。
1)混和剤使用量は試し練りにより決定する。
2)その他は変更しない。
e)スランプ
スランプの測定値に応じ必要と認めた場合は、次のとおり修正する。
1)スランプ±1cm に対し、単位水量を∓1.2%とする。
2)水セメント比は、一定とする。
f)空気量
空気量調整剤による
1)使用比率を目的の空気量となるように調整する。
2)空気量±1%に対しC×(∓0.001~0.002%)とする。
g)強度
変更するまでの間W/Cの変更で修正する。
次回は、「原材料規定」です。
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