生コン試験係養成講座シリーズです。

今回は、コンクリートの塩化物含有量測定についてです。

コンクリートの塩化物含有量測定方法(カンタブ)

 

JISQ1011:2024には、コンクリートの塩化物含有量検査頻度は次のように規定されています。

 

検査の種類 検査頻度
製品
検査
1回以上/月。工場出荷時に行ってもよい。
工程
検査

①海砂及び塩化物量の多い砂並びに海砂利を使用している場合

②再生骨材Hを使用している場合及び普通

③エコセメントを使用している場合には

④上記①及び②以外の骨材を使用し,かつ,JIS A 6204のIII種を使用している場合

⑤上記①及び②以外の骨材を使用し,かつ,JIS A 6204のIII種以外の混和材料を使用している場合

 

①、②及び③1回以上/日 

④1回以上/週 

⑤1回以上/月

 

 

「カンタブ」は太平洋マテリアル株式会社の塩化物含有量測定計です。

 

 「カンタブ」は財団法人国土開発技術研究センター(現在の一般財団法人国土技術研究センター)で評価を受けた製品になります。

 

今回の内容は、基本的に太平洋マテリアル株式会社のホームページから引用しています。ホームページのリンクを貼っておきます。

 

 

 

カンタブとは

カンタブは、フレッシュコンクリート中の練り水に含まれる塩化物含有量を測定するものです。カンタブは、塩素分析のモール法を基本原理とし、ドライケミストリー( D r y C h e m i s tr y )の手法を導入して、操作を簡単にしたフレッシュコンクリート中の塩化物含有量測定計です。カンタブは、塩化物イオンが存在すると茶褐色の試薬が白色に変化することを利用しています。

 

カンタブのシステム

カンタブを試料のフレッシュコンクリートに差し込むと、吸上口より検液( 練り水)が吸い上げられ、上部の湿気指示部がオレンジ色より暗青色に変化し始めたら、測定が終了したことを知らせます。その際、フレッシュコンクリート中に塩化物イオンが含まれていれば毛細管部分が白色( 淡黄色)に山なりに変化します。その頂点の数字を読み取り、添付の換算表で塩化物含有量を求めます( 塩化物イオンが存在しない場合、このような反応は起こりません)。
 その後、レディーミクストコンクリートの配合( 調合)表における単位水量を用いて、計算によりフレッシュコンクリート中の塩化物含有量を算出します。

 

カンタブの測定方法

1.試料のフレッシュコンクリートを適当な容器に採取してください。

 

試料は1 ℓ 程度で十分ですが、J IS A 1 1 1 5( フレッシュコンクリートの試料採取方法)等に準じて、測定するフレッシュコンクリートの代表的な部分を採取して下さい。また、強度試験用型枠に詰めたフレッシュコンクリートを利用することもできます。

 

2.採取した試料にカンタブを倒れないように3 本差し込み( 全長の1 /3 程度)、湿気指示部が暗青色に変化するまで待ちます( 約1 0 分程度)。

 

注1:カンタブは光や湿気に弱いため、測定直前にアルミパックを破いて取り出し、測定は必ず直射日光を避けて行ってください。
注2:カンタブは3 本を重ねて差し込まないで、適当な間隔を空けて差し込んでください。
注3:カンタブの通気口部分が水に触れると湿気指示部が変色し、測定終了が判断できなくなりますので、絶対に濡らさないようにしてください。

 

3.カンタブの湿気指示部がオレンジ色から暗青色に変化したことを確認後、試料より取り出し、毛細管部分の色が茶褐色から白色( 淡黄色)に山なりに変色した部分の頂点を0 . 1 の位まで読み取ります。

 

・測定所要時間は約1 0 分程度です。しかし、測定時の気( 室)温やレディーミクストコンクリートの配合及び塩化物含有量等で異なり、多少時間が長くなることもあります。( 湿気指示部が暗青色に変化した時点で測定は完了です。)

・もし、塩化物イオンが存在しなければ、白色( 淡黄色)の変色は生じません。しかし、条件によっては濃い茶褐色( 黒っぽい変色)の変色が生じることがあります。これは塩化物イオンによる変色ではありませんので、間違わないようにしてください( 注意事項7 参照)。

 

4.カンタブの読みから添付の換算表を用いて、フレッシュコンクリート中の水の塩化物イオン濃度を3 本についてそれぞれ求め、その平均値からフレッシュコンクリート中の塩化物含有量を下式により計算します。

 

フレッシュコンクリート中の塩化物含有量(kg/m3)=

換算表から求めた塩化物イオン濃度の3本の平均値(%)÷100×単位水量(kg/m3)

 

換算表には「コンクリート用」と「細骨材・溶液用」の2種類あります(表裏に記載)。通常は「コンクリート用」を使用します。

 

換算表から求めた塩化物イオン濃度の3本の平均値は、3本の平均値(%)を四捨五入で表示桁数-1桁(標準品は少数点以下2桁、低濃度品は小数点以下3桁)に丸める。

 

単位水量は、配合計画書に記載がある計画値(kg/m3)を用いる。

 

計算結果は、四捨五入で小数点以下2桁に丸める。

 

カンタブの保存方法

測定の終了したカンタブを記録紙等に貼り付け保存する場合には、以下の処理を行ってください。

 

①ティッシュペーパーやペーパーウェス等にカンタブを包み、机等の安定した上で鉛筆やボールペン等のペン尻を使って、目盛上部より検液吸上口の方へ吸い上げられた検液を十分にしぼり出してください。
なお、アルミパック等のような密封容器に保存しないでください( アルミパック等のような密封容器に保存した場合、測定値が大きくなるケースがあります)。

 

②レポート、工事記録帳にセロテープ等で貼り付け、光( 日光、蛍光など)が当たらないように保存してください。

 

注1:検液のしぼり出し方が不十分の場合、時間の経過とともに変色が多少進行します。

注2:測定終了後、徐々に試薬が変化し、目盛りで3 前後のところまで不純物により、ねずみ色、茶色、黄色等の混合した変色が現れますが、これは塩化物による変色ではありませんのでご注意ください。

 

カンタブの注意事項

  1. 換算表は、必ず箱に同梱されているものを使用してください( 製造ロットごとに検定されていますので、異なるロットのものは使用できません)。
  2. 測定は必ず日影で行ってください。
  3. 測定直前にアルミパックからカンタブを取り出し、ご使用ください。
  4. 湿気指示部は絶対に濡らさないでください。
  5. カンタブの保管は、直射日光の当たる場所及び湿気の多い場所は避けてください。
  6. 測定終了後も試料に差し込んだままにしておくと検液が補給され、反応が進んでしまいますので、測定終了後は速やかに抜いてください。
  7. 条件によっては、カンタブの目盛で3 前後まで茶褐色部が黒っぽく変色し、白い変色の読み取りが困難なことがあります。この場合は、塩化物含有量の絶対値を求めることはできませんが、黒っぽく変色した部分以下の塩化物含有量であると判定されます。特にセメントが富配合の場合( P Cグラウト、セメントペースト等)に発生する可能性が高くなります。
  8. 測定の結果、換算表の最小値に満たない場合は、最小読み値相当以下の塩化物含有量と判定してください。
  9. 有効期限内に使い切ってください。

 

 

 

 

カンタブは、コンクリートの水分(ブリーディング水)を吸い上げて反応する試験器具です。

 

よって単位水量の少ない(スランプの小さい)コンクリートやブリーディングの少ない(高性能AE減水剤を使用した)コンクリートでは時間がかかったり、測定ができなかったりします。

 

この場合、クランプを使用した搾り器でブリーディング水を強制的に採取して、そのろ液で試験することがあります。

 

この測定方法は、太平洋マテリアルからは推奨されていません。

 

しかし、現在では通常的にこの搾り器を使用した測定が用いられています。

 

その場合の換算表は、「細骨材・溶液用」を使用するように聞いております。

 

 

 

ぜひ、試験方法を見ながら実践して下さい。

 

コンクリートの塩化物含有量測定(カンタブ)の解説は以上になります。

 

次回は、強度試験用供試体の作製方法(圧縮)についてです。


 

【FaceBook】
https://www.facebook.com/isao.ito.54/

【(株)エーディーHP】
https://adqms.wordpress.com/

 

【公式LINE 作成しました。こちらからコメント頂いてもお答えします。】

友だち追加