生コン試験係養成講座シリーズです。
今回は、スランプ試験についてです。
スランプ試験方法
JISQ1011:2024には、スランプの検査頻度が規定されています。
管理項目 | 測定頻度 |
---|---|
製品検査 | 必要に応じて試験を適宜行う |
工程管理 | 1回以上/午前、1回以上/午後 |
JIS A 1101:2020 コンクリートのスランプ試験方法を確認すると、
- 適用範囲:コンクリートのスランプ試験方法について規定する
- 引用規格:試料採取方法、コンクリートの作り方
- 用語及び定義:JISA0203による
- 試験器具:スランプコーン、突き棒、平板
- 試料:JISA1115で採取又はJISA1138で作製
- 試験方法
- 結果
- 報告:必要な報告事項
これらが規定されています。
4.試験器具
4.1 スランプコーン
スランプコーンは,セメントペーストに容易に侵されず,試験時に変形しない金属製とする。スランプコーンの寸法は,上端内径100 mm,下端内径200 mm,高さ300 mm及び厚さ5 mm以上とし,適切な位置に押さえ及び取っ手を付ける。取っ手は,高さの約2/3の位置に取り付ける。
校正:スランプコーンの形状は点検及び検査が必要です。
(参考)上端内径100㎜±2㎜、下端内径200㎜±2㎜、高さ300㎜±2㎜及び厚さ5㎜以上をノギスや直定規で測定します。上端内径と厚さは測定しやすいですが、下端内径と高さは測定にコツがいります。
4.2 突き棒
突き棒は,直径16 mm,長さ500 mm〜600 mmの鋼などの金属製丸棒で,その先端を半球状とする。
校正:突き棒の点検及び検査が必要です。
(参考)直径16㎜±1㎜、長さ500㎜~600㎜であることをノギス又は直定規を使用して測定します。また、先端が半球状であることを確認するのですが、これは目視による判断です。
4.3 平板
平板は,十分な水密性及び剛性をもつ鋼などの金属製とし,表面が平滑なもの。その大きさは,スランプ試験ができる余裕をもった寸法とする。取っ手を付ける場合には,スランプの測定の障害にならない位置に取り付ける。
校正:日常の点検が必要です。
(参考)平板にコンクリートの付着、そりがないことを点検する。
5.試料
試料は,JIS A 1115の規定によって採取するか,又はJIS A 1138の規定によって作る。
6.試験方法
試験は,次による。
a) スランプコーン及び平板の設置
スランプコーンは使用前に汚れ,きず及びへこ(凹)みがないことを目視によって確認する。スランプコーンの内面及び平板の上面は,あらかじめ湿布などで拭いておく。スランプコーンは,水平に設置した平板上に置く。 なお,水平の確認は,水準器を用いて行う。
使用前の汚れ、きず及び凹みがないことを目視で確認することは、2020年版から追加されました。監査や審査で忘れる人が多いです。注意しましょう。
b) 試料の詰め方
試料はほぼ等しい量の3層に分けて詰める。その各層は,突き棒でならした後,25回偏りがないように一様に突く。この割合で突いて材料の分離を生じるおそれのあるときは,分離を生じない程度に突き数を減らす。各層を突く際の突き棒の突き入れ深さは,その前層にほぼ達する程度とする。
ほぼ等しい量で3層なので、高さでいうとおよそ1層目:1/5位(約6㎝)、2層目1/2位(約15㎝)、3層目:全部(30㎝)のような感じです。
入れ方もとても重要です。ハンドスコップで入れると思いますが、同じ方向からすべての試料を入れると粗骨材の偏りが発生します。回し入れるようにしましょう。
25回の突き方も人によって違いますが、渦巻き状に外から内へ(又は内から外へ)突くことが多いかなと思います。
突き入れ深さも、その前層にほぼ達する程度とする。となっていますので、最初のうちはどこまで突いているのかを、突き棒で突いたときに突き棒の汚れ具合を目視で確認しましょう。
練習は、スランプ18㎝ぐらいのコンクリートで行う方がわかりやすいです。出来上がったスランプの形に偏りがないことが確認出来たら、8㎝ぐらいのコンクリートで試験を行い、先輩と試験結果に差がないようでしたら合格です。
c) スランプの測定
スランプコーンに詰めたコンクリートの上面をスランプコーンの上端に合わせてならす。突固めによって試料の上面がスランプコーンの上端よりも低くなった場合は,少量の同じコンクリートの試料を足して上面をならす。その後,平板にこぼれた試料を湿布などで取り除き,直ちにスランプコーンを静かに鉛直に連続して引き上げる。スランプコーンを引き上げる時間は,高さ300 mmで2秒〜3秒とする。その後,コンクリートの中央部において下がりを0.5 cm単位で測定し,これをスランプとして記録する。 なお,コンクリートがスランプコーンの中心軸に対して偏ったり,くずれたりして,形が不均衡になった場合は,別の試料を用いて再試験する。スランプコーンにコンクリートを詰め始めてからスランプコーンの引き上げ終了までの時間は,3分以内とする。
「突固めによって試料の上面がスランプコーンの上端よりも低くなった場合は,少量の同じコンクリートの試料を足して上面をならす。」となっていますが、たまに3層目の突固め途中に試料を足す(例えば15回突いて試料を足して10回突く)ようなことをしている人がいます。
3層目を25回突いてから試料を足して上面を均して下さい。
7.精度
スランプ試験の結果は,0.5 cm単位で表示する。
0.5㎝単位への丸めになるので、2捨3入、7捨8入で丸めます。
0.0~0.2=0.0、0.3~0.7=0.5、0.8~1.0=1.0という感じです。
8 報告
報告は,次の事項について行う。
a) 必ず報告する事項
1) 試験年月日
2) バッチ番号又は運搬車番号
3) 粗骨材の最大寸法(mm)
4) スランプ(cm)
b) 必要に応じて報告する事項
1) 天候
2) 気温又は試験室の温度(℃)
3) 突き回数(材料分離のおそれがあり,突き回数を減らした場合)
ぜひ、試験方法を見ながら実践して下さい。
スランプ試験は、試験者の技量に結果が左右されやすい試験です。同じ試料でAさんとBさんが試験を行っても同じ結果になるとは限らないのです。
初めは試験を確実にできるように、一つ一つ確認しながら行い、試験精度をあげていきましょう。
試験の注意事項
- ハンドスコップの中の試料は代表的な試料ですか?モルタルが多くないですか?砂利が多くないですか?
- ほぼ同じ量の3層になっていますか?1層目が多い?3層目が少ない?等
- 突き入れ深さは、ほぼ前層に達する程度ですか?浅くないですか?深くないですか?
- スランプコーンの引き上げはスムーズに2~3秒で上げていますか?途中で止まったり、ゆっくりになったり、はやくなったり、2秒未満や3秒を超えて引き上げていませんか?
- スランプコーンは鉛直に引き上げていますか?鉛直ではなく前や後ろに引き上げていませんか?
練習の時には、上記に記載したダメなこともやってみてください。
なぜ、このようなことしてはいけないのかが理解できます。
スランプ試験の解説は以上になります。
次回は、コンクリートの空気量試験(JISA1128)についてです。
【FaceBook】
https://www.facebook.com/isao.ito.54/
【(株)エーディーHP】
https://adqms.wordpress.com/
【公式LINE 作成しました。こちらからコメント頂いてもお答えします。】