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あなたは少女の方を見つめた。闇と霧で、ほんのわずかな距離に、触れ合っているほど近くにいるにも関わらず、あなたには少女の顔の表情すらも見て取ることができなかった。あなたは何も言わず、静寂と時間だけが森の中に流れて行った。やがてあなたを押さえていた少女の手が緩み、力が抜けたように息を吐くのが聞こえた。笑ったようだった。
「ふっ、分かってはいたが、やっぱりおまえは馬鹿な奴だ。好きにするのだな。」
あなたは松明に火をつけた。明かりに浮かんだ少女の姿からは、今までと違った様子は見受けられなかった。二人は歩き出し、森の中へと足を進めた。
「こんな話を、聞いたことはあるか?」
少女は歩きながら話し始めた。森は霧に閉ざされてその姿を隠し、あなたの前には霞のかかった闇が進むのに合わせて現われ出た。少女の言葉は続いた。
「森の秘宝にまつわる、古い言い伝えだ。秘宝を求めた姉妹の身に起こった、それは哀しい伝説…。」
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