小雨の降る晩のハナシ
仕事帰りのバスから降りて
横断歩道で信号を待ってた
ちょっと強くなってきた雨
でも家も近いし
折りたたみ傘を出すのが面倒で
携帯触りながら青を待つ
ん…？
突然雨がやんだ
｢雨､ひどくなってきたわねえ｣
自分の傘をこちらに半分差しかけてくれながら
小さなおばあさんが
空を見ながらつぶやいた
｢あ…｣
遠慮するのは悪いと思い
礼を言って信号が変わるまで入れてもらう事にした
信号こんなに長かったっけなあ
何か話さなきゃと
天気の話
信号が変わって
｢近いので走ります
本当にご親切に
ありがとうございました｣
一礼して
家まで走った
その頃には
雨はさらにひどくなり
さすがにカバンから傘を出したほうが良かったんだけど
背中の向こう側が気になって
直線の道を
まっすぐまっすぐひた走った
結構濡れて
家に着く頃にはクタクタになった
でも､こころは
とてもやわらかであたたかだった
小さな子供に…
というならわかるけど
自分より背の高い黙々と携帯さわってる
いいトシした知らない赤の他人にも
そっと傘をさしてくれるとは
ちょっと照れ臭かったけど
すごく嬉しかった
まだまだ世の中捨てたもんじゃないね
どこかで
やさしさをやさしさで返せるようにしたいな
みんなが明日も幸せでありますように