今、田園の美術館(いすみ市郷土資料館)で「彫られた龍・画かれた龍」展が開かれていますが、
その中心になっているのが波の伊八の彫刻です。波の伊八こと武志伊八郎信由は1753年、現在の
鴨川市に生れ、左 甚五郎の流れを汲む彫刻師島村丈右衛門貞亮の弟子となって腕を磨き、千葉県を
中心として50点余りの彫刻を残して1824年73才で没しました。
伊八の彫刻は鴨川市やいすみ市の仏閣に多く残されていますが、いすみ市の行元寺の「波と宝球」や
飯縄寺の「牛若丸と大天狗の図」は代表作に数えられています。この地にこうした大作が残されたのは、
当時の地域の人々の生活が豊かだったからだと見られています。

波の伊八と呼ばれるように伊八は多くの彫刻に波を彫っています。その波は写実的で立体感を表し
躍動感があります。伊八は波と共に龍を多く彫っています。
曲亭 馬琴は「南総里見八犬伝」の中で、「角は虎に似て、頭は駝に似たり。
鱗は魚に似て、項は蛇に似たり。腹は蜃に似て、鱗は魚に似たり、その爪は鷹の如く、
掌は虎の如くその耳は牛に似たり」と、想像上の龍について解説しています。




この彫刻には珍しく七福神が彫られています。




この彫刻は飯縄寺の欄間彫刻「牛若丸と大天狗」の左右にあり、45才の時の作です。




伊八が雲を彫っているのは珍しいと思います。


晩年にはお神輿にも波と龍の彫刻をしています。これは伊八最後の彫刻です。