バナジー=デュフロ『貧乏人の経済学』はとてもおもしろい本だ。ネットにはすでにすぐれた書評がいくつも出ているし、例によって訳者解説が充実している。



貧乏人の事業はしばしば、特定の起業衝動の反映というよりは、もっと通常の雇用機会がないときに、仕事を買うための手段でしかないように見えます。

事業の多くの運営理由は、一家のだれかが暇で(あるいは暇と思われていて)、少しでも稼いでくれれば助かるから、というものです。

(略)貧乏人による多くの事業は、その起業家精神を証明するものではなく、むしろ彼らの暮らす経済がもっとましなものを提供してくれないというひどい失敗の症状なのかもしれないのです。



公務員云々は本質ではなく、安定した雇用というのが重要、と。インドやメキシコにおいて工場による安定雇用がどれだけ人々の所得を上昇させ生活を一変させたかについて、著者たちは具体的なディテールをまじえて説明している。