■偏光詩 「出発」
銀河鉄道の駅はまだずっと先なのにぼくの足はもう疲れ果てていた。
相棒のバターのロボットは半分以上溶けてしまった。
靴の底でもうすぐ爆弾が破裂する。
ぼくは身体に貼り付いた荷物を剥がしはじめる。
先に進むために余分なものはみんな捨ててしまうんだ。
醤油で書かれた戸籍謄本を捨てた。
ゴムの臍の緒を捨てた。
燃えない蝋燭。
砂をしたたらす肉の拳銃。
暗号で書かれた父親の遺書。
枯れた花に印刷された母親の写真。
そういったものを次々に捨てていった。
発車のベルがどこかで鳴っている。
空の遥か彼方を銀河鉄道がゆっくり走っていく。
身軽になったぼくは銀河鉄道を見上げながらまた歩き始める。