3055

 前日までチッチチッチと鳴いていたツバメちゃんが、昨日の朝、玄関の前になにやらひからびたものが落ちている。目を凝らしてみると巣のツバメの雛だ。どうして落ちたのか??落ちる運命にあったのか??かわいそうに、一所懸命餌をねだり大空に羽ばたくようになるまで生きようとしていたのに・・・人間とて同じだ。いつどこでどうなるやら一寸先は全



く見えない。こうして生かされ生きている事のこの「今」に感謝しなければ。夕方、家内から電話がはいる。「ちょっと来て・・」。町内の電気屋さんの前で戸畑祇園の子供御輿の少年たちが笛と太鼓を叩いて門出の儀式をしている。なかなか訓練されていて一糸乱れぬ演技に、ついついこちらもリズムに合わせて小躍りしている。太鼓を叩いている坊やはまだ5と言うから驚きだ。なかなかのものである。将来が楽しみだ。いい子になっておくれよ・・・



昨日の続き・・・「そんな櫛は作れねぇ」と職人から断られた。「日本一になるためにはその櫛が必要なんです」と食い下がるががんとして首を縦に振らない。三度目の電話では1時間以上掛かって説得した。業を煮やした田中さんは、「あんたが日本一の櫛職人と言うから頼んでいるんだ。死ぬ気で日本一を追いかけている客の櫛一本作れないのか」と捨て台詞を吐いて電話を切った。数日後、「あんたの思い通り作れるか分からないがやってみる」と電



話が掛かる。思い通りの櫛ができたのは4本目であった。そしてその半年後日本一の悲願を達成37才だった。その後ある講習会でその職人の娘さんと偶然で出会う。「父は先頃亡くなりました」と。あの長い電話の後「俺は日本一の職人だと自負していたが、歳をとるにつれ楽を選び、普通の櫛ばかり作っていた。あの男の言葉で目が覚めた。意地にかけても一世一代の櫛を作ってみせる」と話し、彼が日本一になったとき、「もう思い残すことはない。職人の誇りを持って死んでいける」と話していたという。田中さんはその場で男泣きに泣いた。