「熟年離婚物語」第6話:別れの日
ついに、秋子は自分の決断を行動に移す日を迎えた。
彼女は、長い間考え抜いた末に、離婚届に署名をし、誠一との別れを選ぶことを決意した。
その朝、静かな空気の中で、秋子は誠一と最後の話し合いをするために、
彼をリビングに呼んだ。
「誠一さん…今日、話したいことがあるの。」
秋子の声は静かで、どこか落ち着いた響きを持っていた。
だが、その奥には、深い覚悟が隠されていた。
誠一は彼女の目を見つめ、ゆっくりと頷いた。
「わかってるよ、秋子。俺も考えたんだ。」
二人はソファに並んで座り、しばらくの間、言葉を交わさずにいた。
これまでの人生を振り返り、それぞれの心に浮かぶ感情を整理する時間だった。
「長い間、一緒にいてくれてありがとう。」
秋子が静かに口を開いた。
「あなたとの時間は、決して無駄じゃなかったわ。でも…私はこれから、自分自身のために生きる時間を持ちたいと思うの。」
誠一はその言葉を受け止め、しばらく沈黙した後、ゆっくりと息をついた。
「秋子、俺も同じだ。俺たちは良い人生を送ってきたし、お互いに支え合ってきた。
でも、それぞれにとって、新しいスタートが必要だってことも理解してる。」
その言葉に、秋子は心の中で少しだけ安堵を感じた。
誠一もまた、この別れを受け入れる準備ができているのだと知ったからだ。
「離婚届に署名したの。」
秋子は、机の上に置かれた書類を見つめながら言った。
「これが、私たちの新しい人生への一歩になると思う。」
誠一は無言でその書類を見つめ、ゆっくりと手に取った。
彼はペンを持ち、しばらく考え込んでから、静かに署名をした。
その瞬間、二人の長い結婚生活が法的にも終わりを迎えたのだ。
「ありがとう、誠一さん。」
秋子は涙ぐんだ声で感謝の言葉を口にした。
誠一は彼女に向かって微笑みながら、
「こちらこそ、ありがとう」
と言葉を返した。
その後、二人は静かに別れの準備を始めた。
秋子は自分の荷物をまとめ、家を出る日を決めた。
誠一もまた、彼女の決意を尊重し、自分の新しい生活に向けての準備を進めていた。
その日、秋子は新たな一歩を踏み出すために、家を後にした。
振り返ると、誠一が玄関の前で手を振っていた。
二人の関係は変わったが、その別れは決して憎しみや後悔に満ちたものではなかった。
「これで良かったのよ…」
秋子は心の中でつぶやきながら、新しい未来に向かって歩き出した。
続く・・・
次回は第7話「一人暮らしの始まり」です。




