山梨県富士吉田市、

富士山北東の山麓に、

「日本最古の神社で、

富士山麓に栄えた超古代文明の富士王朝の中心を成した天皇家縁(ゆかり)の大神宮」

と公式ホームページに謳(うた)う、

不二阿祖山大神宮という神社がある。


少しでも日本史を学んだ人ならば、

「超古代文明の富士王朝」(?)と聞き慣れない言葉に、

首をかしげ、

いぶかしさを感じるのではないか。


「日本最古の神社」と触れ込むが、

実際は、

平成16年に再建(?)を開始し、

宗教法人化が平成21年と、

設立わずか15年の新興宗教団体である。

週刊誌などによれば、

某(ぼう)有名オリンピックメダリストたちがこの団体の信奉者であるとの報道もある。


また、

雑誌やインターネットで「富士山のパワースポット」といったスピリチュアルな面を宣伝しつつ、

オカルト的な要素も内包物して人々の興味を惹(ひ)く。

各種イベントや神宮再建への活動の精力的で、

著名な政治家とのパイプもある。


宗教団体として立ち上げたばかりにしては、

妙な運営ノウハウを持っている様子はなぜか?



設立の経緯は


文化庁編の令和5年度版『宗教年鑑』によれば、

この「不二阿祖山大神宮」は、

神道系の単立宗教法人として記載されている。


実質的教祖と指導者的立場を務める代表者は、

本名渡辺政男といい、

大宮司の渡辺聖主(せいす)を名乗る人物である。


著書によれば、

「NPO法人では神とかそういうことは語れないので、

不二阿祖山大神宮を再建しようということになりました」   (【世界最古】不二阿祖山大神宮  58ページ)

と、

法人設立の経緯を述べている。


以前よりNPO法人で自然との共生や、

文化の伝承といった活動をし政治家とも交流があるようだ。

このNPO法人運営の経験を下地に、

自身の宗教的思想を世に広める意図で宗教法人を立ち上げた。


その目的とは、

神宮が、

「再建に傾くと富士は鎮(しず)まり、

忘却に傾くと噴火する。

日本沈没から世界沈没へのシナリオをくつがえすため」(同   表紙)

に蘇(よみがえ)らせるのだ

と述べている。



荒唐無稽(こうとうむけい)な歴史観


冒頭にも触れたが、

この神社が主張する歴史観がまた、

突拍子もない。


およそ現在の歴史学や、

考古学的な立場からは否定されるような主張が多い。

「聖主」名義の著書では冒頭、

「世界各地にあるピラミッドは日本から行ってます」(同   1ページ)

と日本が人類文明の発祥地であるとする。

また、

「太平洋上にあった巨大な大陸」(同 3ページ)

といった、

いわゆる「ムー大陸」の実在を説くなど、

眉唾(まゆつば)の説のオンパレードである。


そもそも、

この神宮を中心とした、

超古代文明の富士王朝が曽存した論拠が、

「宮下文書(みやしたもんしょ)」といわれる富士古文献による。


この文書の核心部は、

紀元前の中国の秦より渡来した徐福(じょふく)〈徐福の渡来がそもそも伝説である〉の筆録とされる。

しかし、

発見された明治16〈1883〉年以前に存在した記録は確認されておらず、 

学術的には偽書(ぎしょ)と見なされている。


日本古来の富士山信仰も相俟(あいま)って、

今回のような神社であっても、

惹かれる人は少なくないようだ。


しかし、

霊峰富士の神秘性を隠れ蓑(みの)にした宗教に惑わされてはいけない。



正義顕揚の大事


日蓮大聖人は『三三蔵祈雨事』に、

「日蓮仏法をこゝろみるに、

道理と証文とにはすぎず。

又道理証文よりも現証にはすぎず」〈御書    874ページ〉

と仰せられている


不二阿祖山大神宮は、

架空の世界観や独自の思想を誇大に宣伝しており、

これらは、

理証も文証もない、

思いつきによるものである。

「再建しないと日本沈没」 (【世界最古】不二阿祖山大神宮 58ページ)

という予言も、

思いつきで再建を始めた平成16年まで、

全く起こっていない


私たち法華講員は、

宗教の正邪に迷う人々に対して、

大聖人の下種仏法の正義を伝え、

折伏していかなければならない。






「令和6年7月16日 『大白法』 第1129号 諸宗教破折161」 より引用