厚生労働科学研究成果データベースより

 

抜粋

《結果と考察より》

医療事故多発者(いわゆるリピーター)の実態把握に当たっては、各医療機関のヒヤリ・ハット報告等、安全管理上のデータは、当事者への譴責を避けるため、個人名を抹消した匿名情報の形でしか提供されないので、現実には利用できないことが判明した。確かに、今日展開されている病院の医療安全運動は、個人を責めず、組織としての安全なシステムを構築することに力点が置かれているため、「間違いを犯した個人」を特定する情報は削除される。このように、個人を責めない職場文化を形成しようとする立場と、問題医師の再教育・処分のあり方を考える立場とは、現象面では相容れない部分があり、このことが医療事故リピーター医師の把握を困難にしているといえよう。同様に、医道審議会のデーも利用価値の低いことが判明した。

 

《結論より》

最後に、医療安全において「(過ちを犯した)個人を責めない」ことに関する医療倫理の立場からの論考(ヘイスティングス・センター・レポート誌)が目についた。“To Err Is Human"が、医療提供者側の組織内だけでの陳謝と許しに終わってしまい、患者・家族に向き合って患者・家族の赦しを請う、という契機が軽視されがちであることを指摘し、医療過誤に直面して医療提供側が患者・家族に対して取るべき態度についてユダヤーキリスト教の伝統を前提とした理論付け(「被害を受けた者の視点から:医療過誤における「赦し」の理論」)を行っている。

 

平成15(2003)年度の研究報告書ですが、約20年が経過した2024年現在も同じ問題が残されており、何か改善したようなところはないように思います。