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当ブログをご覧いただくにあたっては、以前投稿した記事「訴訟経過2」のなかでお伝えした注意事項をよくお読みください。

 

 

訴訟経過5.訴訟を経験して感じた訴訟のリスク 

 

 裁判は、「真実を明らかにする場」ではない。

 前回記事冒頭の繰り返しになりますが、とても大事なことです。

 

 裁判は、原告(訴えを起こす人)が、自分の権利を「立証」しなければ、勝つことができません。すなわち、「真実」であっても、立証できなければ、裁判所は「事実」として認めてくれないのです。

 

 裁判官には、何が真実であるかなどわかりません。それでも、公正な裁判を実現しなければならないのです。そこで、法は、裁判の当事者の一方に「立証責任」を負担させ、その当事者が立証に成功したときに、「事実」として認定するものとしています。

 

 ですから、いくら裁判官を説得しても、真実であると訴えても、証拠をもって立証できない限り、裁判では負けてしまいます。

 

 

 訴訟にかかる費用

 裁判をするためには、訴えを提起する人が裁判所に手数料を支払わなければなりません。この手数料は、相手に請求する内容に応じて決定されます。どんなに相手に非があっても、ひとまずは訴えを提起する人が手数料を支払うことになるのです。

 

 また、裁判をするためには、法律の知識が必要不可欠です。感情にまかせた書面や、単に主観的な事実だけを列挙する書面は、訴訟の書面としては失格です。

 そのため、通常は弁護士に相談することが必要になります。しかし、一般に弁護士報酬は高額で、相談料のほか、事件着手金(依頼を引き受けること)として数十万円、裁判に勝った場合には相手が支払った金額の数十パーセントが、弁護士の報酬となります。

 

 したがって、裁判をするためには多額の費用がかかり、もし裁判で勝訴したとしても、本来の損害を補填できない金額しか手元に入ってこない可能性もあります。敗訴しようものなら、本来の損害に加え、裁判所に支払う手数料、弁護士費用のすべてを回収できないということになってしまいます。

 

 

 時間的負担

 医療訴訟の平均審理期間は、およそ25か月であると聞いたことがあります(最新のデータではないかもしれません)。

 私の訴訟については、訴えの提起から判決が確定するまでに丸5年もの時間がかかりました。

 

 そのような長期間にわたって、定期的に弁護士との連絡を継続し、書面を作成、あるいは確認するという作業は、想像以上に大変なことだと思います。

 なお、弁護士は、基本的に裁判所の業務のある平日に働き、土日に休みを取る人が多いと聞くので、平日に仕事のある方においては、よりスケジュール調整が難しくなると思われます。

 

 

 心理的負担

 訴訟が始まると、相手方との書面のやり取りが続くことになります。

 今回こちらが主張すれば、次回は相手から反論書面が届くのです。当然ながら、多くの場合には反論書面を読めば腹が立ちます。感情を大きく揺さぶられます。

 

 私個人の経験からすると、相手から送られてきた書面を読む時が最もストレスを感じる時間でした。

 

 そのようなストレスを何度も、長期間にわたって定期的に与えられるのですから、ある意味で拷問に近いところがあるでしょう。

 

 

 まとめ

 繰り返しになりますが、裁判は、真実の主張が認定されるものではありません。場合によっては、「真実」が「事実ではない」と認定されたり、反対に、「真実でないこと」が「事実である」と認定されたりするかもしれません。正しい主張が認められる可能性は、我々が考えているよりもずっと低いかもしれないのです。

 

 人との揉め事を裁判で解決することは、必ずしも得策ではないといえます。もしかすると、あるいは、多くの場合には、今よりも損害を膨らませるだけで、感情のぶつけ合いになり、結果に腹を立てることになる可能性があることを、意識しておく必要があります。

 

 医療事件では、訴訟のほかに、いわゆる「示談」が行われることが多いようです。弁護士を通じて示談を行うことにより、訴訟を提起した場合よりもはるかに短時間で、満足のいく結果を得られる可能性もあります。

 

 近年では、医療ADR(裁判外紛争処理制度)という制度を設ける弁護士会もあります。この制度については、私自身あまり詳しくありませんので、ここで詳細を語ることはできませんが、いずれにしても、弁護士に相談してみることをおすすめします。