北里大学病院医療過誤裁判 東京地裁から最高裁まで 第Ⅺー1に引き続き、偽証罪不成立及び告訴状(偽証罪)について記載したいと思う。

 

第Ⅳ 偽証罪(刑法169条)不成立

第1 東京地方検察庁 特別捜査部 直告から返戻までの経緯

1.平成28年2月8日、筆者は丸の内警察署知能班係に電話をし、東京地裁民事訴訟での偽証罪につき、丸の内警察署への告訴状提出を申出た。

 

2.同年2月25日午前10時ころ、筆者とその家族らは、丸の内警察署知能班係O刑事を訪れた。筆者は、同O刑事に北里大学病院医療過誤の概略を伝え、また、北里大学病院医療過誤裁判 東京地裁 平成25年(ワ)第10076号について、告訴状2通(平成28年2月25日付)(罪名 偽証罪)受理を訴えた。

 同日、同O刑事は告訴状(平成28年2月25日付)原本2通をコピーした。筆者は同O刑事に必要証拠書類一式を渡した。

 

(1)告訴人・被告訴人・罪名等

①告訴人:筆者

②被告訴人:北里大学病院整形外科主治医UK(平成21年4月24日~同年6月12日)

③罪名:偽証

 

(2)告訴人・被告訴人・罪名等

①告訴人:筆者

②被告訴人:北里大学病院整形外科受持医HN(平成21年4月24日~同年6月25日)

③罪名:偽証

 

3.その後同年3月25日を過ぎても、前記O刑事からは連絡は無かった。

 

4.同年5月24日、筆者は丸の内警察署に電話をし、前記O刑事に6月8日午前10時面談予約を取った。

 

5.同年6月8日午前10時ころ、筆者とその家族らは丸の内警察署を訪れた。前記O刑事は告訴状(同上)原本2通の受け取りを再び拒否した。

 筆者は、同刑事に補充書面(1)(平成28年6月8日付)原本及び補充書面(2)(平成28年6月8日付)原本を渡した。

 

6.同年7月29日午前9時ころ、丸の内警察署知能班係に電話をしたが、前記O刑事は多忙と言われた。

 同日午後1時ころ同署同係に電話をしたところ、前記O刑事の代わりに同係O刑事(当時係長と推測)が対応し、8月1日午前10時、面談予約となった。

 

7.同年8月1日、筆者とその家族らは、丸の内警察署知能班係を訪れ、O刑事(当時係長と推測)及びO刑事と面談した。

(1)同日、筆者は、O刑事(同上)に、補充書面(3)(平成28年8月1日付)、補充書面(4)(平成28年8月1日付)、上申書(1)(平成28年8月1日付)、上申書(2)(平成28年8月1日付)、上申書(3)(平成28年8月1日付)、上申書(4)(平成28年8月1日付)、上申書(5)(平成28年8月1日付)及び上申書(6)(平成28年8月1日付)原本を提出した。

 

(2)筆者はO刑事(同上)に、「今この場で告訴状(平成28年2月25日付)原本2通を受理しないのであれば、「直告」(東京地検 直告への取り次ぎ)でやって欲しい。」と訴えたところ、「あと2週間待ってほしい。」と返答した。

 O刑事(同上)は署内電話後、筆者に「不起訴でもいいか。」と尋ねたので、筆者は、「不起訴ではダメです。有罪をとらないと再審できません。」と言下に答えた。

 

8.同年8月15日、筆者は、丸の内警察署知能班係に電話をし、告訴状(同上)原本2通受理の有無について確認した。前記O刑事(同上)は、「受理しない。」と返答した。

 

9.同年8月17日午前9時40分ころ、筆者とその家族らは丸の内警察署を訪れた。前記O刑事(同上)は筆者に証拠書類一式を返却した。

 筆者は、東京地検へ「直告」する以外に方法は無いと判断し、東京地検宛 告訴状(同上)を急遽作成した。

(1)同日午後、筆者とその家族らは東京地検を訪れ、北里大学病院医療過誤民事訴訟(東京地裁 平成25年(ワ)第10076号)において、「偽証」があり、丸の内警察署知能班係に告訴状原本2通及び証拠書類一式を提出したが、同署が告訴状原本2通を受理しなかった。そこで、「直告」するに至った旨を伝えた。

 

(2)東京地検 受付担当者(女性)に告訴状原本2通及び証拠書類等一式を提出する際、同担当者が筆者に「証拠書類の中身をよく確かめるように。」と助言した。

 

(3)証拠書類は相当量である。「中身をよく確かめる」ためには、一旦、自宅に持ち帰り、再度出直す必要がある。

 しかし、茅ケ崎から東京(丸の内警察署・東京地検)までの間、高齢の親が筆者の乗った車椅子を押すことは相当の負担である(筆者が高齢の親を介護するのではなく、高齢の親が筆者を介護し車椅子を押すという逆転の有様である。)。

 そこで、筆者は「証拠書類の中身をよく確かめる」ことなく、宛先を「東京地検 直告班 殿」と書き換えた告訴状原本2通及び証拠書類一式等を提出した。

 

10.翌日8月18日、筆者は、昨日東京地検 前記受付担当者の「証拠書類の中身をよく確かめるように」との言辞が気になった。

 そこで、同日午前9時45分ころ、筆者は東京地検 直告班に電話をし、提出書類を確認したい旨を伝えた。

 

11.同年8月20日、東京地検 直告班から筆者に、「告訴状原本2通及び証拠書類一式等」が返却された。

 

12.同年8月21~23日、筆者は証拠書類一式等を全てチェックした。

すると、特に重要とも言える証拠書類が消失していた。

 

13.同年8月25日、筆者、東京地方検察庁 特別捜査部 直告班に、告訴状(平成28年8月15日付)原本2通及び証拠書類一式を提出した。

 

(1)告訴人・被告訴人・罪名等

①告訴人:筆者

②被告訴人:北里大学病院整形外科主治医UK(平成21年4月24日~同年6月12日)

③罪名:偽証

 

(2)告訴人・被告訴人・罪名等

①告訴人:筆者

②被告訴人:北里大学病院整形外科受持医HN(平成21年4月24日~同年6月25日)

③罪名:偽証

 

14.同年9月3日、東京地方検察庁 特別捜査部 直告班は、筆者に「東地特捜第2685号 平成28年9月1日」と記載のある書面並びに告訴状(平成28年8月15日付)原本2通及び証拠書類一式を返戻した。

 北里大学病院整形外科主治医UK(同上)及び北里大学病院整形外科受持医HN(同上)に対する偽証罪は成立しなかった。

 同年8月25日告訴状(同上)原本2通及び証拠書類一式提出から、9月1日返戻まで7日間である。

 

第2 告訴状

告 訴 状

平成28年8月15日

東京地方検察庁

特別捜査部 直告班 御中

                            告 訴 人  筆 者 

 

            告訴人    住居 〒〇〇〇ー〇〇〇〇

                   〇〇〇県〇〇〇市〇ー〇

                   職業 無職

                   氏名 筆者

                   昭和〇〇年〇年〇日生

                   電話 〇〇〇〇ー〇〇ー〇〇〇〇

                   FAX 〇〇〇〇ー〇〇ー〇〇〇〇

 

            被告訴人   住居 〒〇〇〇ー〇〇〇〇

                   〇〇県〇〇市〇ー〇

                   職業 医師

                   氏名 UK

                   昭和〇〇年〇年〇日生

 

【目次】

第1部 告訴の趣旨………………………………………………………………2                      

第2部 告訴事実…………………………………………………………………2

第3部 告訴の事情………………………………………………………………75

 第1章 再審事由があること…………………………………………………75

 第2章 被告訴人受診経緯・緊急入院経緯…………………………………75

  第1 被告訴人受診経緯……………………………………………………76

  第2 被告訴人の欺罔行為による緊急入院………………………………76

 第3章 医学的正当性のない本件第1手術実施に因る重篤な後遺障害…77

 第4章 偽造文書・看護記録改竄・架空の病名病歴治療歴他……………77

 

第1部 告訴の趣旨

 被告訴人の下記所為は、刑法169条(偽証罪)に該当すると考えるので、被告訴人の厳重な処罰を求めるため、告訴する。

 

第2部 告訴事実

罪名 偽証罪(刑法169条)

 被告訴人は、平成26年12月18日、東京地方裁判所611号法廷において、損賠賠償請求事件(平成25年(ワ)第10076号)につき、原告・被告(学校法人北里研究所)双方申請により証人として宣誓の上証言した際、以下記載のとおり自己の記憶に反した虚偽の陳述をし、もって偽証したものである。

 

第1 本件第1手術説明に関する偽証

1.偽証の要旨

(1)被告訴人は、本件第1手術の危険性・合併症、感染症治療の不確実性及び本件第1手術前から複数回の手術を説明したと証言した。これは明らかな虚偽である。

 

(2)被告訴人は、本件第1手術説明の際、「その場に」SK医師がいたと証言した。これは明らか虚偽である。

 

(3)被告訴人は、本件第1手術前に外来初診記録続紙(甲A9)に記載ある内容を説明したと証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.本件第1手術の説明に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書8~9頁)

I代理人「甲A9号証は、外来受診の際にU医師から説明した内容と記載されているもので、乙A1号証の48ページのような説明、第1回手術の説明同意書ですけれども、それをごらんになりながらで構いませんので、この第1回手術に先立って、原告及び原告のご両親に対して説明した内容をもう一度ご説明していただけますか。」

UK「まず、ー中略ーどこまでやれば治るということは感染の治療に関しては絶対に言えないんだということ。だから、できる手を打つけれども、それで治りますよということは言えないということ。もし感染が落ちついてきたらそのときは機能回復に向けてリハビリテーションとか可動域訓練をやるということ。ただ、まず感染を落ち着かせるのが一番の目的ですので、それによって安静にしてる時期が長いですから、それによって歩きづらさとか、可動域、いわゆる曲げにくいとか伸ばしにくいとかいうことが残ることがあるということ。あとは静脈血栓症であるとか、肺血栓塞栓症だとかが起こる可能性があるということ。輸血の必要が出てくる可能性があるということ。伏在神経膝蓋下肢という、膝蓋骨の下にある神経にある細い神経なんですけれども、これが損傷される可能性があるということ。それから、複合性局所疼痛症候群というような病気がありませすけれども、そういう病気などが起こる可能性があるというようなことをお話しています。それと、先ほどお話したように、絶対に治る、どこまでやればもう治るということが感染症の場合分かりませんので、経過を見ながら、経過をみて治っていかないときにはまた手術をする必要が出てくるということもお話いています。」(下線は告訴人による。)

 

3.本件第1手術前の説明に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書58頁)。

本多知成裁判長「だから、甲A9号証に書いてあると言っているんで。」

原告(告訴人)「これは、SK医師が書いていることであって、証人が書いていることじゃないですか。で、SK医師はその場にいませんよね、廊下で私は聞きましたよ、説明を簡単なことしか。」

本多知成裁判長「じゃあ、S医師はそこにいましたがという質問だと。」

原告(同上)「そうです。」

UK「いたから、彼女がこういう記載をしたんだと思います。

原告(同上)「いませんよ。」

 

4.本件第1手術の説明に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書57頁)

本多知成裁判長「簡単な説明しかされていないという記憶なんですけど、あなたの説明内容も記憶でも簡単な説明をしたということでよろしいですかね、簡単というと抽象的ですけれども。」

UK「というか、手術の内容ですからきちっと説明をしているはずです。」

原告(「例えばDVT、PT、CRPS、こういった説明をしましたか。」

UK「どこかに記載があったんじゃないですか、外来カルテに。」

I代理人「記憶喚起のためにカルテを見ていただくということで、外来カルテ。」

UK「(甲A9号証)(外来初診記録続紙)そこの一番最後から2番目のところにCRPSが書いてありますよね。」

原告「それは、私が聞いているのは、原告らに説明をしましたかと聞いているんですよ。」

本多知成裁判長「で、書いてあるということは、前提として説明したかどうかというのはどうでしょうか。」

UK「しているはずです。はい。既に話をしたから、ここにこういう記載があるわけですね。」

(括弧内は告訴人による。)

 

5.偽証の根拠

(1)はじめに

 4月24日本件病院入院前、採血検査、関節穿刺、右膝造影MRI検査、右膝レントゲン撮影を実施した。告訴人らは被告訴人に対し、採血検査結果、鏡検(グラム染色)、右膝MRI造影検査結果について質問した。これに対し被告訴人は、「連休で検査技師がいないので、検査できないから検査結果は判らない。運が悪かった。」を繰り返した。しかし、検査技師は存在し検査を実施していた。当日判明の検査結果である「滑膜炎」、「グラム染色陰性」その他採血検査結果は判明していた。

要するに、被告訴人は、「検査技師が存在しているにもかかわらず、検査技師が休みで検査はできない。」と嘘をついて、告訴人らに当日判明の検査結果を故意に隠蔽したのである。

告訴人のデータを把握している複数の整形外科医らは、「化膿性膝関節炎の疑い」を認めないと断言している。

被告訴人が「検査技師がいない。」と嘘をついたのは、所見・検査結果から「化膿性膝関節炎の疑い」をもっていなかったことを認識していたとするのが妥当である(甲A8の1~2、甲A9)。

 

(2)I代理人は、「甲A9号証は、外来受診の際にU医師から説明した内容と記載されている。」と発言した。甲A9号証には、4月24日当日判明の検査結果である以下①~③の記載がある。①4月24日実施の両側膝レントゲン撮影結果、②造影MRI検査結果:滑膜炎+、明らかな骨髄炎-、③明朝9:00 oncall ope予定。甲A9号証は、SK医師が記載したものであり被告訴人が記載したものではない。4月24日、被告訴人はカルテに一切記載をしていない。

 

(3)I代理人の発言から被告訴人は告訴人及びその家族らに対し、甲A9号証に記載のある上記①~③を説明したことになる。

 しかし、既述のとおり、被告訴人は告訴人及びその家族らに対し、「検査技師が連休で検査できない。検査結果は判らない。運が悪かった。」と説明し、検査結果を故意に隠蔽した。

2006年頃から、告訴人は医学薬学英語論文を読んでおり、とりわけ整形外科学に関する国内外の情報を収集していたので、「滑膜炎」の意義を理解していた。

よって、「滑膜炎」の説明があれば、告訴人は本件第1手術を拒否していた。被告訴人が当日判明の検査結果を故意に隠蔽したことを証明する証拠となるものであり、SK医師記載の甲A9号証にある記載内容を説明していなかった証拠である(甲B39の1212頁、甲C28の318頁、甲C29の1~2、甲C30の1~2)。

 なお、SK医師はカルテに虚偽記載をしている(甲A9)。

 

(4)さらに、被告訴人の「入院当日24日中に手術室が空き次第緊急手術実施」の説明とSK医師カルテ記載「明朝25日午前9時手術」」とは全く異なるものである。

①4月24日整形外科外来廊下にて被告訴人は、「一刻を争う。膝の中に菌があり緊急手術をしないと死亡する。緊急事態である。直ぐに病室を確保し入院に必要な物は売店で購入するように。」と指示し、「(4月24日入院当日)オペ室が空き次第、直ちに緊急手術をする、たとえ夜間でも緊急手術をする。」と説明した。これは外来看護経過記録(緊急入院・全科)に「本日、opeの可能性ありNPO(絶食)の説明ずみ」と記載があることから明らかである。入院当日の緊急手術に備えて告訴人は、14:40「ウーロン茶1口」を最後に「絶食」となっていた(甲A75)(括弧内は告訴人による。)。

 

②ところが、4月24日、SK医師は、「明朝9:00oncall ope予定」とカルテに記載している。

 

③要するに、本件第1手術を「4月24日中に(夜間でも)緊急手術する。」との被告訴人の説明と本件第1手術を「4月25日午前9時に実施する。」とのSK医師のカルテ記載内容とは全く異なるものである。SK医師が「その場」にいたのであれば、「本日、opeの可能性ありNPOの説明済み」と記載していなければならないが、この記載はない。SK医師が被告訴人の告訴人らに対する説明内容を記載していないことは、SK医師が、「その場」にいなかったことを証明する証拠となるものである。

 

(5)よって、被告訴人の「(その場に)いたから、彼女がこういう記載をしたんだと思います。」との証言が虚偽であることは明らかである。I代理人の「甲A9号証は、外来受診の際にU医師から説明した内容と記載されている」との発言も虚偽である。

 

(6)被告訴人は、「入院期間は2週間程で済む。膝を10cm程切開後、1週間持続洗浄を実施後、歩行訓練する。」と説明したのみである。

入院診療計画書に推定される入院期間は、「2009年4月24日より2週間」との記載から明らかである。「2週間の入院予定」でありながら、術前から「どこまでやれば治るか分からない。治らないときは再度手術をする必要がある。」との説明があれば、手術を拒否するという経験則がある(乙A1の29頁)。

 よって、被告訴人の「どこまでやれば絶対とは言えない」、「また手術をする必要が出てくる。」その他合併症・危険性に関して説明したとする上記証言は全て虚偽であることは明らかである。

 

(7)被告訴人は、DVT、PT、CRPSについて説明したと証言した。しかし、告訴人にはPT及びCRPSについて知識がなかったので、これについて説明があれば、どういう病態であるかについて質問しているはずである。これらについての質疑がなかったことは、被告訴人が説明していなかった証拠である。

 

(8)民訴法203条は、「書類に基づく陳述を禁止」を規定し、証人が書類を見ながら自分の経験しない虚偽の事実を陳述することを防ぐことを目的とするが、I代理人が「甲A9号証(外来初診記録続紙)及び乙A1号証の48頁をごらんになりながらで構いません」と発言するとおり、被告訴人は書類に基づいて虚偽の証言をしているに過ぎない。

 

(9)以上のことから、本件第1手術の説明に関する被告訴人の証言及びSK医師が「その場」にいた等の被告訴人の証言が虚偽であることは明らかである。

SK医師は、告訴人及びその家族らが診察室を出ようとした時、「ちょっと待って。上の先生呼んでくる。」と言ったきり二度と姿を現していない。また、右膝関節穿刺後、告訴人の母が採取量を質問したことに対し、SK医師は、「42cc」と言ったのみである。

 

第2 本件第2手術後から約4時間、告訴人を放置の事実及び状況に関する偽証

1.偽証の要旨

 本件第2手術直後から約4時間もの間(5月2日04:40~09:00ころ)、きわめて重篤な病態にあった告訴人(CRP:29.36)を床上約160cmの高さに設置した担架状様に放置した事実について、被告訴人は「事実ではありません。」、「あり得ないと思いますよ。」と証言した。これらは明らかな虚偽である。

 

2.本件第2手術後から約4時間もの間、告訴人を放置した事実に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書39頁)

原彰一裁判官「第2回手術の後に、直ちに持続洗浄を開始したかどうかという点なんですが、原告によりますと、160センチの担架状のところに乗せられてそのままにされたというお話があったんですが、それは事実なんですか。」

UK「事実ではありません。」

原彰一裁判官「そういうことはあり得るんでしょうか。」

UK「あり得ないと思いますよ。」

 

3.虚偽の証拠

(1)5月2日午前4時50分~午前9時ころ、Y看護師及びO看護師らは、告訴人を床上約160cmの高さに設置した担架状様に放置した事実がある。

告訴人が上記時間帯の間、「どこに」かつ「どのような状態」で放置されたかについて、被告訴人は説明していない。

本件第2手術直後から持続洗浄を実施していれば、「その持続洗浄ごと病室に戻っていくというか。だから、病室用のベッドに手術室で移って、移ったらその病室用のベッドを看護師さんと僕らが押しながら病室に戻っていくと。で、病室あるいは処置室にそのまま到着して、そのまま流し続ける」はずである(U証人調書40頁)。

ところが、本件第2手術直後から持続洗浄を実施しなかったので、被告訴人が、告訴人を持続洗浄ごと「病室」又は「処置室」にそのまま到着させた事実はない。本件第2手術直後、被告訴人は告訴人の両親及び弟に対し「処置室で容態を見ていく。」と説明したが告訴人に対し話しをしていない。

Y看護師が単独でベッドを片手で楽々と押していた。病棟へ移動のためエレベーターに乗り込んだのは、ベッド上の告訴人、Y看護師、告訴人の両親・弟の計「5名」のみであった。

 

(2)術前、被告訴人が「持続洗浄を実施しないと膝の中の菌が全身を駆け巡り死亡する。」と説明していたので、告訴人はY看護師に直ちに持続洗浄を実施するように訴えた。しかし、Y看護師は、「〇〇さんは治療の対象になっていない。治療しないことになっている。持続洗浄を実施しない。(死の恐怖に対し)どうでもいい。」と返答した。O看護師もこれを黙認した。告訴人は治療の対象となっていない理由をY看護師に質問した。同看護師は、「〇〇さんはタダトモでしょ。タダトモ」を繰り返した。当時告訴人は精神科を受診し医療費が無料であった。「タダトモ」とは当時のプロバイダCMから、「無料」を意味すると理解した。

 

(3)5月2日午前9時ころ、告訴人はようやく病室に戻された。告訴人はE看護師に自身の置かれた状況を説明し、「私は治療の対象になっていないというのは本当ですか。」と尋ねた。E看護師は顔を強張らせて真剣に聞いた後、病室を飛び出して行った。暫くして、Y看護師が「だって、タダトモのくせに。とうでもいい。やってられない。」と強い口調で話しているのが聞こえた。医療費無料の患者には治療しないということが日本で行われていることに愕然とした。

 

第3 本件第2手術直後から持続洗浄を実施しなかった事実に関する偽証

1.偽証の要旨

 被告訴人は、「本件第2手術直後から持続洗浄を実施した。」と証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.本件第2手術直後から持続洗浄を実施しなかった事実に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書18頁)

I代理人「念のために確認しますけれども、この第2回手術の後、すぐに持続洗浄を実施したということでよろしいですか。」

UK「はい。」

I代理人「最終行に、持続洗浄を開始したと書いてありますけれども、それで、よろしいですかね。」

UK「はい。」

 

3.偽証の証拠

(1)本件第2手術直後から持続洗浄を実施していなかったことは、告訴人及び告訴人の両親・弟の計4名がこれを確認している。告訴人の右膝に、「チューブ(IN及びOUT)を接続していなかったので、持続洗浄用の生理食塩水を右膝関節内に流していなかった。すなわち、これは持続洗浄を実施していなかった証拠である。

これについて、告訴人の母が陳述書に「オペ室から出てきた時、ベッドに横たわっている〇〇の膝には持続洗浄は実施されていませんでした。〇〇の右膝にはチューブは接続されていませんでしたので、「不審」に思いました。」と記載したとおりである(甲A85の5頁)。

 

(2)本件第2手術直後、ベッドを押していたのはY看護師1名のみであった。告訴人及び告訴人の両親・弟の計4名が目撃し、これを確認している。本件第2手術直後から持続洗浄を実施していれば、ベッドにポータブル持続洗浄機器一式(電源装置含む)を装備・搭載しており重量があるので、看護師単独でベッドを片手で押すことは不可能である。

ア 持続洗浄を実施しなかったので、「手術室での、手術室のベッドで、ベッド上でまず持続洗浄が開始されて、流れていることを確認したら、そのまま今度は病室用のベッドに移ります。手術室で。で、移ったまま、その持続洗浄ごと病室に戻っていくというか。だから、病室用のベッドに手術室で移って、移ったらその病室用のベッドを看護師さんと僕らが押しながら病室に戻っていくと。で、病室あるいは処置室にそのまま到着して、そのまま流し続けるという形」ではなかったのである(U証人調書39~40頁)。

 

イ つまり、本件第2手術直後から持続洗浄を実施しなかったので、被告訴人はベッドを押しておらず、Y看護師が単独で片手で軽々とベッドを押し、もう1方の手で点滴スタンドを押していた。点滴スタンドには右膝関節内持続洗浄用の「生理食塩水パック」(1000ml)を吊るしていなかった。点滴スタンドに吊るしていたのはルートドレイン類「DIV  20G」とあるように静脈点滴用のパックであった。「持続洗浄用の生理食塩水パック」と「静脈点滴用のパック」とは大きさが全く異なるので、視認できる(乙A1の63頁)。

 

ウ 本件第2手術直後、病棟へ移動するために「エレベーター」に乗り込んだのは、告訴人が寝ていたベッドを片手で軽々と押していたY看護師、告訴人の両親及び弟の計5名である。

 

エ 4月25日の本件第1手術直後、被告訴人は、「(持続洗浄機器の)この電源はポータブルで(電源が)切れると大変だから(持続洗浄不可能)、早く病室へ戻ろう。」と告訴人に話し被告訴人自ら両手でベッドを押し病室まで移動させていた。本件第1手術直後の様子について告訴人の母は、「U Dr.ベッドを一人で操作してきて下さった。」とメモに記載している(本人調書4頁、甲A87の1)。

 

オ 本件第2手術直後から持続洗浄を実施していなかったので、被告訴人はベッドを押していなかった。Y看護師が単独で片手でベッドを軽々と押していた。

 

(3)本件第2手術直後に持続洗浄を実施しなかったことを証明する証拠

①本件第2手術直後、持続洗浄を実施しなかったので、「18Frセイラムサンプチューブ」を装着していない(乙A1の63頁)。本件第1手術直後は、持続洗浄を実施したので、「18Frセイラムサンプチューブ」を装着している(乙A1の53頁)。

 

②本件第2手術直後、持続洗浄を実施しなかったので、「持続吸引開始」の記録・記載はない(乙A1の63頁)。本件第1手術直後は持続洗浄を実施したので、「持続吸引開始」及びその「開始時刻」の記録・記載がある(乙A1の53頁)。

 

③本件第2手術直後、持続洗浄を実施しなかったので、「排液」は存在しない。

よって、「排液」の記録・記載はない。本件第1手術直後は持続洗浄を実施したので、「排液」の記録・記載がある(乙A1の300、301頁)。

 

④本件第2手術直後、持続洗浄を実施しなかったので、中央手術室から病棟にある「隔絶された特別の部屋」までの間、持続洗浄を継続実施するための携帯型ディポーザブルPCA用注入ポンプ(一体型)のレセプト計上はない(甲A54)。本件第1手術直後は持続洗浄を実施したので、携帯型ディスポーザブルPCA用注入ポンプ(一体型)のレセプト計上がある(甲A53)。

 

⑤Y看護師の「帰室 下肢フローシート」とある看護記録は「改竄・隠蔽」された箇所に該当するものであり、「下肢フローシート」にある「持続洗浄もれなし」との記載は虚偽である(甲A73の2、乙A1の312頁)。告訴人元代理人KJ弁護士、同HC弁護士、同NS弁護士3名らが「看護記録改竄・隠蔽」を確認したものである。

 

(4)以上のことから、本件第2手術直後から持続洗浄を実施しなかったことは明らかである。よって、被告訴人の上記証言が虚偽であることは明らかである。

 

4.補足

(1)「チュウシ」の記載があること(乙A1の59頁)

 Y看護師は告訴人に対し、「〇〇さんは治療の対象になっていない。治療しないことになっている。持続洗浄はしない。」と断言した。なお、本件第2手術の「ANESTHESIA RECORD」(麻酔記録)に「チュウシ」の記載がある。「チュウシ」の意味について、告訴人は被告に説明を求めたが被告はこれに回答しない。

 

(2)「99へ」の記載があること(乙A1の59頁)

ア 本件第2手術後5月2日、午前4時50分頃、Y看護師は「6階」にある「隔絶された特別の部屋」の床上約160cmの高さにある担架状様に告訴人を放置した。この「隔絶された特別の部屋」は非常扉等により隔離されていた模様で病棟アナウンスが聞こえなかった。また、床上約160cmの高さにある担架状様からベッドに下す際、Y看護師又はO看護師のいずれか一方が、告訴人の顔面に「白い布」を被せたので、病室までの経路は不明である。告訴人は恐怖の余り、「白い布」を払いのけることを諦めた。

 

イ 本件第2手術の「ANESTHESIA RECORD」(同上)の「病室へ 4:30」の記載は虚偽である。午前4時30分は「麻酔中」であり、告訴人が「中央手術室」を出たのは、午前4時45分ころである(乙A1の58頁)。

 

ウ 病室への帰室時刻は午前9時ころである。帰室後告訴人は朝食を終えた同室患者に(同患者が朝食後の歯磨きのために病室を出ようとしていた。)、本件第2手術直後に放置された状況を話した。

 

第4 本件病院退院の経緯に関する偽証

1.偽証の要旨

 被告訴人は、「バンコマイシンを投与して、ご本人(告訴人)及びその家族が退院をしたいとおっしゃった。」と証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.本件病院退院の経緯に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書40頁)

原彰一裁判官「本件、その治療に関係するかどうかというのは置いておいても、原告に結果として右膝の障害が残ってしまったということがあるとすると、その原因はどこにあるというふうにお考えになりますか。」

UK「治療は、うまく継続されていないのではないかと思います。ただ、それはもう推察でしかありません。僕らが見ているのは、バンコマイシンを投与して、最終的にご本人とご家族が退院をしたいとおっしゃって、」

(下線は告訴人による。)

 

3.偽証の証拠

(1)本件病院医師らがバンコマイシン投与終了を決定し、また、バンコマイシン投与(点滴)をせず代わりにザイボックス処方を決定した。

 6月11日午前8時20分ころ、KC看護師は告訴人に「バンコマイシンの点滴は終了になったので、代わりに、ザイボックスを飲むことに決まった。」と説明して同剤1錠を直接手渡した。告訴人はこれを服用した。また、同日午前9時過ぎころ、HN医師は、告訴人に対し、「バンコマイシン点滴を終了した。今後バンコマイシンは投与しない。その代わりにザイボックスを服用し続ける必要がある。転院先を相模台病院精神科閉鎖病棟と決定したので既に紹介状を書いた。」と説明した(転院先に関する問題については後述する。)。

「バンコマイシン投与終了決定」、「ザイボックス処方」、「MT(ムンテラ)」について、以下記載の6月11日の時系列経緯のとおりである。これらについて、「尋問調書・陳述書について」と題する書面(平成27年2月5日付)にて記載した。

★6月11日の時系列経緯

  時刻            内容

04:30ころ     最後のバンコマイシン投与

08:20ころ     ザイボックス服用

17:30ころ     MT(話し合い)開始

 

(2)6月11日の時系列経緯から、告訴人らが退院の希望を伝えたMTより前に、本件病院医師らがバンコマイシン投与終了を決定し、ザイボックス処方を決定したのである。ザイボックス(錠剤)は、抗MRSA薬の中で最上位格にある薬剤である。バンコマイシン点滴投与が無くなり、ザイボックス服用のみのために本件病院に入院する合理的理由を一切認めない。ザイボックス錠剤を服用することは自宅で十分であるから告訴人らは退院の希望を伝えたのである。

 要するに、「6月11日17:30過ぎころ」開始のMT(話し合い)において、退院について言及したのである。

 よって、被告訴人の上記証言、すなわち、「僕らが見ているのは、バンコマイシンを投与して、最終的にご本人とご家族が退院をしたいとおっしゃって、」との証言が虚偽であることは明らかである。

 

(3)6月11日より以前に、6月11日のバンコマイシン投与終了を決定していたことは、「抗菌薬投与・細菌培養一覧」からも明らかである(甲21)。

ア 6月11日の抗菌薬投与・細菌培養一覧に、バンコマイシン投与歴は「ない」。

イ 6月11日の抗菌薬投与・細菌培養一覧に、ザイボックス「1200」とあるのは、ザイボックスを「2錠」(朝夕2回:1錠600mg)処方し、服用した履歴である。

 

ウ 6月11日午前8時20分ころ、ザイボックス1錠を服用したので、その後バンコマイシンを投与することはできない。

 本件病院医師らがバンコマイシン投与終了を決定していた。すなわち、告訴人らの退院希望の有無は全く関係ない。

 

エ よって、被告訴人の「僕らが見ているのは、バンコマイシンを投与して、最終的にご本人とご家族が退院したいとおっしゃって、」との証言が虚偽であることは明らかである。

 

第5 バンコマイシン投与終了及びザイボックス処方に関する偽証(1)

1.偽証の要旨

 被告訴人は、「朝晩通って、外来で(バンコマイシンの)点滴ができますよという話をし、それはできないとおっしゃった。」と証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.バンコマイシン投与に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書40頁)

UK「(6月11日)まだ治療の途中でしたけれども。で、通常はまだ点滴を継続すべき時期だったんです。だけど、その点滴。じゃあ、外来で点滴しましょうかと、朝晩通っていただければ点滴もできますよという話もしたんですが、それはできないとおっしゃったので、」

(括弧内は告訴人による。)

 

3.偽証の証拠

(1)被告訴人上記証言の前提となる「まだ治療の途中であること」、「点滴を継続すべき時期であること」の説明自体が全く存在しない文言である。よって、上記証言が虚偽であることは明らかである。

 被告訴人は告訴人らに対し、「(6月11日時点)右膝MRSA感染陽性中であり、治療の途中であること」及び「バンコマイシンを継続投与すべき病態にあったこと」を一切説明しなかった。

 これは、6月11日、17:30過ころMTにてHN医師が告訴人及びその家族らに対し、「右化膿性膝関節炎は良くなっている。関節内に菌はないが、右膝MRSA感染予防のためにザイボックスを服用し続ける必要がある。」と説明したことから明らかである。なお、この旨は同日HN医師のカルテに記載がある(乙A1の26頁)。

 

(2)被告訴人の証言にある「朝晩通って(バンコマイシン)点滴を実施すること」は絶対に不可能である。「朝晩通って」とあるのはバンコマイシンの点滴1日2回(12時間毎)実施のことであるが、これを実施することが完全に不可能である根拠を以下列挙する。

ア 告訴人の自宅から本件病院まで車で片道「2時間強」を要する。この旨は、アセスメント-1(成人用)のその他の情報欄に「両親茅ケ崎のため病院まで2時間程かかる。」との記載から明らかである(乙A1の287頁)。

 

イ 当時、告訴人の右足の親指のみがかろうじて反応する程度であり、右足は、「1本の棒」のようであった。当然のことであるが、「片足(左足)」で立つことすら不可能であった。本件病院医師らは告訴人に「紐」を与えた。その「紐」の形状は、長さ約80cm、幅約6cm、先端が直径約8cmの「輪」状になっており、輪状部分を右足の土踏まずに引っ掛けて、座った状態で、「紐」を操り右足を左右に移動させている状態であった(甲A85の7頁)。

 なお、告訴人の右足が上記状態であることは、6月17日14:00過ぎころ、湘南東部総合病院整形外科 NK医師が告訴人を診察した際、これを確認している(告訴人は前記「紐」を携行した)。

 

ウ 当時、告訴人は車椅子への移乗は介助が必要な状態であった。これは被告訴人が「退院される時点でまだ車椅子に乗り移られるのも介助が必要な状態で、」と証言したことから明らかである(U証人調書41頁)。

 

エ 6月12日、本件病院退院後、告訴人は右膝激痛増強のため傍にある「ポータブルトイレ」にさえ移乗することが不可能となっていたので、「紙オムツ」を装着している状態であった。「紙オムツ交換」及び「排泄物の処理」は全て告訴人の母1人で行っていたのである。

 

オ つまり、右足の親指がかろうじて反応する程度であり、自身の意思のみでは右足を全く動かすことができず(前記「紐」を使用しこれを操作して右足を左右に移動)、かつ車椅子への移乗に介助が必要な状態にあり、「ポータブルトイレ」を使用することもできず、「紙オムツ」を装着していた当時の告訴人が、高齢の両親(当時、父:〇〇歳、母:〇〇歳)による介護を受けながら、バンコマイシン点滴1日2回(1回点滴30分)のために自宅と本件病院とを1日2往復し、通院し続けることは絶対に不可能であり社会通念上の常識を大きく逸脱したものである。

 

カ 以上のことから、被告訴人が「外来で点滴しましょうかと、朝晩通っていただければ点滴もできますよという話もしたんですが」との証言が虚偽であることは明らかであり、虚偽の証言を前提とした被告訴人の「それはできないとおっしゃったので」との証言も虚偽であることは明らかである。

 

第6 バンコマイシン投与終了及びザイボックス処方経緯(2)

1.偽証の要旨

 被告訴人は、「(バンコマイシンの)点滴に来れないと言われたら、」と証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.バンコマイシン投与終了に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書40頁)

UK「それでも僕らとしては治療を継続しなきゃいけないと。で、治療の継続として選択としては、そしたら点滴に来れないと言われたら、もう内服しかないわけです。その当時、内服で、今でもそうですけど、内服で抗MRSAの薬品といったらザイボックスしかなかった。」と証言した。

 

3.偽証の証拠

(1)はじめに

ア 被告訴人は、「(6月11日時点)まだ完全に陰性をカバーしていない状況で。」と証言した(U証人調書19頁)(括弧内は告訴人による。)。

 しかし、6月1日MT、被告訴人は、告訴人らに、「リハビリをがんばっていかなくてはいけない時期にきています。現在、良い方向に進んでいるのでがんばっていただきたいと思います。」と説明し、この旨はカルテに記載がある。つまり、被告訴人は、右膝MRSA感染中について一切言及していない(乙A1の25頁)。

 

イ 被告訴人は、6月11日時点で右膝MRSA感染中であり、バンコマイシン継続投与が必要な病態にあることを知りながら、これらにつて告訴人らに一切説明をしなかった。

 既述のとおり、6月11日MTにてHN医師は、「右化膿性膝関節炎は良くなっている。関節内に菌はないが、右膝MRSA感染予防のために、ザイボックスを服用し続ける必要がある。」と説明し、また、同日同医師が「右膝関節内に菌はない。右化膿性膝関節炎は良くなっている。」とカルテに記載しているとおりである(乙A1の26頁)。

 

ウ 要するに、告訴人らは、6月11日時点、「右膝MRSA感染中であること」及び「バンコマイシンの継続投与が必要な病態にあること」について一切説明を受けていない。

 

エ また、以下記載のとおり、転帰は「軽快」と記載があり、また、被告訴人の記名押印のある6月11日付「診療情報提供書」には「病状安定」の記載がある。

 

オ 本件病院退院前日の6月11日、「右膝MRSA感染中」であれば、「軽快」又は「病状安定」であるはずがない。右膝MRSA感染に対する適切な治療である、バンコマイシンを継続投与しなければ、右膝MRSA感染「増悪」は必至である。

 

     書証        転帰・病状       書証番号

平成21年6月分レセプト    軽快       甲A55

入院・看護総括         軽快       甲A42

入院病歴総括(B)        軽快       乙A1の372頁

入院診療録           軽快       乙A1の2頁

診療情報提供書(6月11日付) 病状安定     甲A3

 

カ 被告訴人の記名押印のある6月11日付「診療情報提供書」には、「右膝MRSA感染中であること」及び「バンコマイシン継続投与の必要性」について、一切記載がない(甲A43)。

 

(2)被告訴人は、「それでも僕らとしては治療を継続しなきゃいけない。」と証言したが、被告訴人は告訴人らに、「右膝MRSA感染中であること」及び「バンコマイシン継続投与の必要性」を一切説明していない。6月11日時点にて、「右膝MRSA感染中であること」及び「バンコマイシン継続投与の必要性」について、カルテ、看護記録等に一切記載はない。

 したがって、「右膝MRSA感染中であること」及び「バンコマイシン継続投与の必要性」を知らない告訴人らは、「バンコマイシンの点滴に来れない。」と言うはずがない。よって、被告訴人の上記証言が虚偽であることは明らかである。

 

(3)そもそも、右膝MRSA陽性中であれば、バンコマイシン継続投与は必須であり、これを実施継続しなければならないのであって、本件病院医師らがバンコマイシン投与終了を決定し、ザイボックスを既に処方して告訴人が同剤を服用後に、右化膿性膝関節炎は良くなっている。右膝関節内に菌はないと告訴人らに説明し、かつ退院・転院先を決定し診療情報提供書を既に作成しておきながら、被告訴人の「僕らとしては治療を継続(バンコマイシン投与)しなきゃいけないと。」との証言は、通常人の理解をはるかに超える理解できないものである。

 

4.補足

(1)被告訴人の上記虚偽の証言がザイボックス処方の根拠となっていることは、最も重大かつ深刻な問題である。

 

(2)被告訴人は虚偽の証言によってザイボックス処方を正当化している。虚偽の証言でもしない限り抗MRSA薬の中で最上位格にあるザイボックス処方を正当化できないものと考える。告訴人のデータを把握している本件病院以外の医師全員が、MRSA感染症の治療に対する「最後の砦」又は「最終兵器」と言われているザイボックスを告訴人に安易に処方したことを厳しく批判している。当時、ザイボックスを取り扱うことが出来る業者は神奈川県内では「2つ」と限定されており当時ザイボックスを取り扱うことができる「医療機関」も限定されていた。

ザイボックスの使用が厳重に制限・管理されていることを示唆するものである。

 

第7 バンコマイシン投与終了及びザイボックス処方の経緯(3)

1.偽証の要旨

 被告訴人は、告訴人が本件病院を退院することになったので、バンコマイシン投与を終了したと証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.バンコマイシン投与終了に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書19頁)

I代理人「その後、原告は6月12日に、北里大学病院を退院することになって、その前日の6月11日にバンコマイシンの投与は終了したということでよろしいですね。」

UK「はい。」

 

3.偽証の証拠

(1)告訴人らが退院希望を伝えたのは、6月11日17:30過ぎ以降である。

 

(2)6月11日、08:20頃、本件病院医師らは告訴人にザイボックスを処方し、告訴人は同剤を服用した。当然のことながら、これ以降本件病院医師らは、バンコマイシンを投与することはできない(6月11日午前9時分、午後3時分、午後9時分」。「6月11日の時系列経緯」から明らかである(本書面14頁)。

 

(3)6月11日の抗菌薬投与歴(甲A21)

①6月11日のバンコマイシン(VCM)の投与歴は「ない」。

②6月11日のザイボックス処方歴「1200」であり、ザイボックスを朝夕の2回(600mg×2錠:1200)処方し、これを告訴人が服用した証拠である。

 

(4)以上のことから、本件病院を退院することになって6月11日にバンコマイシン投与を終了したのではない。告訴人の退院希望の有無に関係なく、本件病院医師らがバンコマイシン投与終了を決定したのである。よって、上記被告訴人の証言が虚偽であることは明らかである。

 

4.補足

(1)6月10日、告訴人は、「個室」に移ったばかりである。5月上旬、被告訴人は、「骨髄炎を起こしているので入院期間は長引く。」と説明した。告訴人は、「4人部屋」を使用していたが、同室患者の夜間の動静(鼾・物音)により十分な睡眠を摂ることができなかった。そこで、不眠症である告訴人は入院の長期化に備え「個室」を希望しており本件病院退院を全く考慮していなかった。

 

(2)6月10日、HN医師は「今后 さがみ台HOSPへ転院push予定!」と記載し、6月11日、同医師は「相模台病院精神科閉鎖病棟(又は相模台病院精神科)」宛て診療情報提供書を発行した(乙A1の356頁、甲A43)。

 

(3)本件病院医師らがバンコマイシン投与終了を決定したのは、「6月8日」であると考えられる。理由は以下のとおりである。

①6月8日、HN医師はバンコマイシン投与を「6月10日」までとした(乙A1の156頁)。

 

②6月11日04:00ころ、午前3時分のバンコマイシンが実施されていないことを告訴人が指摘した際、AH看護師は告訴人に「6月11日午前3時分のバンコマイシン投与を示唆する「→go」に「×印」が付された指示票(看護師への)を提示した。なお、看護記録には、「抗生剤(3時分)が終了して中止になっていたとNSが思い込んでおり、」と記載がある(乙A1の351頁)。

 告訴人が前記指示票を見てから30分程経過後、AH看護師が持参した「バンコマイシンのボトルパック」には、通常、印字されているはずの「ラベル」(氏名:〇〇〇〇、ID、薬剤名等)が貼付されておらず、「黒マジック油性ペン」で「〇〇〇〇」と手書きされていた。ラベルが出力・貼付されていなかったのは、6月11日午前3時分からバンコマイシン投与を予定していなかったものと考えられる。本件病院医師らが、6月8日にバンコマイシン投与を「6月10日」で終了することを決定し、かつ6月11日朝食後からザイボックス処方を決定していたので同剤を処方し告訴人はザイボックスを「6月11日朝食後」から服用したのである。

 

第8 バンコマイシン投与終了及びザイボックス処方経緯(4)

1.偽証の要旨

 被告訴人は、本件病院退院及びバンコマイシン投与終了について、「自殺企図」を理由としてMTがあり、告訴人及びその家族の方から退院を希望したので退院になったと証言した。「自殺企図」は事実無根である。よって、被告訴人の証言は明らかな虚偽である。

 

2.本件病院退院の経緯に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書19頁)

I代理人「この6月12日に退院するという、このタイミングで退院することになって、バンコマイシンの投与を終了することになった理由を教えていただけますか。」

UK「前日にご本人の自殺企図があって、そのことでご本人、ご家族と主治医、そのメディカルスタッフとみんなで話し合いが持たれたみたいですけれども、そのときに、ご本人、ご家族のほうから、退院したいというご希望があったので退院ということになりました。」

 

3.偽証の証拠

(1)はじめに

 I代理人の「6月12日に本件病院を退院することになってバンコマイシンの投与を終了することになった」との趣旨の発言が虚偽であることは、「6月11日の時系列経緯」及び「6月の抗菌薬投与・細菌培養一覧」から明らかである(本書面14頁、甲A21)。

 

(2)被告訴人の証言する「自殺企図」は事実無根である。よって、事実無根を前提とした証言が虚偽であることは明らかである。被告訴人は事実無根の「自殺企図」に関して「HN医師報告」について言及しているので、HN医師の証言の一部を掲載する。以下のとおり、被告訴人及びHN医師が証言する「自殺企図」はいずれも「伝聞」である(U証人調書53頁、H証人調書23頁)。

❶本多知成裁判長「いや、自殺を図ったとおっしゃっているんですけれども、あなたが直接見分した事実なんですか。」

UK「いえ、僕が見分した事実ではありません。」

本多知成裁判長「どなたが見分したということで聞いたんですか。」

UK「僕は、H先生から報告を受けました。」

 

❷原告(告訴人)「そのような記載(6月11日、転落しようとしていたとのカルテ記載)は、あなたの記憶間違いじゃないですか。もしくは誰かと間違えていないですか。」

HN医師「間違えてないです。ナースからの報告がありました。」

原告(同上)「誰かと全てにおいて間違えていないですか。誰かと。」

HN医師「間違えていません。自殺未遂を冒したときに、6月11日に、その後、みんなで集合して、十何人で、ナースから医療安全の方から、みんなでお話をしていたときに、弟さんもいて、それで駆けつけて、そのメールの事実を知って弟さんも駆けつけていますので、メールはあったかと思います。」

原告(同上)「誰かと本当に間違えているんじゃないですか。」

HN医師「間違えていません。」

(括弧内は告訴人による。)

 

(3)「自殺企図」が事実無根であることを明らかにし、これを証明するためには以下の人物を取り調べ、参考人として事情聴取する必要がある。

【1】HN医師が証言する「十何の(看護師)及び医療安全の方

 

【2】6月11日のカルテに「自殺未遂」と記載した「」なる人物(氏名性別不詳)(乙A1の26頁)。

 

【3】入院・看護総括に「死にたい」と興奮しているところを発見される。」と記載したYR看護師(乙A1の368頁)。

 

(4)補足

 HN医師の上記証言にて「弟さんもいて」、「弟さんも駆けつけてくれている」、「メールの事実」とあるが「弟は駆けつけることができない状態にあった」ので弟が駆けつけることは絶対に不可能である。よって弟はいない。また、告訴人(原告)は、「メール(携帯)」をしないのでメールは存在しない。

 

(5)6月11日17:30過ぎMT実施の経緯

①HN医師及び被告訴人らが転院先を既に決定していた。

 6月11日午前9時過ぎころ、HN医師は、「転院先は「相模台病院精神科閉鎖病棟」と決定し既に診療情報提供書を書いた。」と告訴人に説明した。

 なお、「相模台病院精神科閉鎖病棟(又は相模台病院精神科)」と記載された「宛名」が切り取られた6月11日付診療情報提供書が存在するが、被告はこれを開示しない(甲A43、甲A45)。

 また、HN医師が転院先を「相模台病院精神科閉鎖病棟(又は精神科)」と決定したのは、「6月10日」である。(乙A1の356頁)。

 

②6月11日午前9時過ぎころバンコマイシン投与をしないことを再確認した。

 6月11日、午前9時過ぎころ、告訴人はHN医師に対し、「(6月11日)朝食後にKC看護師からバンコマイシンの投与を終了し、投与しないことになったので、ザイボックスを飲むことになったと説明がありザイボックスを服用しました。バンコマイシンの投与を終了し、今後バンコマイシンを投与しないということは本当ですか。」と質問した。これに対しHN医師は、「バンコマイシンの点滴を終了した。今後バンコマイシンは投与しない。その代わりにザイボックスを服用し続ける必要がある。」と説明した。6月11日午前9時過ぎころ、告訴人はバンコマイシンの点滴を終了し今後同剤投与(点滴)をしないという本件病院医師らの治療方針を再確認したのである。

 

③告訴人は、HN医師の上記①及び②の説明を両親及び弟に連絡し、その後、6月11日、「17:30過ぎMT(話し合い)」が急遽決まったのである。

 

(6)以上のことから、被告訴人の「前日にご本人の自殺企図があって、そのことでご本人、ご家族と主治医、そのメディカルスタッフとみんなで話し合いが持たれた」との証言が虚偽であることは明らかである。

 

第9 ザイボックス処方経緯

1.偽証の要旨

 被告訴人は、退院するに当たってザイボックスを処方したと証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.ザイボックス処方経緯に関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書19~20頁)

I代理人「その時点では、原告の症状はどういった状況だったんでしょうか。」

UK「かなり抗菌薬が効いてきて、まあ治療がうまく進んでいたという状況ですけれども、CRPというその炎症を表す値はかなり下がってはきたんですが、まだ完全に陰性をカバーしていないという状況で。ご本人も、一応その車椅子の乗り移りも基本的には介助でしていただくというような形でしたので。ま、基本的に治療というのは、CRPという炎症の値がちゃんと先ほど下がってしまったらリハビリテーションを初めて、リハビリテーションをやってもCRPがまた上がらないということを確認した時点で、抗菌薬の投与を点滴から内服に変えているというのが普通の流れです。だから、途中で下がってきて、ああ、もう少しですねっていうところですが、まだそこで十分治療が終わっているわけではないです。治療の途中というところですね。」

I代理人「それで、今回退院するに当たっては、ザイボックスを処方したということでよろしいですか。」

UK「はい。」

 

3 偽証の証拠

(1)ザイボックス処方・服用の事実は、「6月11日の時系列経緯」及び「6月11日の抗菌薬投与・細菌培養一覧」から明らかである(本書面14頁、甲A21)。

 告訴人らが、「退院希望」を伝えた6月11日17:30過ぎより「9時間以上前」の6月11日08:20頃にザイボックスを既に服用していた事実がある。

 また、6月10日、ようやく「個室」に移ることができた告訴人が、「退院」について全く考えていなかったことは言うまでもない。「退院」に関係なく、本件病院医師らがザイボックス処方を決定していた。

 よって、被告訴人が「退院するに当たってザイボックスを処方した」との証言が虚偽であることは明らかである。

 

(2)被告訴人は、「まだ完全に陰性をカバーしていないという状況で。」、「通常はまだ点滴(バンコマイシン)を継続すべき時期だったんです」と証言した(U証人調書19、40頁)(括弧内は告訴人による。)。

 被告訴人は、右膝MRSA感染中であること及びバンコマイシン継続投与の必要性を認識・把握しておきながらバンコマイシン投与を終了した。また、被告訴人は、診療情報提供書に記名押印し、「右膝MRSA感染中であること」及び「バンコマイシン継続投与の必要性」の記載がないことを了承し、さらに、「ザイボックス処方」を容認している(甲A43)。

 感染症の中心的役割を担っているはずの本件病院(被告:学校法人北里研究所)こそが、ザイボックスの安易な処方を厳に戒めなければならないところこれを怠りザイボックスを根拠なく処方した。告訴人のデータを把握している本件病院以外の医師全員が、本件病院医師らによる根拠のない安易なザイボックス処方を厳しく批判している。

「バンコマイシン投与終了」及び「根拠のない安易なザイボックス処方」はいずれもきわめて重大な問題であり、被告訴人には都合が悪いのである。

 よって、バンコマイシン投与終了及びザイボックス処方経緯について、事実無根の「自殺企図」、「退院に当たって」等の虚偽の証言をしているのである(U証人調書19、20、40頁)。

 

第10 リハビリに関する偽証

1.偽証の要旨

(1)被告訴人は、リハビリテーションを実施後CRPが上昇しないことを確認後に抗菌薬投与(バンコマイシン点滴)から内服に変更すると証言した。これは明らかな虚偽である。

 

(2)被告訴人は、退院には十分なリハビリが必要である旨を証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.リハビリに関する被告訴人の虚偽の証言(U証人調書19,20、41頁)

(1)UK「(6月11日時点)かなり抗菌薬が効いてきて、まあ治療がうまく進んでいたという状況ですけれども、CRPというその炎症を表す値はかなり下がってはきたんですが、まだ完全に陰性をカバーしていないという状況で。ご本人も、一応その車椅子の乗り移りも基本的には介助でしていただくというような状況でしたので。ま、基本的に治療というのは、CRPという炎症の値がちゃんと先ほど下がってしまったらリハビリテーションを初めて、リハビリテーションをやってもCRPがまた上がらないということを確認した時点で、抗菌薬の投与を点滴から内服に変えていくというのが普通の流れです。だから、途中下がってきて、ああ、もう少しですねっていうところですが、まだ、そこで十分治療が終わっているわけではないです。治療の途中というところですね。」

 

(2)UK「退院後の治療がどうなっているのかが分からないので、それと、現在の状況がどうなっているのか僕らは全然知りませんので、今の状況がご本人の状況がどうなのかということ自体が全然分かりません。これは、退院される時点でまだ車椅子に乗り移られるのも介助が必要な状態で、リハビリテーションも十分にやってない状態のときに退院されていて、そのときまでの状況しか分かりませんので。それから先なくなったかも分かりませんし、今どういう状態になっておられるかも分からないです。」

(括弧内及び下線は告訴人による。)

 

3.偽証の根拠

【1】リハビリの必要性に関する被告訴人の証言及びMTの矛盾

(1)被告訴人の上記証言によれば、リハビリ実施後にCRPが上昇しないことを確認後に抗菌薬投与(バンコマイシン点滴)を終了し、内服に変更することが「基本的な治療」ということになり、また、退院の前提としてリハビリテーションを本件病院で十分に実施することが必要であるということになる。

 

(2)しかし、6月1日MTにて被告訴人は、「リハビリをがんばっていかなくてはいけない時期にきています。現在、良い方向に進んできているのでがんばっていただきたいと思います。」と説明した。これに対し、告訴人は、「リハビリは北里で入院して続けたいと思っています」と希望を伝えたが、被告訴人は、「特定機能病院は急性期の患者さんしか入院させることができないのです。これは厚生労働省の取り決めなのです。基本的には転院してリハビリをしていただくことになります。もしくは車椅子移乗やつたい歩きができ自宅がそれで受け入れが可能であれば退院でもよいです。」とし、また、「歩く練習をやってくれる病院に転院していただく方向で進めてまいります。」と説明した(乙A1の25頁)。

 

(3)要するに、被告訴人は、「良い方向に進んでいるのでリハビリ実施」について説明をし、告訴人が本件病院での「リハビリ」の希望を伝えたことに対し被告訴人はこれを許可しなかった。被告訴人は、「転院してリハビリ」もしくは「退院でもよい」と説明したのであって、「本件病院でのリハビリ」を前提とした説明をしたことは一切ない。

 

(4)よって、「本件病院でのリハビリ実施」又は「本件病院での十分なリハビリ実施」を前提とした証言が虚偽であることは明らかである。

 

【2】リハビリの必要性に関する被告訴人の証言・言動の矛盾

(1)はじめに

「リハビリ」の必要性を証言する被告訴人の言動には矛盾があることから、被告訴人は、「リハビリ」の必要性を全く考慮していなかったことについて述べる。

 

(2)被告訴人の記名押印のある診療情報提供書には、告訴人に必須であるはずの「リハビリ」について一切記載がない(甲A43)。

 

(3)同診療情報提供書の「転院先」は、相模台病院精神科閉鎖病棟(又は相模台病院精神科)となっていた。転院先の診療科が「整形外科」ではなく、「精神科閉鎖病棟(又は精神科)」となっていたことは、「リハビリ」を考慮していないことの証拠である。相模台病院は、精神科に特化した病院と言っても過言ではない。閉鎖病棟(69床)、解放病棟(20床)である(甲C25の8頁)。

 なお、転院先欄が「空欄」となっていることについては、「尋問調書・陳述書について」と題する書面(平成27年2月5日付)17頁に記載のとおりである。

 

(4)6月11日17:30過ぎMTにて、HN医師は、「〇〇さんの転院先を相模台病院精神科と既に決定した。〇〇さんに必要なのは精神科に入院することである。整形外科に入院する必要性があるかどうかについては、相模台病院の精神科医が決めることであり、こちら(本件病院)で転院先診療科を整形外科と決めることではない。」と説明した。HN医師が、「右膝MRSA感染中であること」及び「バンコマイシン継続投与の必要性」について一切言及していないだけでなく、転院先の診療科を「整形外科」としなったことから、「リハビリ」について全く考慮していないことは明らかである。なお、MT参加者、OO医師(精神科)、SN医師(精神科)、S看護師(精神科リエゾン)、MK病棟係長、告訴人の両親・弟、告訴人ら「8名」全員が、HN医師の前記説明を聞いている。

 

(5)転院先はHN医師単独で決定したのではない。HN医師が転院先を相模台病院精神科閉鎖病棟と決定したことについて、6月12日、午後1時頃、告訴人はMK病棟係長に質問した。同係長は、「転院先をH医師単独で決めることはできません。U医師と共に決定します。」と回答した。

 よって、被告訴人は、「リハビリ」が必要である告訴人には明らかに不適切な「診療科」を決定しこれを容認したことになる。被告訴人が「リハビリ」の必要性を認めていないことと同診療情報提供書に「リハビリ」について一切記載がないことには整合性がある。

 

(6)以上のことから、「リハビリ」の必要性を強調し、これを前提とした被告訴人の証言が虚偽であることは明らかである。

 

北里大学病院医療過誤裁判 東京地裁から最高裁まで 第Ⅺー3に続く。