フランスのジャズが好きといいながら、まだORCHESTRE NATIONAL DE JAZZ聴いてないやんという反省もあり、今回はLED ZEPPELIN(1968~1980年)トリビュート作品ということで迷わず購入。中学高校生時代にロック少女だった私は、60年代末~70年代のブリティッシュハードロックのなかで特にLED ZEPPELIN(以下ツェペリン)が大のお気に入り(JOHN BONHAM最高!)。ツェペリンを聴くだけでいとも簡単に青春時代へタイムスリップしてしまう私が、本作をまともな精神状態で語れるかどうか不安です。「そんなこと誰も聞いてへんがな」とお思いになるかもしれませんが、これから先、私がたとえ何を書いたとしても「アーティチョークの独り言」としてお許しくださいますようお願いいたします。
LABEL BLEUは1986年にフランスのアミアン市文化局の音楽出版部門としてスタートしたジャズレーベルで、フランス内外のジャズミュージシャンをサポートし優良作品をたくさんリリースしていますが、このレーベルが発足した同年にフランス文化相がスタートさせた国営ジャズオーケストラがORCHESTRE NATIONAL DE JAZZ(以下ONJ)で、最初はこのレーベルからONJ作品が出されていました。ONJの音楽監督はだいたい2年ごとに交代し、フランス内外の精鋭によって編成され、年に一度のペースでアルバムをリリースしているようです。私のお気に入り、コンテンポラリーブルースの雄、LUCKY PETERSON(g, org, vo)がゲストで参加している盤もあるそうですね(びっくり)。
全14曲のうち6曲がFRANCK TORTILLERまたはメンバーによる共作ですが、まったくのオリジナルという訳ではなく、原曲に着想を得たり、原曲のメロディを借りたりして作られているようで、そういったオリジナルが何曲か前奏として使われています。音楽監督のFRANCK TORTILLER(1963年生まれ)はヴィブラフォン奏者(別の作品ではマリンバも演奏)で作曲家。ヴィブラフォン、マリンバ、ドラムス、ウッドベースにサックスと金管類、クラビネットという編成で、一部ヴォーカル(というよりはヴォイスと絶叫がほとんど)やサンプルが効果的に入ります。タイトなアンサンブルも超一流なのですが、特筆すべきはFRANCK TORTILLERのアレンジ手腕の素晴らしさ。ツェペリンの単純でない複雑さ(変態といっていいかも)を持つ唯一無二の音楽性が、コンテンポラリーで洗練された新感覚のジャズファンクに仕上がっていて、ツェペリンのファン、あるいはそうでない普通のジャズファンも納得の作品に仕上がっています。
1曲目、PATRICE HERALによるBEWARE THE BLACK DOGは、突如として物凄い唸り声とヴォイスパーカッションと絶叫とで始まるもんですから思わず笑ってしまいました。
2曲目はBLACK DOGです。実はツェペリンの曲ではこれが一番好き。変拍子に5拍子を組み込んだ変態ロックは問答無用にかっこいいっ!躍動感漲るエモーショナルな怒涛のごときアンサンブルが展開する部分と、パーカッション類、ヴォイスパーカッション、サンプルを効果的に配したスペイシーな浮遊感のある静かな緊張感を漂わせる部分との対比が面白い。
4曲目はDAZED AND CONFUSEDです。ううう...このなんともいえない気だるく官能的なリフを聴いたとたん、甘酸っぱい青春時代へタイムスリップしてしまう。私はストレートロングの黒髪をセンター分けにしたうら若き乙女でした(遠い目...)。(←我を忘れ、しばし郷愁に浸るアーティチョークだった。)ドスの効いた凄みのある雰囲気が漂っていて始終圧倒されますぜ。
7曲目は変拍子がかっこいいFOUR STICKS。躍動感に溢れるハイテンションなアンサンブルがめっちゃかっこええのです!。こんなにメリハリの利いたヴィブラフォンを演奏出来るFRANCK TORTILLERは凄いですね。トランペットソロもなかなかの素晴らしさ。いや~、痺れました!
10曲目はSTAIRWAY TO HEAVEN。世間ではツェペリンの代表曲との誉れ高いようですが、私はさほど好きではありません。ですが、本作においてもFRANCK TORTILLERのアレンジ手腕が存分に発揮されていて、10分強の長尺ながら最後まで聴かせます。チューバ(たぶん)によるソロなんて私は初めて聴いたかもしれません。が、なかなか良いですよ。
12曲目はKASHMIRです!これまたツェペリンの一筋縄ではいかない音楽性が存分に発揮された名曲(と私は思う)。まあ無理でしょうけど、こういう曲を作って演奏出来るツェペリンのようなロックバンドがもし現代に現れたなら、私はもう一度ロック少女(もとい、ロックおばさんね)に戻ってもいいです。ただし!私が70歳のおばあちゃんにならないうちに現れてほしいな(笑)ここで光っているのはJOHN BONHAMに限りなく迫ってグルーヴするド迫力のドラムス。こいつぁーなかなかのもんですぜ、旦那。タイトなアンサンブルに漲る只ならぬ緊張感がたまりません。
13曲目のMOBY AND MOBYはツェペリンのMOBY DICKにメロディを借り、リズムを変えた変奏曲の趣です。原曲の印象とはだいぶ違いますが、大変インパクトのある仕上がりでハイテンションで疾走するヴィブラフォンが聴き物。原曲のMOBY DICKは素手によるドラムソロが圧巻でしたっけ(DVDにも凄まじいドラムソロが納められています)。ああ...ボンゾ様、アナタはやはり最高やわ~!(←と、またまた勝手にタイムスリップしてしまい、遠い目になるアーティチョークだった。)
曲間の無音部分を無くして巧みにつなげる手法にも心憎いものがあり、曲によって緩急はあるもののアルバム全編を通してダレることが一切なくハイテンションを保ち続ける高密度なアンサンブルは素晴らしく、聴きどころはいっぱいあります。音楽監督のFRANCK TORTILLERによるアレンジとアンサンブルをまとめ上げる手腕によって生まれたORCHESTRE NATIONAL DE JAZZのLED ZEPPELINトリビュート作品に、現代フランスジャズの底力を見せ付けられたような気がします。
ちなみに次の作品は
■ORCHESTRE NATIONAL DE JAZZ / SENTIMENTAL 3/4
ということで、様々なアーティストの作曲によるワルツ集のようです。これも聴きたいなあ。
御用とお急ぎでないかたはFRANCK TORTILLERの↓HPへどうぞ。
http://www.francktortiller.com/
ORCHESTRE NATIONAL DE JAZZの↓HPはこちらです。
http://www.onj.org/
■ORCHESTRE NATIONAL DE JAZZ / CLOSE TO HEAVEN (Le Chant Du Monde 274 1407)
FRANCK TORTILLER (vib, arr, cond)
VINCENT LIMOUZIN (vib, marimba, electronics)
PATRICE HERAL (ds, perc, vo, live samples)
DAVID POURADIER DUTEIL (ds)
YVES TORCHINSKY (b)
JEAN GOBINET (tp, flh)
ERIC SEVA (ts, ss)
MICHEL MARRE (tuba, flh)
JEAN-LOUIS POMMIER (tb)
guest
XAVIER GARCIA (clavinet, samples)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)