古代ローマ文化やフレスコ壁画について特に興味があったわけではないのですが、

「色あせぬ、古代ローマのハリとツヤ」という、パンフレットのコピーに惹かれ、

兵庫県立美術館の「世界遺産ポンペイの壁画展」ブロガー内覧会に行ってきました。

 

古代南イタリアの風光明媚な町だったポンペイは、西暦79年に、近隣に位置するヴェスヴィオ火山の噴火によって、突然火山灰に埋没し、悲劇的な終焉を迎えました。

 

その火山灰が乾燥剤に似た作用をしたことにより、約2千年もの間、ポンペイの色鮮やかな壁画が奇跡的に保存されていました。

ポンペイは、人口1万2千人くらいの地方都市でしたが、生活水準が高く、家々には色とりどりの壁画を施し、人々は豊かで平和な生活を謳歌していたとのこと。町には、娯楽施設も多数あったそうです。

 

  

赤い建築物を描いた壁面装飾。ポンペイ近郊の別荘の壁面に描かれていたとのことで、約2千年の時を経ても色あせない鮮やかな赤に魅了されます。

 

 

エジプト青が鮮やかできれいな天井装飾。赤と青のコントラストが印象的。

 

        

味わい深い色彩の人工顔料や絵の下絵の線引きに使われたコンパスも発見されています

 

 

演劇や踊りなどには仮面やタンバリンがよく使われたそうで、壁画にも描かれています。

 

  

草花や鳥は身近な題材。古代ローマの花鳥画        静物画からは豊かな食生活が窺えます

 

      

かなり剥がれてしまった壁画ですが、丁寧で緻密な描写が手に取るようにわかります。

 

 

 

犬の頭上にシュンクレトゥスと記載。愛犬の名前?  コブラとアオサギの戦い。リアルな表情

 

 

鳥の絵は庭園を描いた壁画の一部とのこと。 4頭馬の戦車レースは人気競技の1つでした

 

 

   

人々の日常の表情を描いた人物画も展示されています。

選挙用のポスター。ポンペイでは常時2人の委員(責任者)を置き、選挙で選ばれていました

 

 

神話を題材にした壁画のコーナーは見応え十分。日本初公開の門外不出の大壁画も登場。

  

  

ポンペイと、同じくヴェスヴィオ火山の噴火で消滅した近郊の町エスコラーノからは、ギリシャ神話をモチーフにした壁画が多数発掘されました。神話を描いた壁画を飾ることは、ステータスシンボルだったそうです。ギリシャ神話が圧倒的に多く、ローマ神話にちなんだ壁画は殆ど

発見されていないとのこと。

 

ポンペイの人々は、神々への信仰も熱心でした。多くの神々が室内の壁を飾っていました。

 

         

動物などの供物を神に捧げる犠牲式。   竪琴弾きアポロ。マントは噴火で赤から黒に変化

 

 

葡萄酒の神デュオニソスの信女マイナスは人気のモチーフ。優雅に舞う姿やヌードは魅惑的

 

       

ポンペイの守護神ウェヌス。赤マントでポーズ。   勝利の女神ウィクトリア。彫刻的な美しさ

 

 

別荘の一室の広い食堂を飾っていた壁画を再現したコーナー。

ポンペイの人々がこの部屋でゆったりと会食し談笑していた様子が想像されます。

 

   

   

色んな人物画を適宜に配置。くつろぎながらずっと眺めていたい気分になります。

 

 

この展覧会の最後に登場するのは、レストランの壁を飾っていた、フェニックスと2羽のクジャクの絵。

 

「フェニックスは幸せである。あなたもまた、幸せでありますように」とのメッセージが、絵の中に記されています。たくさんの壁画を見て、私もとても幸せな気分になりました。

 

豊かで楽しいポンペイの人々の生活は、火山の噴火によって突然消滅してしまいましたが、「私たちの分まで幸せになってください。人生を謳歌してください」と、エールを送ってくれているかのように思えます。2千年の時を経てもなお感動的で、胸が熱くなった展覧会でした。