「行ける可能性は何パーセント?」
「そうね、八十パーセントっ。」
そんな言葉さえも夢物語だと思っていた。
「じゃあ来週の金曜日だったらどう?」
「んんん、その次の金曜日ならいいわよ。」
なんとも具体的な約束ができたのには驚いた。それでも半信半疑だった。
その約束をした次の金曜日。ボクは彼女を尋ねて店を訪れていた。もちろん、約束のことを確かめるために来たのだ。
「来週の金曜日、覚えてる?」
「もちろんよ。」
「待ち合わせはどこで何時?」
「そうね、大通りの角の本屋の前に三時でどう?」
「OK。三十分前には待っているよ。」
「うふふ、私は十五分遅れていくわよ。」
そしてその約束は果たせることになるのである。
その前日まで、ボクは彼女が所望するであろう肉を美味しく食べさせる店をいくつも検索した。勿論、美味しい日本酒を飲める店も近くに見つけていた。
そしてそのデートは当たり前のように実現するのである。
時間は三時三十分。
彼女は十五分どころか三十分も遅れてやってきた。しかし、そんなことはボクには想定内である。さらには彼女を待っている間に、どんな酒を飲もうか、どんな肉を食べようかというリハーサルを妄想の中で何度も行えた。だから、待ち時間なんて全然平気だった。
「さあ、肉を食べに行こう。」
ボクたちは予定していた店に入り、肉とワインを堪能した。次に日本酒の美味しいお店を堪能し、ボクと彼女の初デートは終了する。
そのあとは同伴で店に出勤するのである。
こんな楽しいことを誰にも言わなかった。
最初にボクをこの店に連れてきた友人にさえである。
きっと羨ましがるに決まっているから。
ボクはしばらくの間は友人にも内緒にすべき事項だと思った。
なぜなら、ボクは彼女と純粋にデートをしただけだと思っているからである。
もしかしたら、彼女も少しは好意を感じてくれているかもしれない。などとやや無理のある希望をも描きながら。
そして彼女の卒業の日が決まるのである。
つづく